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七章 決戦

22話 決着

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「オラオラァ!どうした?手も足も出てないじゃないか」
「くっ……」

アストは度重なる巨大な影人の攻撃により邪神への攻撃ができずにいた。

「こいつらは昨日お前らに殺された魔物の怨念がそのまま具現化したやつさ。こう言っちゃなんだが、お前らのお陰でこの技ができる。感謝するよ」
「うっ……せーな!」

アストは『身体強化』を使用して包囲網を脱し大きく距離をとった。

「『判別』……数は174か。『鑑定』……どいつもこいつも力は俺より弱えが防御力がほぼ互角か」

クソッ…防御力が高いんじゃ俺の攻撃も効かねえだろうし、何より数が多すぎる。
あいつらを掻い潜って邪神の元にまで行ったとしてもアイツには『近未来視』があるわけだから攻撃は当たらない。

「どうしたもんか……」

俺は一度ステータスを見て、今自分が何をできるかを確認した。

「『叡智』ってのは……使えるのか?」

ーーーーーーーーー
叡智
自身が知りたい情報を知ることができる
ーーーーーーーーー

「まぁものは試しだ。『叡智』あの影はどう対処すれば良い?」
“影人の対処法として、1番効果を持つのは光をあてることです。
次に有効となるものは、術者を殺害することですが影が基本的に術者守るので難しいと思われます”

叡智を発動すると、無機質な電子音的な声で対処法を言われた。

「光か……これで良いか?『偽の太陽フェイク・サン

光に関する魔法をしばらく考えた後、擬似太陽を作り出す魔法を思い出しそれを使用した。
すると、影はみるみるうちに小さくなっていき光をより強くすると消滅した。

「影は消えたか……」

影が消えたことはいいのだが、問題の邪神が見当たらなかった。

「隙ありだ!」
「食らうかよ!」

俺は後ろから襲いかかってきた邪神の攻撃を剣で受け、邪神の攻撃の反動を利用して距離をとった。

「知っててやったのかは分からねぇが、俺がただ影を作ったとは思ってねぇよな?」
「何が言いたい」
「分かってなかったのか……まぁ教えてやるよ。さっきの影はただの影人じゃない。アイツらは消えることでそのステータスを俺に送ることが出来るんだ」
「ッ……!?」
「おっ?気づいたか。つまり今の俺のステータスはなぁ、防御力は軽くお前の174倍はあるんだ…よ!」
「くぅ……この!」

俺は邪神からの剣戟をギリギリで対処し、スキをついて攻撃をするが全く傷を負わせることができなかった。

「オラオラァ!こんなもんかおめぇはよォ!」
「この……舐めんなよ!『勇者の加護』『勇撃』『超身体強化』『剛腕』『弱点補足』『不屈の精神』『選ばれし者』『特能』『肉体超強化』『頭脳明晰』『英雄の剣戟』『勇猛果敢』『大地の神秘』『自然の神秘』『魔力の神秘』『神速』『神剣』『弱点特定』『神纏』『神の裁き』『悪滅』」

俺は『勇者』と『超越』と『神秘』と『神技』との4つの総合固有能力の中から最適だと思うものを重ねがけしていった。
これをしたおかげで、ついていくのでやっとだった邪神との能力の差がなくなり、追い込むまでになった。

「くっ……まだまだぁぁあ!」

邪神は再び百数人規模の影を生み出し、その影を今度は自ら殺していった。

「俺はまだ…負けてねぇ!!」

次の邪神の攻撃を腕で受けると、先ほどまでは特に痛みもなかったのに、腕が折れるほどの威力へと強化されていた。

「さっきのは攻撃力特化ってか……厄介極まりないな」
「オラオラァ!かかって来いヤァ!!」

再生の能力により骨折はすぐに完治したが、その後の邪神の攻撃はさらに勢いを増していき、なるべく躱して致命傷は防いだものの再生が追いつかないほどまで追い込まれてしまった。

「まだ…負けるわけには……俺は……アイツらに認めさせるんだッ!!」

邪神は叫びながら猛攻を繰り返す。が、俺もただ受けるだけではない。

「ここっ!」
「カハッ……」

邪神の右大振りの殴りを利用して、体の軸を半歩横にずらし、相手の腕を掴み、思っきし地面に叩き落とした。
所謂、相手の力を利用した背負い投げだ。

その威力は、地面を隆起させクレーターを作るほどで、邪神はバウンドしながら血を吹いた。

しかし、致命傷にはなっておらず、すぐに俺を蹴り距離をとった。
その瞬間に俺は再生で傷を癒し邪神の次の動向を伺った。

「なぁ……お前は知ってるか?才能がある奴とない奴の絶対的な差ってやつを」
「………………」

邪神は前触れもなくいきなり語り始めた。
俺は何かしてくると予測し身構えるが、何秒経っても何も起こらなかった。

「才能がある奴は常にチヤホヤされていい気になって天狗になって……才能がない奴は周りから冷たい目で見られて無能と蔑まれて弱者となるんだ」
「………………」
「才能?そんなのなくたって努力でなんとかなる。そんなこと言う奴らは山ほどいる。実際その1人が俺だった。でも、才能がある奴と才能がない奴の一生分の努力は、天秤にかけられないほどの差がある」
「………………」
「俺は悔しかったんだ!才能才能って、生まれ持った能力だけで判断して、無能だった俺には誰も意識してくれずにただの石ころみたいな存在だとしか認知されてなくて」
「…………」
「努力は結果に結ぶ?結果に努力は付き物?ハッ!笑わせんなよ。この世界じゃあ生まれ持った奴らの才能で決まるんだよ」
「…………」
「だから俺は……そんな世界を変えたいんだ。才能がなくても努力で才能がある奴に勝てるってことを証明したいんだ!だから俺は邪神の傘下に入って努力した。必至に、本当に死ぬ気で努力をした。そして今の俺だ!どうだ?才能あるお前と結構やり合ってるだろ?」
「……そうだな」

俺は短くてそう返した。
邪神が語っていることに、自分を重ねてしまったからだ。

「本当の意味で努力が結果を結ぶ世界を俺は作る。そのためには、邪魔する奴らは排除しなきゃならねぇ」
「……そうか」
「俺はもう……寿命がねぇ。邪神になると圧倒的な力を得る代わりに寿命が減るんだ。
俺の寿命はあともって一週間。それまでお前が俺の攻撃を受け切れれば自動的になるお前の勝ちだ。だが、俺はあえてここで一発の真剣勝負を申し込む」
「…………」
「受けるかは自由だ。これは俺のエゴだ。そんなものにテメェは巻き込まれたくはねぇだろうが……最期ぐらいは自分が納得のいく死に方をしたい」
「…………分かった」
「……助かる」

俺は、邪神の熱意につい応えたくなってしまった。
この真剣勝負に特に意味はない。なのに受けてしまったのは、やはり自分とを重ねてしまったからだろう。
もう救うことはできない。だからせめて、邪神となったアイツを悔い無く殺してやりたいと思ってしまった。

「これが俺の……最期ラストアタックだ!『身体強化』『超身体強化』『肉体超強化』『超硬質化』『叛逆の精神』『巨悪の一撃』『精神統一』『暴虐の構え』『根性』『神の暴力』『努力の権化』『影纏』『一騎当兆』!!」

邪神は大量のスキルを使用しながら抜刀の構えになっている俺へと接近した。

「お前の思いは俺が見届けた」

俺は静かにそう呟き、もう一言囁くように言った。

「『悪滅居合』」

お互いの体が交差する。
邪神は振り切った体制のまま動かない。
俺は、失った左腕を抑えながら膝をついた。

「ありがとな」

しかし、邪神はそう感謝を述べたあと仰向けに血を吹き出しながら倒れた。

「…………」

俺は、邪神に背を向けたまま再生が終わるまで身動き1つしなかった。

ーーーーーーーーー
作者より。
完成したよー!
またしばらく更新できないけど戻ってきたら今まで以上に頑張るので応援よろしくお願いします!
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