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紅色牛丼
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「紅色牛丼」そんな言葉はまだ存在していない。
なぜなら、たった今僕が生み出そうとしている言葉だからだ。
バイトのお昼休憩、僕は決まって近くの牛丼チェーンへ向かう。
かれこれ三年はこのルーティンを続けているが、よくも飽きないものだなと自分でも思う。
どうしてそんなにも牛丼屋にこだわるのかと思う人もいるかもしれないが、そんなものはあまりにも愚問だ。
「安い、早い、美味い」
これ以上の説明は最早酢豚のパイナップルみたいな物になってしまうだろう。
いつもの席に着き、いつも通り小声で「疲れた。」とか言ってみる。
実際、午前中はほぼ立ってるだけで何もしないのだか、それはそれで疲れる。
そして、いつもの店員さんに少し目配せみたいなものをすると、阿吽の呼吸ですぐに牛丼並盛りが到着する。
この店に入って発した言葉は「疲れた。」の一言だけ。
でも、目の前には熱々の牛丼、もちろんつゆだくが存在している。
僕は魔法使いにでもなったのかと、たまに思うが、事実はせいぜいただの少し愛想の悪い常連だろう。
まぁ、そんなことはどうでもいい。
このつゆだくの牛丼に紅生姜をたっぷり乗せて食べるのが最近のマイブームだ。
「牛丼と紅生姜」
こんな言葉が〝最強のコンビネーション〟的な意味で広辞苑に載っていてもおかしくないのになと今は本気で思っている。
「阿吽の呼吸」に代わる言葉して、「牛丼と紅生姜」。
キャッチーだ。
少しチープに感じるが、それすら今っぽくていい。
でもなんか、オシャレではない。
「あいつとお前阿吽の呼吸じゃん。」
確かになんかかっこいい。
「あいつとお前牛丼と紅生姜じゃん。」
悪くないが、ダサい。
そんなことを考えながら食べ進めた牛丼も後三口ばかり。
僕はここでさらに追い紅生姜をする。
僕はこの行為を密かに追い紅(おいべに)と名付け、心の中で「追い紅入りまーす」とか叫んでみる遊びをたまにする。
追い紅を終え最後の一口を食べる瞬間、僕は閃いてしまった。
「〝紅色牛丼〟じゃん。」
多分まあまあの声の独り言になっていたと思う。
「あいつとお前紅色牛丼じゃん。」
収まりは悪くない気がする。
新進気鋭の四文字熟語の誕生の可能性を感じた。
いつもより満足げに会計を終えて、出入口の方へ向かった。
すると、ちょうど入れ違いに密かに気になっている女の子が入ってきた。
ガテン系の服装をしている彼女はとても食べっぷりがいい。
毎日来るわけではないが、週一、二回は来る彼女が少し気になっているのだ。
「今日は入れ違いか。」
今日の牛丼屋もテンションはプラマイゼロに終わった。
なぜなら、たった今僕が生み出そうとしている言葉だからだ。
バイトのお昼休憩、僕は決まって近くの牛丼チェーンへ向かう。
かれこれ三年はこのルーティンを続けているが、よくも飽きないものだなと自分でも思う。
どうしてそんなにも牛丼屋にこだわるのかと思う人もいるかもしれないが、そんなものはあまりにも愚問だ。
「安い、早い、美味い」
これ以上の説明は最早酢豚のパイナップルみたいな物になってしまうだろう。
いつもの席に着き、いつも通り小声で「疲れた。」とか言ってみる。
実際、午前中はほぼ立ってるだけで何もしないのだか、それはそれで疲れる。
そして、いつもの店員さんに少し目配せみたいなものをすると、阿吽の呼吸ですぐに牛丼並盛りが到着する。
この店に入って発した言葉は「疲れた。」の一言だけ。
でも、目の前には熱々の牛丼、もちろんつゆだくが存在している。
僕は魔法使いにでもなったのかと、たまに思うが、事実はせいぜいただの少し愛想の悪い常連だろう。
まぁ、そんなことはどうでもいい。
このつゆだくの牛丼に紅生姜をたっぷり乗せて食べるのが最近のマイブームだ。
「牛丼と紅生姜」
こんな言葉が〝最強のコンビネーション〟的な意味で広辞苑に載っていてもおかしくないのになと今は本気で思っている。
「阿吽の呼吸」に代わる言葉して、「牛丼と紅生姜」。
キャッチーだ。
少しチープに感じるが、それすら今っぽくていい。
でもなんか、オシャレではない。
「あいつとお前阿吽の呼吸じゃん。」
確かになんかかっこいい。
「あいつとお前牛丼と紅生姜じゃん。」
悪くないが、ダサい。
そんなことを考えながら食べ進めた牛丼も後三口ばかり。
僕はここでさらに追い紅生姜をする。
僕はこの行為を密かに追い紅(おいべに)と名付け、心の中で「追い紅入りまーす」とか叫んでみる遊びをたまにする。
追い紅を終え最後の一口を食べる瞬間、僕は閃いてしまった。
「〝紅色牛丼〟じゃん。」
多分まあまあの声の独り言になっていたと思う。
「あいつとお前紅色牛丼じゃん。」
収まりは悪くない気がする。
新進気鋭の四文字熟語の誕生の可能性を感じた。
いつもより満足げに会計を終えて、出入口の方へ向かった。
すると、ちょうど入れ違いに密かに気になっている女の子が入ってきた。
ガテン系の服装をしている彼女はとても食べっぷりがいい。
毎日来るわけではないが、週一、二回は来る彼女が少し気になっているのだ。
「今日は入れ違いか。」
今日の牛丼屋もテンションはプラマイゼロに終わった。
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