13 / 99
見誤る
12
しおりを挟む
こんな非日常な体験をしていても死ぬのは怖い。なぜだろう。漠然と植え付けられてきた思想のようなものなのだろうか。生きていたら死ぬのは当然のこと。
庭を掃除しているとつい藁の納屋に目がゆく。あんなにお洒落なものを放置するなんて、おかしい。勿体ない。さすがに厠でカフェというわけにはいかないから、掃除をすれば馬小屋でエステならいいだろうか。どうりで既視感があると思ったら、絵画の積み藁の形にそっくり。現代ならそれを売りにできただろう。あっちでは藁づくりでは修繕の必要があるに違いない。きっとこっちは酸素が薄そうだから残っているのだ。快晴ということもないし雨も降らない、いつもどんより曇り空。
積み藁の中をくりぬいて支柱を立てたのだろうか。雪のかまくらもそうやって作った覚えがある。ここには雪も降らないのだろう。
あっ、私また空を見上げてる。
「瑠莉ちゃん、一心さんが調理場に集まるようにって」
澪さんから声がかかる。
「はい、ただいま」
調理場では白衣の男の子が待っていた。
「宇崎凌平です」
その男の子には見覚えがあった。
「凌平くん?」
「菅原先輩?」
彼も私を覚えてくれていた。一つ年下の陸上部の男の子。
「知り合いか?」
一心さんが凌平くんに聞く。
「はい。え、先輩も死んじゃったの?」
「ううん」
私は修行とも言えず、まして結婚とも言えずに困った。
「先輩の家って神社だから、その絡みですか?」
凌平くん、そんなことまで覚えてるのね。
「うーん、まぁそうだね。凌平くんは?」
「ただの交通事故っすよ。赤信号を飛び出してしまったので自分のせいです。でも親より先に死んだからとか、昔ついた嘘とか悪口、その他諸々のせいであっという間に地獄行き決定でした」
「厳しいよね」
私たちが再会を喜んでいることを快く思っている人はいなかった。全員の視線が冷たい。
また会うことを約束して、私は仕事へ戻った。
「さっきの男の子、若くてかっこいいわね」
客室の掃除をしながら麻美さんが言った。
「そうですね。昔から爽やかでモテましたね。私のひとつ下だから22歳か」
「若いわね」
と麻美さんも凌平くんの死を嘆いてくれる。
庭を掃除しているとつい藁の納屋に目がゆく。あんなにお洒落なものを放置するなんて、おかしい。勿体ない。さすがに厠でカフェというわけにはいかないから、掃除をすれば馬小屋でエステならいいだろうか。どうりで既視感があると思ったら、絵画の積み藁の形にそっくり。現代ならそれを売りにできただろう。あっちでは藁づくりでは修繕の必要があるに違いない。きっとこっちは酸素が薄そうだから残っているのだ。快晴ということもないし雨も降らない、いつもどんより曇り空。
積み藁の中をくりぬいて支柱を立てたのだろうか。雪のかまくらもそうやって作った覚えがある。ここには雪も降らないのだろう。
あっ、私また空を見上げてる。
「瑠莉ちゃん、一心さんが調理場に集まるようにって」
澪さんから声がかかる。
「はい、ただいま」
調理場では白衣の男の子が待っていた。
「宇崎凌平です」
その男の子には見覚えがあった。
「凌平くん?」
「菅原先輩?」
彼も私を覚えてくれていた。一つ年下の陸上部の男の子。
「知り合いか?」
一心さんが凌平くんに聞く。
「はい。え、先輩も死んじゃったの?」
「ううん」
私は修行とも言えず、まして結婚とも言えずに困った。
「先輩の家って神社だから、その絡みですか?」
凌平くん、そんなことまで覚えてるのね。
「うーん、まぁそうだね。凌平くんは?」
「ただの交通事故っすよ。赤信号を飛び出してしまったので自分のせいです。でも親より先に死んだからとか、昔ついた嘘とか悪口、その他諸々のせいであっという間に地獄行き決定でした」
「厳しいよね」
私たちが再会を喜んでいることを快く思っている人はいなかった。全員の視線が冷たい。
また会うことを約束して、私は仕事へ戻った。
「さっきの男の子、若くてかっこいいわね」
客室の掃除をしながら麻美さんが言った。
「そうですね。昔から爽やかでモテましたね。私のひとつ下だから22歳か」
「若いわね」
と麻美さんも凌平くんの死を嘆いてくれる。
0
お気に入りに追加
3
あなたにおすすめの小説
外れスキルと馬鹿にされた【経験値固定】は実はチートスキルだった件
霜月雹花
ファンタジー
15歳を迎えた者は神よりスキルを授かる。
どんなスキルを得られたのか神殿で確認した少年、アルフレッドは【経験値固定】という訳の分からないスキルだけを授かり、無能として扱われた。
そして一年後、一つ下の妹が才能がある者だと分かるとアルフレッドは家から追放処分となった。
しかし、一年という歳月があったおかげで覚悟が決まっていたアルフレッドは動揺する事なく、今後の生活基盤として冒険者になろうと考えていた。
「スキルが一つですか? それも攻撃系でも魔法系のスキルでもないスキル……すみませんが、それでは冒険者として務まらないと思うので登録は出来ません」
だがそこで待っていたのは、無能なアルフレッドは冒険者にすらなれないという現実だった。
受付との会話を聞いていた冒険者達から逃げるようにギルドを出ていき、これからどうしようと悩んでいると目の前で苦しんでいる老人が目に入った。
アルフレッドとその老人、この出会いにより無能な少年として終わるはずだったアルフレッドの人生は大きく変わる事となった。
2024/10/05 HOT男性向けランキング一位。
45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる
よっしぃ
ファンタジー
2月26日から29日現在まで4日間、アルファポリスのファンタジー部門1位達成!感謝です!
小説家になろうでも10位獲得しました!
そして、カクヨムでもランクイン中です!
●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●
スキルを強奪する為に異世界召喚を実行した欲望まみれの権力者から逃げるおっさん。
いつものように電車通勤をしていたわけだが、気が付けばまさかの異世界召喚に巻き込まれる。
欲望者から逃げ切って反撃をするか、隠れて地味に暮らすか・・・・
●●●●●●●●●●●●●●●
小説家になろうで執筆中の作品です。
アルファポリス、、カクヨムでも公開中です。
現在見直し作業中です。
変換ミス、打ちミス等が多い作品です。申し訳ありません。
パーティーから追放され婚約者を寝取られ家から勘当、の三拍子揃った元貴族は、いずれ竜をも倒す大英雄へ ~もはやマイナスからの成り上がり英雄譚~
一条おかゆ
ファンタジー
貴族の青年、イオは冒険者パーティーの中衛。
彼はレベルの低さゆえにパーティーを追放され、さらに婚約者を寝取られ、家からも追放されてしまう。
全てを失って悲しみに打ちひしがれるイオだったが、騎士学校時代の同級生、ベガに拾われる。
「──イオを勧誘しにきたんだ」
ベガと二人で新たなパーティーを組んだイオ。
ダンジョンへと向かい、そこで自身の本当の才能──『対人能力』に気が付いた。
そして心機一転。
「前よりも強いパーティーを作って、前よりも良い婚約者を貰って、前よりも格の高い家の者となる」
今までの全てを見返すことを目標に、彼は成り上がることを決意する。
これは、そんな英雄譚。
転生赤ちゃんカティは諜報活動しています そして鬼畜な父に溺愛されているようです
れもんぴーる
ファンタジー
実母に殺されそうになったのがきっかけで前世の記憶がよみがえった赤ん坊カティ。冷徹で優秀な若き宰相エドヴァルドに引き取られ、カティの秘密はすぐにばれる。エドヴァルドは鬼畜ぶりを発揮し赤ん坊のカティを特訓し、諜報員に仕立て上げた(つもり)!少しお利口ではないカティの言動は周囲を巻き込み、無表情のエドヴァルドの表情筋が息を吹き返す。誘拐や暗殺などに巻き込まれながらも鬼畜な義父に溺愛されていく魔法のある世界のお話です。
シリアスもありますが、コメディよりです(*´▽`*)。
*作者の勝手なルール、世界観のお話です。突っ込みどころ満載でしょうが、笑ってお流しください(´▽`)
*話の中で急な暴力表現など出てくる場合があります。襲撃や尋問っぽい話の時にはご注意ください!
《2023.10月末にレジーナブックス様から書籍を出していただけることになりました(*´▽`*)
規定により非公開になるお話もあります。気になる方はお早めにお読みください! これまで応援してくださった皆様、本当にありがとうございました!》
大好きな母と縁を切りました。
むう子
ファンタジー
7歳までは家族円満愛情たっぷりの幸せな家庭で育ったナーシャ。
領地争いで父が戦死。
それを聞いたお母様は寝込み支えてくれたカルノス・シャンドラに親子共々心を開き再婚。
けれど妹が生まれて義父からの虐待を受けることに。
毎日母を想い部屋に閉じこもるナーシャに2年後の政略結婚が決定した。
けれどこの婚約はとても酷いものだった。
そんな時、ナーシャの生まれる前に亡くなった父方のおばあさまと契約していた精霊と出会う。
そこで今までずっと近くに居てくれたメイドの裏切りを知り……
左遷されたオッサン、移動販売車と異世界転生でスローライフ!?~貧乏孤児院の救世主!
武蔵野純平
ファンタジー
大手企業に勤める平凡なアラフォー会社員の米櫃亮二は、セクハラ上司に諫言し左遷されてしまう。左遷先の仕事は、移動販売スーパーの運転手だった。ある日、事故が起きてしまい米櫃亮二は、移動販売車ごと異世界に転生してしまう。転生すると亮二と移動販売車に不思議な力が与えられていた。亮二は転生先で出会った孤児たちを救おうと、貧乏孤児院を宿屋に改装し旅館経営を始める。
またね。次ね。今度ね。聞き飽きました。お断りです。
朝山みどり
ファンタジー
ミシガン伯爵家のリリーは、いつも後回しにされていた。転んで怪我をしても、熱を出しても誰もなにもしてくれない。わたしは家族じゃないんだとリリーは思っていた。
婚約者こそいるけど、相手も自分と同じ境遇の侯爵家の二男。だから、リリーは彼と家族を作りたいと願っていた。
だけど、彼は妹のアナベルとの結婚を望み、婚約は解消された。
リリーは失望に負けずに自身の才能を武器に道を切り開いて行った。
「なろう」「カクヨム」に投稿しています。
悪役令嬢のサラは溺愛に気づかないし慣れてもいない
玄未マオ
ファンタジー
「ヒロインの鈍さは天然か?それとも悪役令嬢としての自制か?」
公爵令嬢のサラは王太子との婚約が決まったとき、乙女ゲームの断罪シーンを思い出す。
自分はある乙女ゲームのパート2の悪役令嬢だった。
家族まで巻き添えになってしまう転落ストーリーを座して受け入れるわけにはいかない。
逃亡手段の確保し、婚約者である王太子との友情を築き、そしてパート1の悪役令嬢フェリシアをかばい、ゲームのフラグを折っていく。
破滅を回避するため日々奮闘するサラ。
やがて、サラと周囲の人々の前に、乙女ゲームに似た王国の歴史の暗部の意外な秘密が明かされてゆく。
『婚約破棄された公爵令嬢ですが、魔女によって王太子の浮気相手と赤ん坊のころ取り換えられていたそうです』
https://www.alphapolis.co.jp/novel/886367481/638794694
こちらはヒロインのご先祖たちが活躍する同じ世界線の話です。
カクヨムやなろうでも掲載しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる