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めざめ
しおりを挟む「あぁ……よくねましたわ……。そよ風が気もちいい」
よく晴れたある日のこと、スイートピーがもも色の花をさかせました。空にむかってのびをすると、お日さまがきらきらとかがやいているのが見えます。
「ごきげんよう、スイートピーさん」
「あら、おとなりはポピーさんでしたのね」
広い公園に、丸いかだんがいくつもあります。
かだんの中心には大きなサクラがうえられ、その足もとでは色とりどりの花が風にゆれています。
そのかだんにうえられたいちりんのスイートピーが、今日、花ひらきました。
「今は何月なのかしら」
「六月よ」
スイートピーがぎもんを口にすると、後ろのほうから声がしました。
「アジサイさん、教えてくださってありがとう。すばらしいけしきですわ」
公園のゆうほどうには、アジサイがみごとにさきほこっています。青、むらさき、白……さまざまな色のアジサイは、公園をおとずれた人たちだけでなく、そこにさく花たちもみとれるほどのうつくしさでした。
「六月にめざめることができるなんて、なんてうんがいいのかしら。もしかしたら、七月までさきつづけられるかもしれないわ」
スイートピーはうれしそうにゆれました。
そのようすを見て、同じかだんのスズランがたずねます。
「スイートピーさん、なぜ七月までさきつづけたいんですの?」
「ああ、スズランさん、聞いてくださるの?」
スズランが小さな花をゆらしてうなずきます。
「わたくし、どうしても夏というものを見てみたいんですの。お日さまはあたたかいのかしら。どんな風がふくのかしら。どんな虫たちに出会えるのかしら。お星さまはどれだけ見えるのかしら。考えれば考えるほど、わくわくいたしますわ」
スイートピーは夏にあこがれているのです。
四月から六月の間にさくスイートピーは、夏をむかえる前にかれてしまいます。これまで、たねをのこし、子どもにのぞみをたくし、何年も何年も夏を見ようとがんばってきました。
しかし、いまだにそのねがいはかなわずにいるのです。
「今年こそは、夏をむかえてみせますわ!」
かだんにさくもも色のスイートピーは、けついを口にするとあまいかおりをただよわせたのでした。
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