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翌朝、目を覚ましたらアルゼット様もまだ隣に眠っていた。子どもじゃあるまいし人と一緒に眠りたいなんて甘えん坊さん。寝ている顔は悪意がないわね。確かに整った顔をしている。授業のときに見せてもらった肖像画よりもちょっと子どもっぽい。自分の妻の座に女が群がっているから楽しんでいるのかもしれない。
「起きてください」
二の腕を強請っただけで目を覚ました。王とかそれと同じような人間はずっと睡眠が浅いのだろう。私の父様もそうだった。強い風の音だけでも気にして起きた。
「おはよう」
起き上がった顔はもうしゃんとし、王帝に戻っている。
「おはようございます」
明るい場所で、帽子をかぶっていない彼の髪を見たのは初めてだ。
「珍しいか?」
「おじいちゃんみたい」
「白髪ではないぞ。銀髪だ」
とふてくされる顔はどこか幼い。私は栗色で、他の妃候補もそれぞれ違う。王帝は目までグレーなのね。
ぐぅと私のお腹が空腹を知らせるとまた笑った。
「着替えますので、出ていってください」
「俺の城で俺に指図するのか?」
いつもはとっくにミスズが起こしに来ている時間だろう。今日は、おかしい。
「意地悪な人は嫌いです」
「冗談だ。温かくて、よく眠れた」
「それは、ようございました」
でこチューくらい、私だって両親にされたことあるわ。
「ではまた、のちほど」
着替えて部屋を出ると、なぜだか城の空気が一変していた。城中の人が私に頭を下げる。最敬礼に近い。
「おはようございます、ルラル様」
何事? 私、やらかした?
朝食の席まで変わっていた。あ、お誕生日席に王帝が座っているせいね。今までは別だったのに。その斜め向かいに私。遠くに他の候補4人。ケイビ様やサラ様は私たちを嫌っているからお部屋で取っているらしい。
いつもならぺちゃくちゃお喋りのみんなまで無言。パンがいいとかパンケーキがいいとかおかゆが食べたいとか、 いつもみたいに話したらいいのに。
やっぱりおかしいって。どうしたのかしら。視線が痛いわ。
「ほら、食え」
アルゼット様が私に向かって言う。
言われなくたって食べます。あら、かぼちゃの炊き込みごはんだわ。
「おいしい」
「これもだ」
サラダまでかぼちゃ。
「朝からいいのかしら」
贅沢すぎる。
「好物なのだろう?」
「ええ。大好き」
デザートまでかぼちゃプリンだった。
至福。
いや、待て。この扱い、なに? 私だけ優遇されて、どうした? 視線を送っても他の候補者に睨み返されるばかり。
「うまいか?」
王帝が料理長にプリンのおかわりまで持ってこさせる。
「充分でございます」
私は言った。
「遠慮するな」
「太るから」
と言うと、ぷっとアルゼット様が噴き出した。ああ、そうか。王帝が特別だから、彼に甘やかされる私も特別視されるのか。
とても、不快である。しかし、正妃になったらもっと過酷なのかもしれない。人目なんてずっと気にして生きてこなかったから、へっちゃら。
「起きてください」
二の腕を強請っただけで目を覚ました。王とかそれと同じような人間はずっと睡眠が浅いのだろう。私の父様もそうだった。強い風の音だけでも気にして起きた。
「おはよう」
起き上がった顔はもうしゃんとし、王帝に戻っている。
「おはようございます」
明るい場所で、帽子をかぶっていない彼の髪を見たのは初めてだ。
「珍しいか?」
「おじいちゃんみたい」
「白髪ではないぞ。銀髪だ」
とふてくされる顔はどこか幼い。私は栗色で、他の妃候補もそれぞれ違う。王帝は目までグレーなのね。
ぐぅと私のお腹が空腹を知らせるとまた笑った。
「着替えますので、出ていってください」
「俺の城で俺に指図するのか?」
いつもはとっくにミスズが起こしに来ている時間だろう。今日は、おかしい。
「意地悪な人は嫌いです」
「冗談だ。温かくて、よく眠れた」
「それは、ようございました」
でこチューくらい、私だって両親にされたことあるわ。
「ではまた、のちほど」
着替えて部屋を出ると、なぜだか城の空気が一変していた。城中の人が私に頭を下げる。最敬礼に近い。
「おはようございます、ルラル様」
何事? 私、やらかした?
朝食の席まで変わっていた。あ、お誕生日席に王帝が座っているせいね。今までは別だったのに。その斜め向かいに私。遠くに他の候補4人。ケイビ様やサラ様は私たちを嫌っているからお部屋で取っているらしい。
いつもならぺちゃくちゃお喋りのみんなまで無言。パンがいいとかパンケーキがいいとかおかゆが食べたいとか、 いつもみたいに話したらいいのに。
やっぱりおかしいって。どうしたのかしら。視線が痛いわ。
「ほら、食え」
アルゼット様が私に向かって言う。
言われなくたって食べます。あら、かぼちゃの炊き込みごはんだわ。
「おいしい」
「これもだ」
サラダまでかぼちゃ。
「朝からいいのかしら」
贅沢すぎる。
「好物なのだろう?」
「ええ。大好き」
デザートまでかぼちゃプリンだった。
至福。
いや、待て。この扱い、なに? 私だけ優遇されて、どうした? 視線を送っても他の候補者に睨み返されるばかり。
「うまいか?」
王帝が料理長にプリンのおかわりまで持ってこさせる。
「充分でございます」
私は言った。
「遠慮するな」
「太るから」
と言うと、ぷっとアルゼット様が噴き出した。ああ、そうか。王帝が特別だから、彼に甘やかされる私も特別視されるのか。
とても、不快である。しかし、正妃になったらもっと過酷なのかもしれない。人目なんてずっと気にして生きてこなかったから、へっちゃら。
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