上 下
48 / 60
第二章

48:学園へ

しおりを挟む
朝、案の定僕は起き上がれなくて学園を休んでしまった。まぁ卒業生はもう通常授業はなく、生徒会は卒業パーティーの準備に追われているし、それ以外の生徒は自主学習期間となる。だから1日ぐらいなら休んでも問題はないのだけど。

「....僕、生徒会のメンバーだから今が一番忙しいのに休んじゃって申し訳ないなぁ....」

そう。今一番忙しいメンバーなのに休んでしまうと他のメンバーに迷惑が掛かってしまうのだ。

「大丈夫だろう?昨日ルテウスが階段から突き落とされた事も生徒会なら知っている筈だし、ルテウス1人がいなくて何も出来ないメンバーではないのだろう?」
「それは勿論!」

生徒会の皆はそれぞれ優秀な人ばかりだから誰かが欠けてもそれを補う能力は当然ある。

「なら大丈夫だ」
「.....うん」

でも正直今日休む原因を作ったカーディナル様に言われて何とも言えない気分になる。いや、でも結局僕も止めなかったんだし!カーディナル様の責任だけじゃないよね!

その日は1日カーディナル様に甲斐甲斐しく世話をされながら過ごした。本来なら僕の専属侍女がお世話をしてくれるんだけど、嬉々として僕の世話をしたがるカーディナル様に侍女は苦笑しながらも足りない部分だけを補助するような形で手助けしてくれた。

そして翌日は体調も戻り学園へと向かう。教室へと入るとアルト君やネモローサ君クラスメイト達が僕の元に駆け寄って来た。

「「ルテウス!階段から落とされたって聞いたけど大丈夫だったの!?」」

皆のその剣幕に僕の方が吃驚してしまう。

「う、うん。怪我はね、カーディナル様が受け止めてくれたから手を少しだけ擦りむいたぐらいで大丈夫だったんだ」
「え、そうなの?」
「うん。昨日はカーディナル様が心配して1日だけ屋敷でゆっくりしてただけなんだ」

まさか朝まで.....だったから起きれなくて休んだとは言えなくてそう誤魔化す。思わず顔が赤くなりかけて慌ててしまう。もしかしたら敏い2人の事だから僕のその様子に何かしら思うところがあったのかもしれない。

「そうだったのか....良かった!」
「心配したんだからね!」
「うん、ありがとう。僕は大丈夫だよ」

笑顔でそう言えばようやく皆も安心したのか、ホッとした表情へと変わった。

「それにしてもアイツ!最後の最後までルテウスに逆恨みして!」
「本当だよね!!」

僕を本気で心配してくれる2人に心の中が暖かくなる。本当に僕は良い友人を持てたよね。

「うん....でもそれは結局彼自身に還っていくから.....」

ナーレ・コルチカム子爵令息への処罰が正式に決定されるのは僕達の卒業パーティーが終わった頃だとカーディナル様が教えてくれた。彼は学園を卒業する事もなく、これから彼が過ごさなくてはならない場所へと送られるのだろう。

「そうそう、卒業パーティーの準備はほぼ終えたから後は当日が来るのを待つだけだよ」

アルト君が思い出したとばかりに僕に告げた。僕が1日休んだ間にもう終わらせてるなんて。

「まぁ後残ってた作業は飾り付けとか料理を置くテーブルなんかの配置だけだったしね。生徒会のメンバー皆でやれば早かったよ」
「そうそう。何だか僕達がもう卒業なんて気がしないよね」
「うん」

そう、確かに僕達がもう卒業なんて気がしなくて卒業パーティーが終わった後も普通に学園に来ておはよう、なんて挨拶している景色が浮かぶ。現実にはそんな事はないんだけど。

.....何だか急に寂しくなる。

「まぁでもこれからは社交界で会えるし、お茶会もするから是非我が家へ来てよ!」

ネモローサ君が僕とアルト君に笑顔で告げる。うん、そうだよね。学園が卒業しても僕達の交流が無くなる訳じゃないよね。

「「勿論!」」

もう既に卒業後のお茶会まで約束して、僕達は明後日学園を卒業する。





 
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

侯爵令息セドリックの憂鬱な日

めちゅう
BL
 第二王子の婚約者候補侯爵令息セドリック・グランツはある日王子の婚約者が決定した事を聞いてしまう。しかし先に王子からお呼びがかかったのはもう一人の候補だった。候補落ちを確信し泣き腫らした次の日は憂鬱な気分で幕を開ける——— ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー 初投稿で拙い文章ですが楽しんでいただけますと幸いです。

誰よりも愛してるあなたのために

R(アール)
BL
公爵家の3男であるフィルは体にある痣のせいで生まれたときから家族に疎まれていた…。  ある日突然そんなフィルに騎士副団長ギルとの結婚話が舞い込む。 前に一度だけ会ったことがあり、彼だけが自分に優しくしてくれた。そのためフィルは嬉しく思っていた。 だが、彼との結婚生活初日に言われてしまったのだ。 「君と結婚したのは断れなかったからだ。好きにしていろ。俺には構うな」   それでも彼から愛される日を夢見ていたが、最後には殺害されてしまう。しかし、起きたら時間が巻き戻っていた!  すれ違いBLです。 ハッピーエンド保証! 初めて話を書くので、至らない点もあるとは思いますがよろしくお願いします。 (誤字脱字や話にズレがあってもまあ初心者だからなと温かい目で見ていただけると助かります) 11月9日~毎日21時更新。ストックが溜まったら毎日2話更新していきたいと思います。 ※…このマークは少しでもエッチなシーンがあるときにつけます。 自衛お願いします。

ブレスレットが運んできたもの

mahiro
BL
第一王子が15歳を迎える日、お祝いとは別に未来の妃を探すことを目的としたパーティーが開催することが発表された。 そのパーティーには身分関係なく未婚である女性や歳の近い女性全員に招待状が配られたのだという。 血の繋がりはないが訳あって一緒に住むことになった妹ーーーミシェルも例外ではなく招待されていた。 これまた俺ーーーアレットとは血の繋がりのない兄ーーーベルナールは妹大好きなだけあって大いに喜んでいたのだと思う。 俺はといえば会場のウェイターが足りないため人材募集が貼り出されていたので応募してみたらたまたま通った。 そして迎えた当日、グラスを片付けるため会場から出た所、廊下のすみに光輝く何かを発見し………?

公爵様のプロポーズが何で俺?!

雪那 由多
BL
近衛隊隊長のバスクアル・フォン・ベルトランにバラを差し出されて結婚前提のプロポーズされた俺フラン・フライレですが、何で初対面でプロポーズされなくてはいけないのか誰か是非教えてください! 話しを聞かないベルトラン公爵閣下と天涯孤独のフランによる回避不可のプロポーズを生暖かく距離を取って見守る職場の人達を巻き込みながら 「公爵なら公爵らしく妻を娶って子作りに励みなさい!」 「そんな物他所で産ませて連れてくる!  子作りが義務なら俺は愛しい妻を手に入れるんだ!」 「あんたどれだけ自分勝手なんだ!!!」 恋愛初心者で何とも低次元な主張をする公爵様に振りまわされるフランだが付き合えばそれなりに楽しいしそのうち意識もする……のだろうか?

悪役王子の取り巻きに転生したようですが、破滅は嫌なので全力で足掻いていたら、王子は思いのほか優秀だったようです

魚谷
BL
ジェレミーは自分が転生者であることを思い出す。 ここは、BLマンガ『誓いは星の如くきらめく』の中。 そしてジェレミーは物語の主人公カップルに手を出そうとして破滅する、悪役王子の取り巻き。 このままいけば、王子ともども断罪の未来が待っている。 前世の知識を活かし、破滅確定の未来を回避するため、奮闘する。 ※微BL(手を握ったりするくらいで、キス描写はありません)

転生貧乏貴族は王子様のお気に入り!実はフリだったってわかったのでもう放してください!

音無野ウサギ
BL
ある日僕は前世を思い出した。下級貴族とはいえ王子様のお気に入りとして毎日楽しく過ごしてたのに。前世の記憶が僕のことを駄目だしする。わがまま駄目貴族だなんて気づきたくなかった。王子様が優しくしてくれてたのも実は裏があったなんて気づきたくなかった。品行方正になるぞって思ったのに! え?王子様なんでそんなに優しくしてくるんですか?ちょっとパーソナルスペース!! 調子に乗ってた貧乏貴族の主人公が慎ましくても確実な幸せを手に入れようとジタバタするお話です。

期待外れの後妻だったはずですが、なぜか溺愛されています

ぽんちゃん
BL
 病弱な義弟がいじめられている現場を目撃したフラヴィオは、カッとなって手を出していた。  謹慎することになったが、なぜかそれから調子が悪くなり、ベッドの住人に……。  五年ほどで体調が回復したものの、その間にとんでもない噂を流されていた。  剣の腕を磨いていた異母弟ミゲルが、学園の剣術大会で優勝。  加えて筋肉隆々のマッチョになっていたことにより、フラヴィオはさらに屈強な大男だと勘違いされていたのだ。  そしてフラヴィオが殴った相手は、ミゲルが一度も勝てたことのない相手。  次期騎士団長として注目を浴びているため、そんな強者を倒したフラヴィオは、手に負えない野蛮な男だと思われていた。  一方、偽りの噂を耳にした強面公爵の母親。  妻に強さを求める息子にぴったりの相手だと、後妻にならないかと持ちかけていた。  我が子に爵位を継いで欲しいフラヴィオの義母は快諾し、冷遇確定の地へと前妻の子を送り出す。  こうして青春を謳歌することもできず、引きこもりになっていたフラヴィオは、国民から恐れられている戦場の鬼神の後妻として嫁ぐことになるのだが――。  同性婚が当たり前の世界。  女性も登場しますが、恋愛には発展しません。

愛などもう求めない

白兪
BL
とある国の皇子、ヴェリテは長い長い夢を見た。夢ではヴェリテは偽物の皇子だと罪にかけられてしまう。情を交わした婚約者は真の皇子であるファクティスの側につき、兄は睨みつけてくる。そして、とうとう父親である皇帝は処刑を命じた。 「僕のことを1度でも愛してくれたことはありましたか?」 「お前のことを一度も息子だと思ったことはない。」 目が覚め、現実に戻ったヴェリテは安心するが、本当にただの夢だったのだろうか?もし予知夢だとしたら、今すぐここから逃げなくては。 本当に自分を愛してくれる人と生きたい。 ヴェリテの切実な願いが周りを変えていく。  ハッピーエンド大好きなので、絶対に主人公は幸せに終わらせたいです。 最後まで読んでいただけると嬉しいです。

処理中です...