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第1章 転生少女、推しの娘になる

4.決意

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「まさか、推しの娘になるなんて…」

 与えられた部屋のベッドに横になりながら、私は今日あった出来事を思い出していた。あの後、シルヴァン隊長の口から出たのは衝撃な言葉だった。

―私たちの娘にならないか

 どうやら父はシルヴァン隊長ととても仲が良かったらしい。それで自分の身に何かあった時は娘のことをよろしく頼むとシルヴァ隊長に言っていたそうだ。しかも、父の死因はシルヴァ隊長を庇ったことにあるらしく、シルヴァン隊長はそこに責任感を感じていた。そこで、娘である私を父の代わりに育てようと決意したらしい。

 パートナーであるベルナール執務官とも相談は既に済んでいるようで、彼も快く私を迎え入れることを許してくれたという。とここまで聞いて、私は原作小説にも彼らの養女が出てきたことを思い出した。ほんの一瞬しか登場しない上に名前がでてこないので、気づくのに遅れたが銀髪で碧眼という特徴が私の容姿と一致している。知らないうちに私は推しの娘に転生していたというわけだ。

 そんなわけで、シルヴァン隊長とベルナール執務官の娘となった私は、彼らの家へと連れられ生活を共にすることになった。生憎、シルヴァン隊長はまだ仕事が残っているらしく家に帰れないとのことで、ベルナール執務官との二人で過ごすことになったが、彼はとても面倒見がよく、とても快適に過ごせそうだ。夕食に作ってくれた料理もとても美味しかった。

「お父さん…」

 自分が死んだときのことまで考え、こうして推しと繋げてくれた父には感謝だ。最後まで本当に立派な父親だったと思う。もう会えないのは悲しいけれど、でもその悲しみより推しと生活ができるこれからの楽しみが大きかった。

「10年越しの想いだもの…、父親と過ごした年数よりあの二人を追いかけていた年数の方が長いわ…」

 小説だけでは満足できず、創作を漁りまわったあの頃が懐かしい。マイナーだったが故にグッズがあまりなく、自分で色々と作ったのはいい思い出だ。

「…でも原作ではシルヴァ様、亡くなってしまうのよね」

 辛かった。シルヴァン隊長が小説の中で亡くなった時、私は絶望した。しかも、彼を追ってベルナール執務官も死んでしまうのだ。もうショックすぎて翌日は家に引きこもり一日中泣いた。

 小説の中だけでも辛かったのに、現実でそんなことになれば私はもう耐えられない。何としてもそれだけは阻止したいところだ。

「よし、シルヴァ様とベル様の幸せは私が絶対に守る!」

 私は天に向かってぎゅっと拳を握りしめた。せっかく原作の知識があるのだ。活かさなくてどうする。原作知識フル活用でシルヴァン隊長の死亡フラグをへし折るんだ。そして、ベルナール執務官といつまでも幸せに暮らしてもらうんだ。…で、ついでに私も二人の様子を一番近くで眺めさせてもらうんだ。

「…ふあぁ。…眠い」

 流石に今日は色々ありすぎて疲れた。幼女な私には少々きつい。今日は寝て、明日から動くことにしよう。私は布団に潜り込むとすやすやと眠りにつくのだった。

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