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第八章 思い交わす時
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しばらくしたところで、殿下が血相を変えて駆けつけてきた。部屋の中で騒ぎが持ちあがり、護衛が踏み入ったと連絡が行ってしまったのだ。
「ソラン!」
無事を確かめようと、頭からはじまって、いろんなところを触られる。
「ご心配をおかけして申し訳ありません。侍女とふざけが過ぎて、大騒ぎしてしまいました。護衛の皆様にも、ご迷惑をおかけしました」
頭を下げる。
「生きた心地がしなかった。いっそ閉じ込められれば、その方がどれほど気が楽か」
殿下はソランの頬に両手を添えながら、苦痛を堪えた表情をした。
「籠の鳥にはなれません」
「わかっている。しかし、思った以上にきついな。本当は片時も離したくない」
「大袈裟な。着替えに戻っただけではないですか」
「それだけでこれではないか。先が思いやられる」
ソランはニッコリと作り笑いを浮かべて護衛たちに会釈すると、殿下の腕を引っ張り、部屋の奥まった場所に連れて行った。声をひそめて諫言する。
「人前でそのような言動はお控えくださいませ。私ごときにかまけて、嘲笑われます」
「聞けんな。するつもりもない。だから、おまえが納得させるだけの女になれ」
「そういう問題では」
「そういう問題だ。嘲笑う奴は叩き伏せろ。知性でも美貌でも剣の腕でもいい。なんなら実家の権勢も笠に着てやれ。ああ、そうだ、女たらしの腕でもよかろう」
特に最後の一言に眉を顰めた彼女を見て、ニヤリとする。
「嘲笑うような阿呆は、一人残らず足元に這いつくばらせろ。わかったな」
無茶苦茶である。ソランは目を怒らせて彼を見た。何か言う前に、指で唇を封じられる。
「私ができないのだから、おまえにやってもらうしかないではないか。補い合ってこその夫婦だろう。頼りにしているぞ、我が妃よ」
「まだ婚約者です」
ぱしんと、手と言葉ではねのける。
「うん、そうだった。愛しの婚約者殿」
無茶な道理を引っ込める気はないらしい。むしろ、なにがなんでもやらせるつもりだ。ソランは彼を睨みつつ承諾の返事をするしかなかった。
「……畏まりましてございます」
「うん、頼む」
彼女は初めて、いつも無茶振りされているディーの苦労を知った気がした。
「ソラン!」
無事を確かめようと、頭からはじまって、いろんなところを触られる。
「ご心配をおかけして申し訳ありません。侍女とふざけが過ぎて、大騒ぎしてしまいました。護衛の皆様にも、ご迷惑をおかけしました」
頭を下げる。
「生きた心地がしなかった。いっそ閉じ込められれば、その方がどれほど気が楽か」
殿下はソランの頬に両手を添えながら、苦痛を堪えた表情をした。
「籠の鳥にはなれません」
「わかっている。しかし、思った以上にきついな。本当は片時も離したくない」
「大袈裟な。着替えに戻っただけではないですか」
「それだけでこれではないか。先が思いやられる」
ソランはニッコリと作り笑いを浮かべて護衛たちに会釈すると、殿下の腕を引っ張り、部屋の奥まった場所に連れて行った。声をひそめて諫言する。
「人前でそのような言動はお控えくださいませ。私ごときにかまけて、嘲笑われます」
「聞けんな。するつもりもない。だから、おまえが納得させるだけの女になれ」
「そういう問題では」
「そういう問題だ。嘲笑う奴は叩き伏せろ。知性でも美貌でも剣の腕でもいい。なんなら実家の権勢も笠に着てやれ。ああ、そうだ、女たらしの腕でもよかろう」
特に最後の一言に眉を顰めた彼女を見て、ニヤリとする。
「嘲笑うような阿呆は、一人残らず足元に這いつくばらせろ。わかったな」
無茶苦茶である。ソランは目を怒らせて彼を見た。何か言う前に、指で唇を封じられる。
「私ができないのだから、おまえにやってもらうしかないではないか。補い合ってこその夫婦だろう。頼りにしているぞ、我が妃よ」
「まだ婚約者です」
ぱしんと、手と言葉ではねのける。
「うん、そうだった。愛しの婚約者殿」
無茶な道理を引っ込める気はないらしい。むしろ、なにがなんでもやらせるつもりだ。ソランは彼を睨みつつ承諾の返事をするしかなかった。
「……畏まりましてございます」
「うん、頼む」
彼女は初めて、いつも無茶振りされているディーの苦労を知った気がした。
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