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第八章 思い交わす時
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二人は、城内の軍事演習場に出向いた。このために着替えたのだ。キエラに護衛として連れて行く騎兵の訓練に参加する。
その数、三百騎。殿下以下男性陣は、軽装の鎧を身に着け、冑を小脇に抱えていた。ただ、訓練が決まった時、未だ『イリス』として殿下の客分でしかなかったソランは、女装で行く予定だったので、そろいの鎧が間に合わず、今日はチェイニー婦人が用意した軍服風の服を着ているだけだった。
今回は軽騎兵のみを連れて行く予定だ。護衛が主な仕事となるため、機動力を重視した結果だ。高速で移動し、宿営地は道々の領主に用意させ、食料も替えの馬も提供させる予定だった。
厩舎で愛馬を曳きだし、演習場に乗り入れる。
ソランはここに来るのは二度目である。視察から戻ってしばらくした頃、演習に参加する殿下に付き従い、見学したことがあったのだ。
その時は重騎兵だったのだが、人馬の鎧が日の光にぎらりぎらりと輝き、軍笛一つで右に左に一糸乱れず方向を変え、重い馬蹄の音を轟かせる様は圧巻だった。
殿下も当然のように同じ格好で演習をこなす。年に数度の長期の遠征演習の指揮も自ら執るし、お忍びの視察で各地を飛びまわりもする。彼はお飾りではなく、将軍の下で研鑽を積んでいる、実質的な次の軍の支配者だった。
騎士たちは馬を降りた状態で並んで待っていた。
けれど、どう見ても予定より人数が多い。中央で馬を連れている者たちは、確かに三百人ほどであったが、そのまわりに雑然といる兵は、とりあえず軍服を着てはいるが、有象無象という感じである。
その上、いやに目を引く者がいると思ってよくよく見れば、将軍閣下が混じっていた。後ろの方で、気楽に談笑しているのはどうしたことだろうか。
兵たちの前に行くと、殿下以外の者は馬を降りた。ソランも降りようとして、止められる。こちらへ来いと手招きされ、もっとと招かれるまま、ぶつかってしまいそうなほど近くへと馬を寄せた。
「皆に紹介する。我が婚約者の、ソラン・ファレノ・エレ・ジェナシスだ」
殿下はよく通る声で告げると、ソランへと振り返り、手を取った。身を乗り出して、指先に口付け、上へと掲げる。
「彼女は我が命である。我が信頼する、王国の精鋭たる諸君等に命ずる。全身全霊でもって彼女を守れ」
直ちに拝命の返事が地響きのように起こった。
ピューッイッと指笛が鳴らされたかと思うと、いくつもの指笛が重なり、軍笛までが吹かれ、野次と見紛う祝福の言葉が乱れ飛ぶ。
ソランは目を丸くして、そんな彼らを見渡した。馬丁が馬の耳栓を外さないようにと念を押していたのは、このせいだったのかと頭の隅で考えながら。
やがて、キースッ、キッスッ、と、とんでもないコールが湧き起こった。殿下は機嫌良く笑うとソランの手を引き、身を乗り出させる。自分もそうすると、彼女の頬に口付けた。とたんにブーイングが起こった。
それにわかっているとでも言うように片手を挙げ、自分の馬を少し進め、皆の影になる場所に移動すると、改めてソランを引き寄せて、唇を重ねた。
どおっと歓声があがる。
キスはほんの挨拶程度の軽いものだった。それでもソランはすぐに体を戻して真っ赤になって俯いて、両の拳を握り締めた。それは疑いようもなく乙女の恥らう可憐な仕草で、前列にいた騎士が、思わずといったふうに叫んだ。
「本当に女性だったんですね!?」
申し訳ない思いで、こくりと頷いたはずのそれに、何度目かのどよめきが起こり、やがてそれが、殿下とソランの名を呼ぶ歓呼へと変わっていく。
殿下は騎士たちの歓呼を笑顔で受けていたが、すっと手を上げると、ぴたりと騒ぎが静まった。
「余興は終わりだ。訓練に移る。用意せよ」
潮が引くように、演習場の端へとてんでばらばら好き放題に、余分な人員が散っていった。そのうち最も小高く、城の影が落ちる一等地に、将軍も居座っている。誰一人として帰る様子はない。どう見積もっても、城に常駐の兵員の、この日に休日を勝ち取った者全員が揃っているようだった。
ソランは表情を消し、姿勢を正した。殿下は『余興』と言った。怒りとも悲しみともつかないものが胸の一隅を占める。
しかし、たとえ余興であっても、これは披露目であり、ここは彼女の品定めの場でもあるのだ。婚約者と紹介されたからには、殿下に恥をかかせるわけにはいかない。殿下からほんの少し下がった位置で、騎士たちを見守る。
彼らは一斉に鐙に足を掛け、馬に上った。三百騎が軍笛とともに馬を走らせはじめる。
「ソラン、イアル、笛の指示を確認しろ」
殿下の常とは違う有無を言わさぬ声音に、はっ、と短く返事をした。
ソランたちは軽騎兵の姿を目で追い、笛の音に耳をすました。
指示はそれほど複雑ではない。前進、停止、増速、減速、右、左。それに戦になれば、突撃、集合、退却が加わる。
ひとしきりの見学の後、彼らに交じって馬を走らせるのは、ソランにとって特に難しいことはなかった。領地でも小規模ながら演習はやっていたし、合図も同じものを採用していたからだ。
元々、こうした指示で集団で行動するのを発案したのは、ソランの父、ティエンだった。それまでは、突撃と退却の合図だけで、ただ軍勢と軍勢が真正面からぶつかるだけの戦いだった。よほどでなければ、人数の多い陣営が勝つのが当たり前だったのだ。
先の大乱で、国王が初めに手にできたのは、身のまわりを固める百人足らずの騎士と、ジェナシス領の三百人程度だった。それもやっと成人を迎えた者から、そろそろ隠居したいとこぼす年齢の者まで、男女の区別なく戦える者を掻き集めた人数だった。
これはその不利を補うための策であり、それはソランにも授けられていたのだ。
だから、訓練が終わり、百騎長三人が召し出されて紹介され、中央に立つアドリード・セルファスと名乗った男に、「おみそれしました」と挨拶された時は、曖昧に微笑んで頷いただけだった。
彼女にとっては何も特別なことではなく、彼がどういうつもりで言ったのかわからなかったのである。
「だから言っただろう、これなら問題ないと」
殿下は至極満足気に言った。
「はい。ですが、一日二日のことではありません。七日も続くとあれば、ご婦人にはきついのではありませんか?」
「一日十二時間の移動で、野宿はないが、どうだ?」
一応、という感じで殿下がソランに尋ねる。
「平気でございます」
ソランは自信を持って答えた。野宿でも大丈夫である。
十二歳の時に、イアルと二人で、ナイフと水筒を持たされただけで山奥に置いてこられたことがある。今頃よりもう少し早かったが、それでも初冬だった。食べ物はないわ寒いわで、成人の儀なんぞくそくらえだと思ったものだった。それに比べれば、寝床も食料も確保されている。どうということはないだろう。
セルファスは、じっとソランを見た。歳は三十を過ぎたところ。日に焼け、眼光鋭い鋭利な顔をしていた。
「もう一つ、失礼ながら、武術の腕前のほどを確かめたく存じます。守れとお命じになりましたが、殿下の護衛の一人としても数えよとのこと。イオストラ砦に向かう道中のことも、先の慈善事業の折のことも聞き及んでおりますが、噂ばかりでは心許ないので」
「王都船頭組合長のラウル・クアッドを手合わせ相手として呼んである。先代の新兵師範の腕前は知っておろう? おまえも彼にしごかれたはずだが」
「はっ」
彼の姿勢の良い姿が、さらにぴしりと伸びた。それは両脇の二人も同じであった。それだけで伺えるものがある。
「よいな、ソラン」
悪戯を企む子供と同じ目で殿下が笑う。嬉しいか、驚いたか、という感じだ。まったくもって、手際が良い。殿下は必要と思われることは次々と手を打ち、幾つも先まで用意をする。
ふと、求婚に返事をしたのは一昨日だっただろうか、と気付く。しかも深夜だった。にもかかわらず、婚約はすでに成り立ち、今はこうしてここに立っている。何日も前の出来事だった気すらするのに、このめまぐるしさはなんだろう。
ソランは殿下を見返し、ああ、私はこの人の手の内にすっぽり落ちてしまっていたのだな、と悟った。猪が罠にかかって樹上に吊り上げられるように。それは一瞬のことだ。効果的な罠とは、得てしてそういうものである。
逆さまにぶら下がった猪がゆらりゆらり揺れている様を思い出し、なんとも複雑な気分になり、つい、ぼやいてしまう。
「これも余興ですか?」
殿下は驚いた顔をした。
「まさか。なぜそんなことを」
「先程そのように仰っておられましたが」
「言ったか?」
「はい、余興は終わりだ、訓練に移る、と」
「ああ、それか。おまえの真価は、私が選んだことではないからな。己の価値は己で示すがいい」
不敵に笑む。ソランのことなのに、彼が自信満々でどうするのだろう。
それでも先程から感じていた、胸の奥の嫌な疼きは取り払われた。あれは信頼の証だったのだ。ただ、少々過大すぎる気がして、ソランは謙虚に訂正を入れた。
「私は常勝無敗の英雄ではないのですよ。イアルにも五度に一度は負けるのですから」
殿下は真顔に戻った。イアルへと振り返る。聞こえてなかったイアルは、怪訝な顔をした。黙ってソランに向き直り、彼女の二の腕を叩く。
「あいつにそれだけ勝てれば充分だ。まあ、いい、クアッドに紹介する」
殿下はディーに合図し、ディーは将軍へと大きく手を振った。
その数、三百騎。殿下以下男性陣は、軽装の鎧を身に着け、冑を小脇に抱えていた。ただ、訓練が決まった時、未だ『イリス』として殿下の客分でしかなかったソランは、女装で行く予定だったので、そろいの鎧が間に合わず、今日はチェイニー婦人が用意した軍服風の服を着ているだけだった。
今回は軽騎兵のみを連れて行く予定だ。護衛が主な仕事となるため、機動力を重視した結果だ。高速で移動し、宿営地は道々の領主に用意させ、食料も替えの馬も提供させる予定だった。
厩舎で愛馬を曳きだし、演習場に乗り入れる。
ソランはここに来るのは二度目である。視察から戻ってしばらくした頃、演習に参加する殿下に付き従い、見学したことがあったのだ。
その時は重騎兵だったのだが、人馬の鎧が日の光にぎらりぎらりと輝き、軍笛一つで右に左に一糸乱れず方向を変え、重い馬蹄の音を轟かせる様は圧巻だった。
殿下も当然のように同じ格好で演習をこなす。年に数度の長期の遠征演習の指揮も自ら執るし、お忍びの視察で各地を飛びまわりもする。彼はお飾りではなく、将軍の下で研鑽を積んでいる、実質的な次の軍の支配者だった。
騎士たちは馬を降りた状態で並んで待っていた。
けれど、どう見ても予定より人数が多い。中央で馬を連れている者たちは、確かに三百人ほどであったが、そのまわりに雑然といる兵は、とりあえず軍服を着てはいるが、有象無象という感じである。
その上、いやに目を引く者がいると思ってよくよく見れば、将軍閣下が混じっていた。後ろの方で、気楽に談笑しているのはどうしたことだろうか。
兵たちの前に行くと、殿下以外の者は馬を降りた。ソランも降りようとして、止められる。こちらへ来いと手招きされ、もっとと招かれるまま、ぶつかってしまいそうなほど近くへと馬を寄せた。
「皆に紹介する。我が婚約者の、ソラン・ファレノ・エレ・ジェナシスだ」
殿下はよく通る声で告げると、ソランへと振り返り、手を取った。身を乗り出して、指先に口付け、上へと掲げる。
「彼女は我が命である。我が信頼する、王国の精鋭たる諸君等に命ずる。全身全霊でもって彼女を守れ」
直ちに拝命の返事が地響きのように起こった。
ピューッイッと指笛が鳴らされたかと思うと、いくつもの指笛が重なり、軍笛までが吹かれ、野次と見紛う祝福の言葉が乱れ飛ぶ。
ソランは目を丸くして、そんな彼らを見渡した。馬丁が馬の耳栓を外さないようにと念を押していたのは、このせいだったのかと頭の隅で考えながら。
やがて、キースッ、キッスッ、と、とんでもないコールが湧き起こった。殿下は機嫌良く笑うとソランの手を引き、身を乗り出させる。自分もそうすると、彼女の頬に口付けた。とたんにブーイングが起こった。
それにわかっているとでも言うように片手を挙げ、自分の馬を少し進め、皆の影になる場所に移動すると、改めてソランを引き寄せて、唇を重ねた。
どおっと歓声があがる。
キスはほんの挨拶程度の軽いものだった。それでもソランはすぐに体を戻して真っ赤になって俯いて、両の拳を握り締めた。それは疑いようもなく乙女の恥らう可憐な仕草で、前列にいた騎士が、思わずといったふうに叫んだ。
「本当に女性だったんですね!?」
申し訳ない思いで、こくりと頷いたはずのそれに、何度目かのどよめきが起こり、やがてそれが、殿下とソランの名を呼ぶ歓呼へと変わっていく。
殿下は騎士たちの歓呼を笑顔で受けていたが、すっと手を上げると、ぴたりと騒ぎが静まった。
「余興は終わりだ。訓練に移る。用意せよ」
潮が引くように、演習場の端へとてんでばらばら好き放題に、余分な人員が散っていった。そのうち最も小高く、城の影が落ちる一等地に、将軍も居座っている。誰一人として帰る様子はない。どう見積もっても、城に常駐の兵員の、この日に休日を勝ち取った者全員が揃っているようだった。
ソランは表情を消し、姿勢を正した。殿下は『余興』と言った。怒りとも悲しみともつかないものが胸の一隅を占める。
しかし、たとえ余興であっても、これは披露目であり、ここは彼女の品定めの場でもあるのだ。婚約者と紹介されたからには、殿下に恥をかかせるわけにはいかない。殿下からほんの少し下がった位置で、騎士たちを見守る。
彼らは一斉に鐙に足を掛け、馬に上った。三百騎が軍笛とともに馬を走らせはじめる。
「ソラン、イアル、笛の指示を確認しろ」
殿下の常とは違う有無を言わさぬ声音に、はっ、と短く返事をした。
ソランたちは軽騎兵の姿を目で追い、笛の音に耳をすました。
指示はそれほど複雑ではない。前進、停止、増速、減速、右、左。それに戦になれば、突撃、集合、退却が加わる。
ひとしきりの見学の後、彼らに交じって馬を走らせるのは、ソランにとって特に難しいことはなかった。領地でも小規模ながら演習はやっていたし、合図も同じものを採用していたからだ。
元々、こうした指示で集団で行動するのを発案したのは、ソランの父、ティエンだった。それまでは、突撃と退却の合図だけで、ただ軍勢と軍勢が真正面からぶつかるだけの戦いだった。よほどでなければ、人数の多い陣営が勝つのが当たり前だったのだ。
先の大乱で、国王が初めに手にできたのは、身のまわりを固める百人足らずの騎士と、ジェナシス領の三百人程度だった。それもやっと成人を迎えた者から、そろそろ隠居したいとこぼす年齢の者まで、男女の区別なく戦える者を掻き集めた人数だった。
これはその不利を補うための策であり、それはソランにも授けられていたのだ。
だから、訓練が終わり、百騎長三人が召し出されて紹介され、中央に立つアドリード・セルファスと名乗った男に、「おみそれしました」と挨拶された時は、曖昧に微笑んで頷いただけだった。
彼女にとっては何も特別なことではなく、彼がどういうつもりで言ったのかわからなかったのである。
「だから言っただろう、これなら問題ないと」
殿下は至極満足気に言った。
「はい。ですが、一日二日のことではありません。七日も続くとあれば、ご婦人にはきついのではありませんか?」
「一日十二時間の移動で、野宿はないが、どうだ?」
一応、という感じで殿下がソランに尋ねる。
「平気でございます」
ソランは自信を持って答えた。野宿でも大丈夫である。
十二歳の時に、イアルと二人で、ナイフと水筒を持たされただけで山奥に置いてこられたことがある。今頃よりもう少し早かったが、それでも初冬だった。食べ物はないわ寒いわで、成人の儀なんぞくそくらえだと思ったものだった。それに比べれば、寝床も食料も確保されている。どうということはないだろう。
セルファスは、じっとソランを見た。歳は三十を過ぎたところ。日に焼け、眼光鋭い鋭利な顔をしていた。
「もう一つ、失礼ながら、武術の腕前のほどを確かめたく存じます。守れとお命じになりましたが、殿下の護衛の一人としても数えよとのこと。イオストラ砦に向かう道中のことも、先の慈善事業の折のことも聞き及んでおりますが、噂ばかりでは心許ないので」
「王都船頭組合長のラウル・クアッドを手合わせ相手として呼んである。先代の新兵師範の腕前は知っておろう? おまえも彼にしごかれたはずだが」
「はっ」
彼の姿勢の良い姿が、さらにぴしりと伸びた。それは両脇の二人も同じであった。それだけで伺えるものがある。
「よいな、ソラン」
悪戯を企む子供と同じ目で殿下が笑う。嬉しいか、驚いたか、という感じだ。まったくもって、手際が良い。殿下は必要と思われることは次々と手を打ち、幾つも先まで用意をする。
ふと、求婚に返事をしたのは一昨日だっただろうか、と気付く。しかも深夜だった。にもかかわらず、婚約はすでに成り立ち、今はこうしてここに立っている。何日も前の出来事だった気すらするのに、このめまぐるしさはなんだろう。
ソランは殿下を見返し、ああ、私はこの人の手の内にすっぽり落ちてしまっていたのだな、と悟った。猪が罠にかかって樹上に吊り上げられるように。それは一瞬のことだ。効果的な罠とは、得てしてそういうものである。
逆さまにぶら下がった猪がゆらりゆらり揺れている様を思い出し、なんとも複雑な気分になり、つい、ぼやいてしまう。
「これも余興ですか?」
殿下は驚いた顔をした。
「まさか。なぜそんなことを」
「先程そのように仰っておられましたが」
「言ったか?」
「はい、余興は終わりだ、訓練に移る、と」
「ああ、それか。おまえの真価は、私が選んだことではないからな。己の価値は己で示すがいい」
不敵に笑む。ソランのことなのに、彼が自信満々でどうするのだろう。
それでも先程から感じていた、胸の奥の嫌な疼きは取り払われた。あれは信頼の証だったのだ。ただ、少々過大すぎる気がして、ソランは謙虚に訂正を入れた。
「私は常勝無敗の英雄ではないのですよ。イアルにも五度に一度は負けるのですから」
殿下は真顔に戻った。イアルへと振り返る。聞こえてなかったイアルは、怪訝な顔をした。黙ってソランに向き直り、彼女の二の腕を叩く。
「あいつにそれだけ勝てれば充分だ。まあ、いい、クアッドに紹介する」
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