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195:カノープスさんが来た
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その日、カノープスさんが突然目の前に現れた。
と言っても師匠には事前に連絡が来ていたらしい。カノープスさんは転移で自由にエルフの国に来れるらしいけど、師匠の都合上、必ず事前に連絡を入れる事を約束していたそうで。
「まぁ、冒険者時代からの決まりごとだな。そうしないとこいつは本当に連絡なしに突然現れるからなぁ……」
しみじみとそう言う師匠に、ああ昔散々やられたんだなぁと簡単に想像がついた。
「それで、何の用事で態々ここまで来たんだ?」
用件は聞いていなかったのか、師匠がカノープスさんに話しかける。因みに今居るのは師匠の家のサロンだったりする。結局ずっと師匠の実家でお世話になってたんだよね。自活した方が良いんじゃないかとそれとなく話してもアダラさんやミルザムさん達から笑顔で引き留められるから。挙げ句の果てにはそんなに我が家に居るのは嫌かしら?って悲しそうな顔で言われたらもうずっとこの屋敷に住むしかないでしょ.....。うーん....掌で転がされてる気がしなくもないけど私に不利益は一切ないから何も言えないし、逆に居心地が良すぎて離れがたくなるよね。
「ん~……まぁ、近況報告を兼ねた休息みたいなものかな?」
「何故疑問系なんだ」
「いや別に目的があった訳じゃなく、本当に息抜きのつもりだったからな」
あっけらかんとカノープスさんは師匠へとそう告げてお茶を飲む。
「久し振りに長期休暇を貰ったんだ。ここ数年休む暇もなかったからな。魔獣が大人しくなってる今の内に休暇を貰っておこうってなってな?宮廷魔導師全員で順番に休暇申請をしてたんだよ。で、俺の番が回って来たんだ。どうせ長期休暇なら久々にお前達の顔でも見に行こうかなって思ってな」
「.....宮廷魔導師が長期休暇なんて槍でも降ってくるんじゃないか?」
「ははは。流石にそれは勘弁して欲しいかな。誰かさんが無茶振りばかり命令してくるから宮廷魔導師達はろくに休み間も無く働いてるって言うのに」
誰、とはハッキリ言わないのがカノープスさんだよねぇと思いながら私も入れて貰ったんだお茶を飲みながらケーキを食べる。あ、美味しい。
「.....相変わらずだな」
「まぁねぇ......その最たる物が例の第二王子と聖女の一件だ。俺からしたら呆れる以外の何者でもないな」
珍しくカノープスさんが明らかに嫌そうな表情を見せる。
「なんだ?定期連絡に書いてた以外に何かあったのか?」
師匠も何かしら思うところがあったのかカノープスさんへと問い掛けると、はぁ~とそれはそれは深い深い溜め息をついてカノープスさんは私達に視線を向けた。
「.....王位継承権を失った第二王子からの求婚を聖女が渋ってる話はしただろう?」
「ああ、そんな事を書いてたな」
「はい。聞きましたね」
「.....あのクソ聖女がそれから手当たり次第に高位貴族に媚を売り始め、挙げ句の果てには俺にまでしつこく付きまとい始めたんだ」
「.....はぁ?第二王子が王位継承権を失ったのは自分達のせいなのにか?」
「.....そうだ。第二王子はこのままだと子爵あたりに落とされるから第二王子と婚姻をしても子爵夫人にしかなれない。それが嫌なんだろうな」
声を掛けるのも伯爵家以上の令息達にしか掛けていないからな、とカノープスさんが呆れてものが言えないとまで言い切った。
うん、確かに呆れて物が言えないよね。これますます転生者の可能性が高くなったなぁ.....取り敢えず私は関り合いになりたくないから当分人の国に近づくのはやめておこう、うん。
と言っても師匠には事前に連絡が来ていたらしい。カノープスさんは転移で自由にエルフの国に来れるらしいけど、師匠の都合上、必ず事前に連絡を入れる事を約束していたそうで。
「まぁ、冒険者時代からの決まりごとだな。そうしないとこいつは本当に連絡なしに突然現れるからなぁ……」
しみじみとそう言う師匠に、ああ昔散々やられたんだなぁと簡単に想像がついた。
「それで、何の用事で態々ここまで来たんだ?」
用件は聞いていなかったのか、師匠がカノープスさんに話しかける。因みに今居るのは師匠の家のサロンだったりする。結局ずっと師匠の実家でお世話になってたんだよね。自活した方が良いんじゃないかとそれとなく話してもアダラさんやミルザムさん達から笑顔で引き留められるから。挙げ句の果てにはそんなに我が家に居るのは嫌かしら?って悲しそうな顔で言われたらもうずっとこの屋敷に住むしかないでしょ.....。うーん....掌で転がされてる気がしなくもないけど私に不利益は一切ないから何も言えないし、逆に居心地が良すぎて離れがたくなるよね。
「ん~……まぁ、近況報告を兼ねた休息みたいなものかな?」
「何故疑問系なんだ」
「いや別に目的があった訳じゃなく、本当に息抜きのつもりだったからな」
あっけらかんとカノープスさんは師匠へとそう告げてお茶を飲む。
「久し振りに長期休暇を貰ったんだ。ここ数年休む暇もなかったからな。魔獣が大人しくなってる今の内に休暇を貰っておこうってなってな?宮廷魔導師全員で順番に休暇申請をしてたんだよ。で、俺の番が回って来たんだ。どうせ長期休暇なら久々にお前達の顔でも見に行こうかなって思ってな」
「.....宮廷魔導師が長期休暇なんて槍でも降ってくるんじゃないか?」
「ははは。流石にそれは勘弁して欲しいかな。誰かさんが無茶振りばかり命令してくるから宮廷魔導師達はろくに休み間も無く働いてるって言うのに」
誰、とはハッキリ言わないのがカノープスさんだよねぇと思いながら私も入れて貰ったんだお茶を飲みながらケーキを食べる。あ、美味しい。
「.....相変わらずだな」
「まぁねぇ......その最たる物が例の第二王子と聖女の一件だ。俺からしたら呆れる以外の何者でもないな」
珍しくカノープスさんが明らかに嫌そうな表情を見せる。
「なんだ?定期連絡に書いてた以外に何かあったのか?」
師匠も何かしら思うところがあったのかカノープスさんへと問い掛けると、はぁ~とそれはそれは深い深い溜め息をついてカノープスさんは私達に視線を向けた。
「.....王位継承権を失った第二王子からの求婚を聖女が渋ってる話はしただろう?」
「ああ、そんな事を書いてたな」
「はい。聞きましたね」
「.....あのクソ聖女がそれから手当たり次第に高位貴族に媚を売り始め、挙げ句の果てには俺にまでしつこく付きまとい始めたんだ」
「.....はぁ?第二王子が王位継承権を失ったのは自分達のせいなのにか?」
「.....そうだ。第二王子はこのままだと子爵あたりに落とされるから第二王子と婚姻をしても子爵夫人にしかなれない。それが嫌なんだろうな」
声を掛けるのも伯爵家以上の令息達にしか掛けていないからな、とカノープスさんが呆れてものが言えないとまで言い切った。
うん、確かに呆れて物が言えないよね。これますます転生者の可能性が高くなったなぁ.....取り敢えず私は関り合いになりたくないから当分人の国に近づくのはやめておこう、うん。
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