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 この悔しさに似た気持ちはなんだろう。その日は畑で豆の収穫に勤しんだ。

「こんなのうちの国にはないわ」
 私の手のひらほどの長さで、さやも大きい。
「そうか。ふぉふぉふぉ」
 とトベールじいは笑いながらそれをそのまま火にくべた。

「じい?」
「焼いて、中身だけ食べるのじゃ」
 そうすると本当に甘い。

「うーん、おいしい。味が濃い」
 焦げた皮を剥くのは熱くて大変だが、それも実を食べるためを思えば苦ではない。手首がない人には口のきけない人が食べさせていた。言葉はなくとも、おいしいと顔が物語る。
 私はこういう気持ちを人と共有したいのだ。妃候補の人はこんなことしちゃいけないって思っているから不思議。おいしいものは誰が食べても美味しい。

 その豆は収穫してから数日しかおいしくないそうで、私はなぜだかアルゼット様に食べさせたいなと思った。国に送れないのだから食べてほしいのは彼くらい。しかし今晩は会うこともないのだろう。彼は他の人と眠る。

「晩ごはんの食材にしてください」
 と料理長に直談判。
 部屋に戻ってそのことをミスズに話すと、意外な言葉が返ってきた。

「それこそ毒でも入っているのかと勘繰られますよ」
 そうなのか。こっちが素直になってみたら邪魔をされる。私には生きづらい場所だな。

 私が沈んでいると思ったのか、夕飯時、妃候補たちが自分の国のことを話してくれた。
「うちの国には湖がいくつもあるの。カヌーというボートのような乗り物で競技をするのよ」
 シエ様が言った。
「うちは海よ。浜辺が美しいわ」
 ユウカ様は肉まで取り分けてくれる。
「海なんてどこにでもあるでしょう? 我が王都は海から遠い都市部ですが」
 ソラカ様は艶やかな服を身にまとっている。朱色が透けた肌によくお似合い。
 ハナ様が物静かなのはいつものことだと思っていた。体も小さく食も細い。

 お腹が満たされれば余計に頭が冴える。こうしている間にも、アルゼット様は楽しい時間を過ごしているのかもしれない。部屋に戻って、
「ふぁ」
 とため息をついた。
「ルラル様、寂しいのですか?」
 ミスズが聞く。
「そういうわけじゃないけど」

 実はミスズは私につく前、サラ様の侍女だったそうだ。他の侍女と折り合いが悪く、干された。ミスズはぱきぱき動くから他の侍女と協力して服を着せたり髪を結うのが苦手なのだろう。私はミスズが一人いれば事足りる。
 そのミスズが私に耳打ちする。
「ケイビ様の部屋の横には衣装などを置く小さな部屋のようなものがありまして、そこは廊下から入れます。こっそり、行ってみます?」
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