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自国にいたときはお風呂なんて一人で勝手に入っていたのに、ここではそうはいかない。アルゼット様が一緒だと特に。
お連れの方はもっと大変。お風呂の準備をして、私たちが入っている間にも丸腰だから不審者が来ないよう見回りもしなくてはならない。
「ちょうどよかった。そなたのために特別に買ってきたんだぞ」
爪の中を洗う、歯ブラシよりもちょっと大きなブラシだった。
「爪用?」
私は聞いた。
「料理人用らしい。あとは医師とか」
「へえ」
使ってみたら爪というよりも指の皺に入り込んだ泥がきれいに取れる。
「どうだ?」
「良きです」
トベールじいは汚いのが常だから、若い女の子には買ってあげたいな。値段を聞いたのにわからないらしい。使えない王帝だ。
「来い。恥ずかしいなら背を向けておればいい。またひっついてもいいぞ」
「はい」
他の候補者ならこういうことも恥ずかしくないのだろうか。振り返ろうって思うけど、あなたの顔が肩にあるのが心地いい。
丁寧に私の汚れた爪を洗ってくれる。こんなこと、あなたにさせたらだめなのでしょう。
普通に考えればお金持ちとつながりたい。私だってそうだし。国力は大事だ。うちにだって水車くらいある。大きさは違うけど。サンズゲイト国は船の技術に長けているという。それを売って他の国からお金を得て、大きな大砲まで作っている。アルゼット様に見初められるということは、全部を手に入れたようなもの。だからみんな必死になっている。なんで私はかぼちゃのことしか考えられないのだろう。
お連れの方はもっと大変。お風呂の準備をして、私たちが入っている間にも丸腰だから不審者が来ないよう見回りもしなくてはならない。
「ちょうどよかった。そなたのために特別に買ってきたんだぞ」
爪の中を洗う、歯ブラシよりもちょっと大きなブラシだった。
「爪用?」
私は聞いた。
「料理人用らしい。あとは医師とか」
「へえ」
使ってみたら爪というよりも指の皺に入り込んだ泥がきれいに取れる。
「どうだ?」
「良きです」
トベールじいは汚いのが常だから、若い女の子には買ってあげたいな。値段を聞いたのにわからないらしい。使えない王帝だ。
「来い。恥ずかしいなら背を向けておればいい。またひっついてもいいぞ」
「はい」
他の候補者ならこういうことも恥ずかしくないのだろうか。振り返ろうって思うけど、あなたの顔が肩にあるのが心地いい。
丁寧に私の汚れた爪を洗ってくれる。こんなこと、あなたにさせたらだめなのでしょう。
普通に考えればお金持ちとつながりたい。私だってそうだし。国力は大事だ。うちにだって水車くらいある。大きさは違うけど。サンズゲイト国は船の技術に長けているという。それを売って他の国からお金を得て、大きな大砲まで作っている。アルゼット様に見初められるということは、全部を手に入れたようなもの。だからみんな必死になっている。なんで私はかぼちゃのことしか考えられないのだろう。
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