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きらきらの正体

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 冷たい雨が体を打ちます。あんなに晴れていた空はどんよりとしたはい色になり、雲でおおわれています。
 ブルブルッと体をふるわせ、は目を開けました。
 それぞれに顔を見合わせて、そこにいるのが自分だけではないのだとわかると、ほっと安心しました。

「このままではかぜをひいてしまう。木の下に行こう」
 ヤマネコがそう言って、三びきは雨やどりをしました。
 雨の音が森にひびきます。

「ぼく、こわいゆめを見たよ……」
「おいらもへんゆめを見てた」
「きぐうだね。わたしもだ」
 三びきは自分たちがたおれていた場所をながめながら言いました。そこにチョウはおらず、草花も生えていません。もうすぐ冬がくる、三びきの住む森と同じ様子でした。
 あの春の楽園のような場所はなんだったのでしょう。

 三びきは少しの間、なにもしゃべらずにじっとしていましたが、そのうちにイノシシが口を開きました。
「ネズミくん、ヤマネコくん、ごめんよ。おいらのせいでまいごになっちゃって。おいら、食べもののことになるとつい夢中むちゅうになって、まわりが見えなくなるんだ」
 イノシシは頭を下げてしゅんとしています。
「なにを気にしているんだい。そのおかげで、こんな季節きせつには見られない景色けしきを見たじゃあないか」
「そうだよ、ちょっといたい思いやこわい思いをしたけれど、そんなに落ちこまないでよ」
 ヤマネコとネズミの言葉に、イノシシは小さく鼻を鳴らしました。
「あ、ありがとう……二人とも……。おいら、これからは食べものを見つけてもちゃんとまわりを見ながら向かうようにするよ」
 うんうんとうなずきながら、ヤマネコはあることに気がつきました。

「そういえば、イノシシくんの体はもう光っていないね」
「本当だ」
「光るって、なんのこと?」
 ネズミはイノシシに、イノシシがたおれたときのことを話しました。
「おいらの体が光っていたの? なんだろう?」
 ヤマネコはイノシシの体をじっと観察かんさつすると、「おや」と肉球でイノシシの胴体どうたいにさわりました。

 イノシシをさわった肉球がきらきらと光っています。
「あっ! わかった!」
 それを見たネズミが声を上げました。
「これはチョウのりんぷんだ! イノシシくんがたおれたとき、体にたくさんついていたのはこれだよ!」
「ふぅむ……そうか、きっとイノシシくんは一番最初さいしょにりんぷんびたんだね」
「えっ、おいら、それでたおれちゃったの?」

 三びきはたおれたときのことを思い出します。
 ネズミにたんこぶができてヤマネコと話しているとき、イノシシはチョウの下でいっしょうけんめいに食べものをさがしていました。最初さいしょにたくさんのりんぷんびていたのです。
 そのあとイノシシの元へかけよった二ひきは、ヤマネコ、ネズミのじゅんにたおれました。上を見たまま話したヤマネコはりんぷんをすってたおれ、ネズミはイノシシと同じようにその場に長くいたためにたおれてしまったのです。

「ぼくたちが見たみょうなゆめは、このりんぷんのせいだったのかなぁ」
「そうかもしれないね。あの花々も、りんぷんが見せていたまぼろしだったのかもしれない」
「りんぷんが雨で流れて、ゆめからさめたのかな」
「でもおいら、ユリネもミミズも食べたよ! あれがにせものだったなんて……」

 三びきは考えますが、考えても答えはわかりません。あんなにんでいたチョウは、もういないのですから。

「わからないものは仕方ない、雨がやんだらまた『知識ちしきぬま』を目指そう。『キタダカやま』はとても高いから、ちょっとまよったくらいなら見失みうしなわないさ」
「『知識ちしきの川』に『ニシダカやま』ね」
 ヤマネコがいつものようにうそか本当かわからないことを言うので、ネズミもいつものようにまちがいを正します。

 三びきで会話していると、いつの間にか先ほど見たゆめへのおそろしさもやわらいでいくのでした。

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