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 婚儀の朝、5時起床。

「ピチチチ」
 小鳥たちのさえずりがまるで愛を囁いているかのように聞こえる。

 衣装を身につけ、髪と化粧を施すのに2時間あまり。
「いやーん、きっつ。乳がもげる」
 今日からろくなものを食べられないからって、この数日食べすぎた自分を呪う。
「揉む前にもげるのは困るな」
 アルゼット様の正装は、荘厳だ。
「かっこいい。男前」
 髪を上げているからかしら。
「今頃気づいたか。重くて、いつものように歩けんがな」
「私もです」

 苦しむ私のために料理長がかぼちゃのスープを用意してくれた。
「おいしい」
 色もきれいで、かぼちゃに祝われているようだ。ちゃんと食べられるのは朝だけ。
「よし、行こう」
 アルゼット様が手を引いてくれる。
「はい」

 誓いの言葉も間違えなかったし、腕輪も落とさなかった。やればできるじゃない、私。

 アルゼット様の妹だからクレア様も儀式に参列。ソフィアさんはこんなに仲良しなのに傍についていてくれない。きっと奥で泣いているに違いない。感動し屋さんとクレア様が教えてくれた。

 晩餐会の前に父と弟に会う。私の下の弟は数ヶ月会わなかっただけなのに、我が国の正装をして凛々しくなっている。リオールの姿もあった。元気そうで何より。
 弟にこっそりかぼちゃを渡した。
「これからも毎年たくさん送るわ」
「姉様、お幸せに」
 父様は母の指輪を黙って置いていった。赤い石で目立つから今日はしまっておこう。
 私は晩餐会で作り笑いを保っているのに、アルゼット様はもう飽きて大あくび。近くの国の王の挨拶や、大道芸人、踊り子にも興味なし。

 この人、なにが面白いのだろう。

 一日が長い。ずっと眠いし、お腹を引っ込めているせいで背中がつりそう。履き慣れないハイヒールのせいで足の甲も痛い。トイレにも自由に行けない。

 二日目はダンスパーティで、嫌々ながらもアルゼット様は踊ってくれた。
 あの服きれい。あの方、美人。その首飾り、豪奢すぎる。この人、他の人をちっとも見ない。あなたの目の中に私がいる。いつもそんなに私を見ているのかしら。
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