魔法のスープ

吉沢 月見

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ヤスナガくんとヒヨリ

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 情報過多だ。朝のニュースを見ていると感じる。どのチャンネルも同じような情報を垂れ流している。殺人が起こる理由から探ってくれたなら許そう。でも上辺だけで猟奇殺人と決めつけている。芸能人の結婚や離婚が大きく取り上げられるのも不思議だ。人間なんだから、知られたくないこともあるでしょうに。祖母もそういう人を相手にしなかった。大金を積まれても、
「占いは得意分野じゃない」
 とテレビの取材を断った。札束を前にしても、眉毛をぴくりともさせない。金には実は困っていることを知っていた。祖母の収入はわからない。椅子が欲しいと言ったり、棚が欲しいというと誰かが持って来てくれた。玄関の蝶番は自分で直していた。光熱費と税金を払えるくらいは稼いでいるのだろう。
「悪いお金を手にすると自分が汚くなる」
 と言った。
 祖母が昔は大きな仕事に携わっていたことは薄々感じている。国の偉い人の相談役のようなこと。ヒヨリの親は今もそうして富を得ている。祖母は離脱した。

 新聞を見ていたら、とある記事が目に入った。老人ホームで高齢の女性が自分は魔女だと叫びながら隣の部屋の女性を殺した。殺害したほうもされたほうも認知症だったとある。事実だろうか。魔女でも病気にはかなわない。怖いな。この力をコントロールできなくなったらどうしよう。しかし、魔女の行き末が老人ホームとは。しかも殺人犯になるとは。
 祖母は一人で怖くないのかな。私が祖母のもとに行けば今度は母が一人になってしまう。全員での同居はむつかしいだろう。なにせ祖母は母が高校生のときに母を置いて家を出て行ったそうだ。母はそこから一人暮らしになった。折りが合わなくても、成人までは見届けるべきではないだろうか。私はいつまで母のところにいるのだろう。いるべきなのだろう。

 家の天井を見ていると落ち着く。ただの白い壁紙だけれど、なんだか平和。でも今日、学校の廊下で、
「ヤスナガくんて、好きな子いるのかな」
 という女の子の声を聞いた。会話の一部だったらしく、誰の声だったのかも不明だ。私も気になる。ヤスナガくんはいつも男の子に囲まれているからそんな素振りは見せない。待てよ、そんな会話をしている子がいるということは、誰かがヤスナガくんに惚れているということかな。そりゃそうだ。なんと言っても走るのが速い。風みたいだ。風族の出身なのかな。転々としたせいで、誰もそのことをヤスナガくんに伝えられなかったのではないだろうか。
 ヤスナガくんのことを思うと悶絶しそうだ。これが恋ってやつですか。
 私の歳でも立派に独り立ちしている魔女はいる。何か一つ得意なものがあれば有利だ。私には何もない。昔は独り立ちの年齢がもっと早かっただろう。学校がなければもっと勉強できるのに。習得も早いだろう。どうしたら専門でやってゆけるのかな。ちょっとまじないができるくらいでは生きてゆけない。生きるためにはお金が必ず必要。魔女でも人でも同じだ。
 他のことを考えていてもすぐに思考はヤスナガくんに切り替わる。だめだな。こんなので立派な魔女になれるかな。
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