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番外編
9:可愛い子・3(カーディナル視点)
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この国の国王陛下であり、私の兄でもある方の息子である第二王子のロティス。第一王子であり王太子でもあるアストリットは品行方正、成績優秀で武芸も嗜み性格にも何の問題もない。だが第二王子であるロティスは問題ばかりを起こし国王夫妻を困らせている。
そして何故かルテウスに執着を見せている。
学園内で子爵令息達と乱れた生活をしているくせにルテウスを必死に呼び出そうとしていると私の元に報告が入るぐらいだ。相当派手な生活をし、学園内でも噂になっているのだろう。
ルテウスには私の影を張り付けてはいるが、それでも完全に安全だとは言いきれない。私の居ない場所であの子が悲しい想いをしなければ良いが....。
ふと、私自身がそんな風に考えている事に苦笑してしまう。ルテウスに出会う前の私は他人に対して興味がなく基本的には無関心を貫いていたと言うのに.....。けれどルテウスに対する自分が嫌いではないから余計に複雑だったりもするんだが。
「.....ルテウスは誰にも渡さない。例えそれが甥であってもな」
それからは常にロティスを監視しルテウスに近付けさせないように気を配っていたが、まさかロティスが国王陛下に王命を出させてルテウスを婚約者にしようとするとは予想外だった。まぁ実際に国王陛下がそんな物を出す筈がないとは思っているが王子達を可愛がっているからないとは言い切れないのが正直なところだった。
泣いて私の元へと駆け込んできたルテウスを見た瞬間、私は彼を私の妻にする事を決めた。婚姻前....と言うか正式な婚約者でもないのに身体を重ねるのは世間体として余り良いとは言えないが今既成事実を作っておかないと心配だったからだ....勿論私が。
こういった行為は勿論私も初めてだがルテウスも初めてだ。なるべく彼に痛みを感じさせず、私だけを感じて欲しくてついしつこく愛撫に熱が入ってしまったかも知れない。可愛らしく啼くルテウスに朝まで離せなかったのは仕方がない事だろう。
国王陛下の元、夜会での公式な発表で名実ともに夫婦になった私達はロティスがまさかあんな事までするとは思ってもおらず、完全に油断していたとしか言いようがなかった。まさか私の正式な妻になったルテウスを王族であるロティスが自分の物にしようと暴行するなど誰が思うだろうか?
未遂には終わったが縛られ殴られたルテウスのショックは計り知れないだろう。私にしがみついて泣くルテウスを私は抱き締める事しか出来なかった。
私はここまで人を憎いと思った事はあっただろうか?身内であった筈の甥だ。だが今、私がロティスに向ける感情は憎しみしかない。独りよがりな愛でルテウスを傷つけ悲しませた。
.....私のルテウスをあれ程苦しめたのだから生半可な罰で許すものか....
私の足は貴族牢へと向かう。ロティスを収容している王族専用の貴族牢だ。牢と言っても平民の牢とは違い所詮王公貴族達の為の牢だ。一般の庶民が住む家よりも遥かに立派な家具や生活の出来る牢だ。ただ入り口が鉄格子を嵌められているので外に出られないだけの部屋。
「.....ロティス」
私は部屋の入り口にある鉄格子の外側からロティスに話し掛ける。ロティスは私の声に顔をゆっくりと上げた。
「叔父上....ルテウスは?」
「貴様がその名を呼ぶ資格はない」
「ルテウスは私の婚約者です....!どうして叔父上なのですか!?返して下さい!返してっ!!」
鉄格子にすがり付き私を睨み付けながら叫ぶロティスに私は溜め息をついた。
「2度は言わない....ルテウスが愛しているのは貴様ではない、この私だけだ」
「違うっ!!」
「違わない。貴様はルテウスの気持ちを省みることなく勝手に自分が愛されていると夢想しているだけだ。憐れな奴だな....ルテウスを傷つけた貴様にルテウスの愛が与えられる事など永遠に来ない」
「ちがうっ....!ちがう.....っ!!」
もう何を言っても無駄だろう。自分の夢想の中でしか生きられないロティスは王族としても人としても。
「ルテウスを傷つけたお前を私は生涯許しはしない」
それだけを言うと私は2度とロティスを見る事なく城を後にした。
....私が甥に会う事は今後2度とないだろう....
第二王子の王位継承権の剥奪に北の塔への幽閉。それだけで貴族達に衝撃を与えるだろう。流石にそのままを発表すればルテウスにも被害が及ぶだろう。未遂と解っていながらもそこにつけこんで来るのが貴族社会だ。だから表向きは病気療養の為に王都から離れた離宮で静養すると発表し、それに伴って王位継承権は放棄したとした。当然今回の一件に関わっていた子息も同様とした。不本意だが仕方がない。
ルテウスを守る為なのだから。
けれど馬鹿は何処にでもいるらしい。ロティスが懇意にしていた子息令息がルテウスを殺そうとした。学園内で、しかも階段から突き落としたのだ。少し前から影に子爵令息が怪しい動きをしていると報告を受けていたから動くなら卒業するまでだろうと考えていた。
あの高さの階段から無防備に落ちれば怪我だけで済めば良いが打ち所が悪ければ死んでいたかもしれない。
ルテウスに手を貸しながら階段を昇れば私の護衛騎士達に取り押さえられた子爵令息がいた。私の顔を見ると嬉しそうにして媚を売り始める子爵令息に嫌悪を抱いているとルテウスがギュッと私にしがみついてくる。そんなルテウスが可愛らしく思う。
「モブのくせして!カーディナル様から離れろ!!」
「.....ルテウスはこの世で私が一番愛する伴侶だ。離れる必要はないし、絶体私が離さない」
そんな可愛いルテウスに尚も暴言を吐き出す子爵令息に殺意しかわかない。
クイッとルテウスの顎を取り唇に濃厚なキスをした。まるで子爵令息に見せつけるように。
呆然とする子爵令息を騎士達に連れて行くように指示を出し私はルテウスを連れて屋敷へと戻った。
これでもうルテウスを苦しませる者は居なくなった。
ルテウスの学園卒業後、私は正式にローゼ公爵となりルテウスは公爵夫人となった。高位貴族の中には跡継ぎの為に第二夫人を是非に、と馬鹿な事を言う奴らも居たが全て捩じ伏せた。跡継ぎ等必要ならば養子を取れば良いだけだし一代限りの公爵家でも問題はないのだから。
私にとって大事なのはルテウスであり、私が心から欲しいと思ったのはルテウスだけなのだから。
私の愛はきっと重いのだろう。
けれど私の愛を捧げるべく唯一の人に出会ってしまったのだから仕方がないのだ。
ルテウス、私の愛する人。
君が幸せである限り、私も幸せなのだから。
そして何故かルテウスに執着を見せている。
学園内で子爵令息達と乱れた生活をしているくせにルテウスを必死に呼び出そうとしていると私の元に報告が入るぐらいだ。相当派手な生活をし、学園内でも噂になっているのだろう。
ルテウスには私の影を張り付けてはいるが、それでも完全に安全だとは言いきれない。私の居ない場所であの子が悲しい想いをしなければ良いが....。
ふと、私自身がそんな風に考えている事に苦笑してしまう。ルテウスに出会う前の私は他人に対して興味がなく基本的には無関心を貫いていたと言うのに.....。けれどルテウスに対する自分が嫌いではないから余計に複雑だったりもするんだが。
「.....ルテウスは誰にも渡さない。例えそれが甥であってもな」
それからは常にロティスを監視しルテウスに近付けさせないように気を配っていたが、まさかロティスが国王陛下に王命を出させてルテウスを婚約者にしようとするとは予想外だった。まぁ実際に国王陛下がそんな物を出す筈がないとは思っているが王子達を可愛がっているからないとは言い切れないのが正直なところだった。
泣いて私の元へと駆け込んできたルテウスを見た瞬間、私は彼を私の妻にする事を決めた。婚姻前....と言うか正式な婚約者でもないのに身体を重ねるのは世間体として余り良いとは言えないが今既成事実を作っておかないと心配だったからだ....勿論私が。
こういった行為は勿論私も初めてだがルテウスも初めてだ。なるべく彼に痛みを感じさせず、私だけを感じて欲しくてついしつこく愛撫に熱が入ってしまったかも知れない。可愛らしく啼くルテウスに朝まで離せなかったのは仕方がない事だろう。
国王陛下の元、夜会での公式な発表で名実ともに夫婦になった私達はロティスがまさかあんな事までするとは思ってもおらず、完全に油断していたとしか言いようがなかった。まさか私の正式な妻になったルテウスを王族であるロティスが自分の物にしようと暴行するなど誰が思うだろうか?
未遂には終わったが縛られ殴られたルテウスのショックは計り知れないだろう。私にしがみついて泣くルテウスを私は抱き締める事しか出来なかった。
私はここまで人を憎いと思った事はあっただろうか?身内であった筈の甥だ。だが今、私がロティスに向ける感情は憎しみしかない。独りよがりな愛でルテウスを傷つけ悲しませた。
.....私のルテウスをあれ程苦しめたのだから生半可な罰で許すものか....
私の足は貴族牢へと向かう。ロティスを収容している王族専用の貴族牢だ。牢と言っても平民の牢とは違い所詮王公貴族達の為の牢だ。一般の庶民が住む家よりも遥かに立派な家具や生活の出来る牢だ。ただ入り口が鉄格子を嵌められているので外に出られないだけの部屋。
「.....ロティス」
私は部屋の入り口にある鉄格子の外側からロティスに話し掛ける。ロティスは私の声に顔をゆっくりと上げた。
「叔父上....ルテウスは?」
「貴様がその名を呼ぶ資格はない」
「ルテウスは私の婚約者です....!どうして叔父上なのですか!?返して下さい!返してっ!!」
鉄格子にすがり付き私を睨み付けながら叫ぶロティスに私は溜め息をついた。
「2度は言わない....ルテウスが愛しているのは貴様ではない、この私だけだ」
「違うっ!!」
「違わない。貴様はルテウスの気持ちを省みることなく勝手に自分が愛されていると夢想しているだけだ。憐れな奴だな....ルテウスを傷つけた貴様にルテウスの愛が与えられる事など永遠に来ない」
「ちがうっ....!ちがう.....っ!!」
もう何を言っても無駄だろう。自分の夢想の中でしか生きられないロティスは王族としても人としても。
「ルテウスを傷つけたお前を私は生涯許しはしない」
それだけを言うと私は2度とロティスを見る事なく城を後にした。
....私が甥に会う事は今後2度とないだろう....
第二王子の王位継承権の剥奪に北の塔への幽閉。それだけで貴族達に衝撃を与えるだろう。流石にそのままを発表すればルテウスにも被害が及ぶだろう。未遂と解っていながらもそこにつけこんで来るのが貴族社会だ。だから表向きは病気療養の為に王都から離れた離宮で静養すると発表し、それに伴って王位継承権は放棄したとした。当然今回の一件に関わっていた子息も同様とした。不本意だが仕方がない。
ルテウスを守る為なのだから。
けれど馬鹿は何処にでもいるらしい。ロティスが懇意にしていた子息令息がルテウスを殺そうとした。学園内で、しかも階段から突き落としたのだ。少し前から影に子爵令息が怪しい動きをしていると報告を受けていたから動くなら卒業するまでだろうと考えていた。
あの高さの階段から無防備に落ちれば怪我だけで済めば良いが打ち所が悪ければ死んでいたかもしれない。
ルテウスに手を貸しながら階段を昇れば私の護衛騎士達に取り押さえられた子爵令息がいた。私の顔を見ると嬉しそうにして媚を売り始める子爵令息に嫌悪を抱いているとルテウスがギュッと私にしがみついてくる。そんなルテウスが可愛らしく思う。
「モブのくせして!カーディナル様から離れろ!!」
「.....ルテウスはこの世で私が一番愛する伴侶だ。離れる必要はないし、絶体私が離さない」
そんな可愛いルテウスに尚も暴言を吐き出す子爵令息に殺意しかわかない。
クイッとルテウスの顎を取り唇に濃厚なキスをした。まるで子爵令息に見せつけるように。
呆然とする子爵令息を騎士達に連れて行くように指示を出し私はルテウスを連れて屋敷へと戻った。
これでもうルテウスを苦しませる者は居なくなった。
ルテウスの学園卒業後、私は正式にローゼ公爵となりルテウスは公爵夫人となった。高位貴族の中には跡継ぎの為に第二夫人を是非に、と馬鹿な事を言う奴らも居たが全て捩じ伏せた。跡継ぎ等必要ならば養子を取れば良いだけだし一代限りの公爵家でも問題はないのだから。
私にとって大事なのはルテウスであり、私が心から欲しいと思ったのはルテウスだけなのだから。
私の愛はきっと重いのだろう。
けれど私の愛を捧げるべく唯一の人に出会ってしまったのだから仕方がないのだ。
ルテウス、私の愛する人。
君が幸せである限り、私も幸せなのだから。
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