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第十一章 解呪
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王宮前広場に到着すると、常時閉められている城の正門が開かれていた。そこから城壁のすぐ下を流れる深く広い水路に下ろされた跳ね橋は、通用門に架かる橋とは違って幅が広く、ソランたちはそこを通って悠々と入城することができた。
中の広場は国賓を迎えるのにも使う美しい庭園だ。ただし、気をつけて見てみれば正面の王宮門のみならず、樹木の向こうに回廊を模した構造物が造られ、四方を完全に塞がれている。王宮は建物を使って巧みにいくつかの区域を閉鎖できるようになっている。これはその一つで、侵入者を簡単に奥には行かせない造りになっているのだった。
広場には将軍に率いられた軽騎兵と近衛が待ち受けていた。軽騎兵は軍備を取り上げるためであり、近衛は護衛という名の監視者である。
たとえ王太子に推されようとしている王子であっても、いや、だからこそ、王に対する恭順の姿勢を貫かなければならなかった。力があればあるほど、脅威にはなり得ないのだということを、執拗なくらい示さなければならないのだ。
殿下は馬を降り、歩み寄った将軍と抱擁を交わした。ソランたちも全員が馬を降り、その場にて待機した。いくらも待つこともなく、二人はこちらへ向き、将軍が朗々とよく通る声で命を下した。
「軽騎兵第一、第二、第三隊の任務はここまでとする。ただし、新しく、同行の馬車を軍医局施設まで護衛し、アーバント医局長に引き渡すことを命ずる。遂行後、軍本部へ報告、その後解散を許す。以上」
軽騎兵たちは右手を胸に当て、直ちに受命した。それに殿下が留めるように手を挙げた。
「長きに渡る任務、ご苦労だった。おまえたちのおかげで心安く行動することができた。礼を言う」
第一隊百騎長アドリード・セルファスが進み出て、殿下の御前で片膝を地につくと、すべての騎兵がいっせいに膝をついた。
「お褒めのお言葉をいただき、ありがたき幸せに存じます。今回の任務に当たれましたこと、生涯我らの誇りとなりましょう」
「早計だ、セルファス」
殿下は苦笑した。
「おまえたちの力を示してもらわねばならんのは、これからだ」
思わず、といった具合に顔を上げたセルファスと視線を合わせ、彼が理解の色を示して表情を引き締めると、殿下は凄みのある微笑を口元に刷いて頷いた。
「期待しているぞ」
「はっ。なおいっそうの忠誠と精進をお約束いたします」
セルファスは今一度深く頭を下げ、立ち上がって、きびきびと撤収の指揮を執りはじめた。
ソランは馬を引き取りに来た者に任せ、殿下の傍へと向かった。エレーナたちに後ろ髪引かれる思いだったが、殿下の傍を離れるわけにはいかない。
エレーナたちは、これからしばらく医局で暮らすことになる。処遇は今朝伝えてあったが、外を覗けない馬車の中で、また怯えているかもしれないと心配だった。
彼女たちをひっそりと運び入れられれば良かったのだが、どうしても『戦果』として衆人に示さなければならなかったのだ。そのために、彼女たちが無遠慮な視線に晒されないよう、窓を締め切った馬車での移動とした。しかし、中からも外が窺えず、音と振動のみで外の様子を想像するとなれば、それはそれで不安なものなのではないかと思われた。
でも、マリーもファティエラも彼女たちに付いている。アーバント医局長も頼りになる人だ。ソランは彼女たちのことは、ひとまず頭の中から締め出すことにした。
そして、近衛に囲まれ、殿下に従い、ソランも王宮へと踏み入ったのだった。
中の広場は国賓を迎えるのにも使う美しい庭園だ。ただし、気をつけて見てみれば正面の王宮門のみならず、樹木の向こうに回廊を模した構造物が造られ、四方を完全に塞がれている。王宮は建物を使って巧みにいくつかの区域を閉鎖できるようになっている。これはその一つで、侵入者を簡単に奥には行かせない造りになっているのだった。
広場には将軍に率いられた軽騎兵と近衛が待ち受けていた。軽騎兵は軍備を取り上げるためであり、近衛は護衛という名の監視者である。
たとえ王太子に推されようとしている王子であっても、いや、だからこそ、王に対する恭順の姿勢を貫かなければならなかった。力があればあるほど、脅威にはなり得ないのだということを、執拗なくらい示さなければならないのだ。
殿下は馬を降り、歩み寄った将軍と抱擁を交わした。ソランたちも全員が馬を降り、その場にて待機した。いくらも待つこともなく、二人はこちらへ向き、将軍が朗々とよく通る声で命を下した。
「軽騎兵第一、第二、第三隊の任務はここまでとする。ただし、新しく、同行の馬車を軍医局施設まで護衛し、アーバント医局長に引き渡すことを命ずる。遂行後、軍本部へ報告、その後解散を許す。以上」
軽騎兵たちは右手を胸に当て、直ちに受命した。それに殿下が留めるように手を挙げた。
「長きに渡る任務、ご苦労だった。おまえたちのおかげで心安く行動することができた。礼を言う」
第一隊百騎長アドリード・セルファスが進み出て、殿下の御前で片膝を地につくと、すべての騎兵がいっせいに膝をついた。
「お褒めのお言葉をいただき、ありがたき幸せに存じます。今回の任務に当たれましたこと、生涯我らの誇りとなりましょう」
「早計だ、セルファス」
殿下は苦笑した。
「おまえたちの力を示してもらわねばならんのは、これからだ」
思わず、といった具合に顔を上げたセルファスと視線を合わせ、彼が理解の色を示して表情を引き締めると、殿下は凄みのある微笑を口元に刷いて頷いた。
「期待しているぞ」
「はっ。なおいっそうの忠誠と精進をお約束いたします」
セルファスは今一度深く頭を下げ、立ち上がって、きびきびと撤収の指揮を執りはじめた。
ソランは馬を引き取りに来た者に任せ、殿下の傍へと向かった。エレーナたちに後ろ髪引かれる思いだったが、殿下の傍を離れるわけにはいかない。
エレーナたちは、これからしばらく医局で暮らすことになる。処遇は今朝伝えてあったが、外を覗けない馬車の中で、また怯えているかもしれないと心配だった。
彼女たちをひっそりと運び入れられれば良かったのだが、どうしても『戦果』として衆人に示さなければならなかったのだ。そのために、彼女たちが無遠慮な視線に晒されないよう、窓を締め切った馬車での移動とした。しかし、中からも外が窺えず、音と振動のみで外の様子を想像するとなれば、それはそれで不安なものなのではないかと思われた。
でも、マリーもファティエラも彼女たちに付いている。アーバント医局長も頼りになる人だ。ソランは彼女たちのことは、ひとまず頭の中から締め出すことにした。
そして、近衛に囲まれ、殿下に従い、ソランも王宮へと踏み入ったのだった。
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