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96:華姫祭・4
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馬車の上には白いドレスに赤やピンク、黄色に水色等色とりどりの花冠を頭に乗せた女性達が笑顔で手を振っているのが見えた。
「ドレスは皆同じなんですね?」
「貴族子女が華姫に混ざるようになってから統一されたんだよ....色で揉めたり、平民より良いドレスにしてくれだとかな」
ギルドマスターは心底あきれた表情をしている。もしかして、実際にその場に居たのかもしれない。
「だからもう同じドレスで統一したんだ。嫌なら華姫を辞退しろってな....そもそも元々は平民が始めた祭に勝手に仕切りだしたのは貴族共だからな....当時の辺境伯や国王からも貴族共に言い聞かせて貰ったよ」
「へぇ~……王様はマトモな人だったんですね?」
「まぁな」
もしかしてギルドマスターも余り貴族が好きじゃないのかも?そんな雰囲気が漂ってくる。もしかして冒険者時代にお貴族様と色々あったのかもしれないなぁ……。
馬車は私達の前を通り過ぎ、これから街中を走って行くそうだ。華姫は何台かの馬車に別れて乗っているので、馬車が通る度に歓声が聞こえてくる。
「まぁでも綺麗ですよね!」
「何だ?お前も選ばれてみたいのか?」
ギルドマスターが私のそんな感想に興味深そうに此方を覗き込んでくる。
「いえ、それは余り興味ないです。単純にごく一般的な感想ですね」
「....お前それ子供の感想じゃないぞ?」
「そうですか?」
実際中身は子供じゃないしね。
「子供ならこう....華姫キレーイ!私もなりたい!....ぐらいは言わないか?」
「.....ギルドマスター、女の子の真似上手いですね?」
「.....うるさい」
らしくない事をした自覚があるのか、ギルドマスターはバツの悪そうな、恥ずかしそうな顔をしている。そんなギルドマスターを少しだけ可愛いなと思いつつ、こんな事を言ったらへそを曲げそうだとも思った。
ギルドマスターと別れて、再び屋台巡りをしつつお祭りを楽しむ。
今のところ特に問題も起きていないようで街の皆が各々楽しんでいるようだ。
『....人は変な生き物だな』
「そうかな?」
黎明が私が渡した林檎を噛りながら道行く人に視線を移して呟く。
『こんな祭など我ら聖獣では考えつかない』
「それは元々の生態系が違うんだから仕方ないんじゃない?」
『そうだな。我々は同じ状態でずっとあり続けるモノだ。それ以上でもそれ以下でもない』
「.....人間は良い意味でも悪い意味でも成長する生き物だからねぇ.....」
『....主は....』
「え?」
何か言い掛けて黎明は黙り込む。
『いや.....なんでもない。この後は広場に行くのだろう?』
「う、うん。一応お祭りの1番の見せ場の告白タイムだからね~。1回ぐらいは見ておくべきでしょ?」
あからさまに話を変えた黎明を不思議に思いつつも、まぁ何かあればいつか話してくれるだろうと思い、話しに乗っかるフリをする。
遠目で見てもわかるぐらいに広場には既に人が集まっているのが見える。
人並みを掻き分けて、私は特設されたステージに近寄った。
「ドレスは皆同じなんですね?」
「貴族子女が華姫に混ざるようになってから統一されたんだよ....色で揉めたり、平民より良いドレスにしてくれだとかな」
ギルドマスターは心底あきれた表情をしている。もしかして、実際にその場に居たのかもしれない。
「だからもう同じドレスで統一したんだ。嫌なら華姫を辞退しろってな....そもそも元々は平民が始めた祭に勝手に仕切りだしたのは貴族共だからな....当時の辺境伯や国王からも貴族共に言い聞かせて貰ったよ」
「へぇ~……王様はマトモな人だったんですね?」
「まぁな」
もしかしてギルドマスターも余り貴族が好きじゃないのかも?そんな雰囲気が漂ってくる。もしかして冒険者時代にお貴族様と色々あったのかもしれないなぁ……。
馬車は私達の前を通り過ぎ、これから街中を走って行くそうだ。華姫は何台かの馬車に別れて乗っているので、馬車が通る度に歓声が聞こえてくる。
「まぁでも綺麗ですよね!」
「何だ?お前も選ばれてみたいのか?」
ギルドマスターが私のそんな感想に興味深そうに此方を覗き込んでくる。
「いえ、それは余り興味ないです。単純にごく一般的な感想ですね」
「....お前それ子供の感想じゃないぞ?」
「そうですか?」
実際中身は子供じゃないしね。
「子供ならこう....華姫キレーイ!私もなりたい!....ぐらいは言わないか?」
「.....ギルドマスター、女の子の真似上手いですね?」
「.....うるさい」
らしくない事をした自覚があるのか、ギルドマスターはバツの悪そうな、恥ずかしそうな顔をしている。そんなギルドマスターを少しだけ可愛いなと思いつつ、こんな事を言ったらへそを曲げそうだとも思った。
ギルドマスターと別れて、再び屋台巡りをしつつお祭りを楽しむ。
今のところ特に問題も起きていないようで街の皆が各々楽しんでいるようだ。
『....人は変な生き物だな』
「そうかな?」
黎明が私が渡した林檎を噛りながら道行く人に視線を移して呟く。
『こんな祭など我ら聖獣では考えつかない』
「それは元々の生態系が違うんだから仕方ないんじゃない?」
『そうだな。我々は同じ状態でずっとあり続けるモノだ。それ以上でもそれ以下でもない』
「.....人間は良い意味でも悪い意味でも成長する生き物だからねぇ.....」
『....主は....』
「え?」
何か言い掛けて黎明は黙り込む。
『いや.....なんでもない。この後は広場に行くのだろう?』
「う、うん。一応お祭りの1番の見せ場の告白タイムだからね~。1回ぐらいは見ておくべきでしょ?」
あからさまに話を変えた黎明を不思議に思いつつも、まぁ何かあればいつか話してくれるだろうと思い、話しに乗っかるフリをする。
遠目で見てもわかるぐらいに広場には既に人が集まっているのが見える。
人並みを掻き分けて、私は特設されたステージに近寄った。
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