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戻ってきました

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 翌朝になって門が開いた。

「おかえり」
「ただいま」
 麻美さんも走ってきた。
「瑠莉ちゃーん。閻魔様が忙しいからって手形だけ置いていった」
「ありがとう」
 これで本当に戻って来れた。

 関所で書類に印鑑を押してもらえばこっち側に入れる。
 一歩踏み込むだけで帰ってきたと思う。
「おじいさんは? 見つかったの?」
 麻美さんが聞く。
「あ、私のせいで修業みたいなことしてて。それなら私が強くなったほうがいいし。だから、もう少しこっちにいます」
 と一心さんの顔を見て言った。
「そうか」
 と頷いてくれたように思えた。
「戻ったら寝ていいですか? 人間界だとうまく寝れなくて」
 さすがにクマだらけの私を見て澪さんにも働けと言われずにすんだ。

 昼間から布団を敷いて寝る。贅沢だな。
「少し飲むか?」
 一心さんが注ぐお酒の匂いだけで酔いそう。
「いや、寝ます。おやすみなさい」
 やっぱりこっちは眠れる。金縛りにも遭わない。

 あったかいな。
 頭撫でてる?
 寝ている私の頬にキスして、それってどういう意味なのだろう。
 結局、なにも解決していない。力がどうなっているのかはわからない。結婚も考えたくない。そういうのはまだ先でいい。
 でもね、いろんなことを頑張ってみようと思う。
 もうしばらくはこのままでいよう。このままがいい。
 目が覚めたら、そう伝えます。
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