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七章 決戦
24話 王国に帰還
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2ヶ月と少しをかけて俺達はグラント王国にたどり着いた。
検問は俺の冒険者カードを見せて通してもらい、真っ直ぐ王宮に向かってそこで待ち受けていたせーバスさんと出会い、外壁沿いに大規模の野営地を設営した。
「直ぐに国王が話をしたいそうなので行ってください」
「でもまだ残ってるだろ」
「これぐらいなら私ひとりで充分ですよ。さぁ、行ってください」
「……わかった。あとは頼んだ」
俺はせーバスさんにそう言って、以前行ったことがあるおっちゃんの私室の前に転移で向かった。
ドアをノックし、返事をもらってから入室するとそこにはミリーナたち全員がおっちゃんと一緒にお茶を飲みながら話していた。
「お、戻ってきたかアストよ」
「ああ、なんか悪いな」
「いやいや、気にするな。お主が悪いわけではない。2ヶ月も前に教えてくれたんじゃからそれなりに準備はできる。で、問題はこの後じゃ」
「ナリュマーは既に壊滅状態だ。できるならこの国に住まわせることがいいと思う」
「それ自体は構わない。だが土地がないのじゃ」
「帝国の領土があるだろ?」
「まだ使えるほどではない 。それに国民が増えれば食料もままならん」
「なるほどな……」
俺とおっちゃんが悩んでいると、ミリーナが俺の服を引っ張った。
「どうした、ミリーナ」
「えっと…アストの力なら帝国の土地を元どおりにできるんじゃないかなと思って」
「できるが流石に時間がかかる。まずは帝国にある建物を取り壊すところから始めて土も全部変えなきゃならないからな。最低でも1日はかかる」
「それって十分じゃない?」
「うむ、儂もそれでいいと思うぞ?1日ぐらいならわが国で賄うことはできるしの」
「……本当にいいのか?」
「もちろんだとも。こちらこそ、帰ってきて早々だが頼めるか?」
「大丈夫だ。あれに関しては、俺が原因みたいなもんだしな。ちゃんと責任はとるよ」
「そうか。では任せた」
「おう」
おっちゃんにそう言われた俺は、軽く頷いてから城を出た。
もちろんミリーナたちも一緒にだ。
「聞いてたから分かると思うが、今から帝国の方に行くから留守番頼めるか?」
「むぅ~」
「ど、どうしたんだよ」
俺が留守番を頼もうとすると、ミリーナが頬を膨らませてむくれた。
「だって、最近ずっと一緒にいなくて寂しかったんだもん。だから今日ぐらいは一緒に過ごしたかったのに~」
「わ、悪かったよ。明後日は時間があるからさ?明後日一緒に買い物にでも行こうぜ?」
「本当?」
「ほ、本当だとも」
「うーん。じゃあ許してあげる!」
「お、おう。……はぁ」
俺はミリーナには聞こえないように小さくため息を吐き、みんなで雑談をしながら家に向かった。
家に着いてから俺は転移ですぐに帝国へと向かい、影を量産して建物を取り壊したり、血で汚れた土を綺麗にしたり、新しい外壁や建物を作ったりしていった。
無事だった家もあったが、もともとが帝国のもので俺の気分が良くなかったってこともあり、全てを取り壊して更地にして、整地をしてから色々と建物の建築をしていった。
「ちょっとこだわりすぎたな……ま、いっか」
終わったのは始めてから1日と8時間後だった。
自宅に戻る前に王宮に行きおっちゃんに出来たことを伝えると、呆れたような顔をしてため息を吐かれた。
「本当に規格外だな。アストは」
「そうでもねぇよ。じゃあ俺は帰るよ。さっさと帰らないとミリーナにどやされるからな」
「ミリーナはもうお主にベッタリじゃからな。父親としては話す機会が少なくなって寂しいがミリーナ自身が幸せになっておればそれが1番じゃからな」
「ああ、俺がミリーナを世界で1番の幸せものにしてやるよ」
少しだけ世間話をした後、俺は転移で家の自室に戻ってきた。
ずっと来ていた戦闘服を脱いで普通の一般的な服装に着替えてから部屋を出てリビングに向かった。
そこでは、寝間着姿に身を包んでいるミリーナが紅茶を飲みながらソファでくつろいでいた。
「おかえり」
「ああ、ただいま」
俺がミリーナの隣に座ると、静かに紅茶を汲んで俺の前に出した。
俺はそれを少しだけ飲んでから机に戻した。
「寝てないのか?」
「……うん。アストが頑張ってるのに私だけ寝るのはね」
顔を見ると、目の下に薄く隈ができていた。
ちゃんと寝てくれと言いたかったが、自分が原因であるためにそんなことは言えない。
「……ありがとな」
考えた末に口から出たのは感謝の言葉だった。
それを聞いたミリーナは優しく微笑んで俺へと向き合って目を閉じた。
どういう意味かはだいたい分かっているため俺はそれに応えてやるように唇を重ねた。
「今日はもう遅いから、続きは明日な」
「…うん。楽しみにしてるね」
「ああ、だからもう寝な。明日はデートもあるんだからな」
「…そう……だね」
ミリーナは途切れながらそう言って、俺の膝を枕にしながら眠りについた。
俺は優しくミリーナの頭を撫でてやりながら紅茶を飲み干して自分も静かに眠りについた。
検問は俺の冒険者カードを見せて通してもらい、真っ直ぐ王宮に向かってそこで待ち受けていたせーバスさんと出会い、外壁沿いに大規模の野営地を設営した。
「直ぐに国王が話をしたいそうなので行ってください」
「でもまだ残ってるだろ」
「これぐらいなら私ひとりで充分ですよ。さぁ、行ってください」
「……わかった。あとは頼んだ」
俺はせーバスさんにそう言って、以前行ったことがあるおっちゃんの私室の前に転移で向かった。
ドアをノックし、返事をもらってから入室するとそこにはミリーナたち全員がおっちゃんと一緒にお茶を飲みながら話していた。
「お、戻ってきたかアストよ」
「ああ、なんか悪いな」
「いやいや、気にするな。お主が悪いわけではない。2ヶ月も前に教えてくれたんじゃからそれなりに準備はできる。で、問題はこの後じゃ」
「ナリュマーは既に壊滅状態だ。できるならこの国に住まわせることがいいと思う」
「それ自体は構わない。だが土地がないのじゃ」
「帝国の領土があるだろ?」
「まだ使えるほどではない 。それに国民が増えれば食料もままならん」
「なるほどな……」
俺とおっちゃんが悩んでいると、ミリーナが俺の服を引っ張った。
「どうした、ミリーナ」
「えっと…アストの力なら帝国の土地を元どおりにできるんじゃないかなと思って」
「できるが流石に時間がかかる。まずは帝国にある建物を取り壊すところから始めて土も全部変えなきゃならないからな。最低でも1日はかかる」
「それって十分じゃない?」
「うむ、儂もそれでいいと思うぞ?1日ぐらいならわが国で賄うことはできるしの」
「……本当にいいのか?」
「もちろんだとも。こちらこそ、帰ってきて早々だが頼めるか?」
「大丈夫だ。あれに関しては、俺が原因みたいなもんだしな。ちゃんと責任はとるよ」
「そうか。では任せた」
「おう」
おっちゃんにそう言われた俺は、軽く頷いてから城を出た。
もちろんミリーナたちも一緒にだ。
「聞いてたから分かると思うが、今から帝国の方に行くから留守番頼めるか?」
「むぅ~」
「ど、どうしたんだよ」
俺が留守番を頼もうとすると、ミリーナが頬を膨らませてむくれた。
「だって、最近ずっと一緒にいなくて寂しかったんだもん。だから今日ぐらいは一緒に過ごしたかったのに~」
「わ、悪かったよ。明後日は時間があるからさ?明後日一緒に買い物にでも行こうぜ?」
「本当?」
「ほ、本当だとも」
「うーん。じゃあ許してあげる!」
「お、おう。……はぁ」
俺はミリーナには聞こえないように小さくため息を吐き、みんなで雑談をしながら家に向かった。
家に着いてから俺は転移ですぐに帝国へと向かい、影を量産して建物を取り壊したり、血で汚れた土を綺麗にしたり、新しい外壁や建物を作ったりしていった。
無事だった家もあったが、もともとが帝国のもので俺の気分が良くなかったってこともあり、全てを取り壊して更地にして、整地をしてから色々と建物の建築をしていった。
「ちょっとこだわりすぎたな……ま、いっか」
終わったのは始めてから1日と8時間後だった。
自宅に戻る前に王宮に行きおっちゃんに出来たことを伝えると、呆れたような顔をしてため息を吐かれた。
「本当に規格外だな。アストは」
「そうでもねぇよ。じゃあ俺は帰るよ。さっさと帰らないとミリーナにどやされるからな」
「ミリーナはもうお主にベッタリじゃからな。父親としては話す機会が少なくなって寂しいがミリーナ自身が幸せになっておればそれが1番じゃからな」
「ああ、俺がミリーナを世界で1番の幸せものにしてやるよ」
少しだけ世間話をした後、俺は転移で家の自室に戻ってきた。
ずっと来ていた戦闘服を脱いで普通の一般的な服装に着替えてから部屋を出てリビングに向かった。
そこでは、寝間着姿に身を包んでいるミリーナが紅茶を飲みながらソファでくつろいでいた。
「おかえり」
「ああ、ただいま」
俺がミリーナの隣に座ると、静かに紅茶を汲んで俺の前に出した。
俺はそれを少しだけ飲んでから机に戻した。
「寝てないのか?」
「……うん。アストが頑張ってるのに私だけ寝るのはね」
顔を見ると、目の下に薄く隈ができていた。
ちゃんと寝てくれと言いたかったが、自分が原因であるためにそんなことは言えない。
「……ありがとな」
考えた末に口から出たのは感謝の言葉だった。
それを聞いたミリーナは優しく微笑んで俺へと向き合って目を閉じた。
どういう意味かはだいたい分かっているため俺はそれに応えてやるように唇を重ねた。
「今日はもう遅いから、続きは明日な」
「…うん。楽しみにしてるね」
「ああ、だからもう寝な。明日はデートもあるんだからな」
「…そう……だね」
ミリーナは途切れながらそう言って、俺の膝を枕にしながら眠りについた。
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