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閻魔様からのデートの申し込み

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 地上にいたとき、働くということはてっきりお金のためだと思っていたが、それも含めて自分のためなのだ。それが身に染みる。他人がそんなに好きではないし、力のこともあるから関わらずに生きていこうと思ったが、エステにしろカフェにしても私のやりたいことは他者と関わらざるを得ない。

今里ちゃんが一人で仕事ができるようになったので、私はいよいよ自分のお店の開店準備を進める。納屋の修理も完了。文子さんに半壊されたから、壊された部分は板で補って、ドアを設置。
「まずはフットマッサージにしようと思って」
 澪さんに施術の練習をさせてもらう。
「痛い」
 手をグーにして土踏まずを軽く押しただけだ。
「疲れている証拠です」
「温泉を引ければいいけど」
「澪さん、名案です」
 足湯をしてからなら効果倍増だろう。
「草みたいな、いい匂いがする。懐かしい」
 澪さんの表情もほぐれてくる。
「こっちで買えたオイルにそこに自生していたハーブを拝借しました」
 日当たりは悪いのにハーブは強い。もしかして、地の底だから土も温かくて肥沃なのかもしれない。
「極楽~」
 澪さんが叫ぶ。
「30分ならいくらくらいでしょうか?」
 こっちの貨幣価値が私にはわかっていない。
「2千円ってとこね」
 しばらく考えて澪さんが答えた。
「澪さんのときって一両じゃないんですか?」
「一両って今の価値で10万くらいじゃないかしら」
「そんなに?」
 数十年前なら数円でアイスが買えたのだ。貨幣価値って不思議。
「もう銭ってないんでしょう? それは知ってるわ」
 と澪さんが笑った。
「ないですね」
立ち上がると、
「本当に足がすっきり。ありがとう」
 とまた嬉しそうに笑った。
 こちらのほうが嬉しくなる。この気持ちが好き。感謝が膨らんでゆく。また感じたいと思う。

 納屋はお洒落になって来たのだが、まだまだ足りないものだらけ。枕は芯しん亭からいらないものをいただいて直そう。シーツや布団も貸してくれるという。
「縫いものなら得意。手芸部だったもん」
 と今里ちゃんが手を上げてくれた。
「じゃあ、お願い」
「私もできます」
 珠絵ちゃんのほうが出来栄えはよかった。
「中身があずきならレンジで温められたらいいですね。それに洗濯機もほしい」
 私の言葉に今里ちゃんが頷く。
 家電は一昔前のものを大切に使っている。ブレンダーとかあったほうが料理にも便利だろうに。
 すぐにお湯が湧くポットとコーヒーメーカーはカフェには必須だ。
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