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 アルゼット様が悩んでいるのは国のこと。ようやく完成しそうだった西の橋が大雨で流されてしまった。雨は野菜にも必須。他国との国交などは継続してゆくから終わりがない。国民のことを考えるのもずっとだ。

 農作物は、作って食べる。天候によっては裏切られることはあるものの、多少の雨風などは大丈夫だし、手間暇かければ元気に育ってくれる。難しくない。
 人が関わると厄介なのだろうか。心情とか、金銭の問題がつきまとう。

「王帝、花も野菜も色鮮やかでございましょう」
 トベールじいは仕事をしつつ、畑の管理をする強者。
「そうだな。そのトマトがルラルみたいだ」
 そう言いながら、収穫して齧った。

 それからもアルゼット様は畑をうろちょろ。飽きっぽい人なのかしら。ひとつの仕事をするのが苦痛という人もいる。困っている人の手助けはするが、進んで農業はしない。王帝だから当然か。うちの父は王様だけれど、収穫祭のときにだけ張り切る面倒な人。いいとこどりのずるい人だと小さいときから思っていた。さつまいもは保存方法によっては半年以上持つ。寒すぎても悪くなるから専用の貯蔵庫もあった。夏は他の野菜も実るが、さつまいもが主食となる。みんな元気だろうか。リオールから返信はない。

 この国はいいな。いつも潤っている印象だ。様々なものが豊富。畑のハウスなんて温かいから不要そうなのにうちの国よりも頑丈。風除けになるもの、風を通して光を通すものなど用途による。誰かが試行錯誤した結果なのだろう。
 さつまいもの種類も多様で、植え方もじいに教わった。横、斜め、まっすぐ。実を太らせたかったらまっすぐで、数を多くしたいなら横植え。斜めは中間なんて、おもしろすぎる。国に帰ったら教えてあげたい。

 でも私、もう帰らないのかもしれない。
「結婚式の前には日に焼けるなよ。昼飯にしよう。先に戻っている」
 アルゼット様、もう畑に飽きたのかしら。根性なしは嫌いよ。

 結婚式って、もう決まりなの? 私、あなたのお嫁さんになるの? さらっと言うから本気なのかわかりかねる。
 そもそも、あなたから愛を向けられている気がしない。トマトだって大事にしたらこんなに真っ赤できれいなのに。つやっつやだ。お昼はこれでパスタがいいな。完熟しているものをもぎ取る。私ってこれに似ているの?
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