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部屋へ戻ったら私のベッドに王帝が座っていた。
なんで?
「どこへ行っていた?」
威厳だけはすごい。
「郵便を出しに行って参りました」
やだ。ミスズが半泣きの顔をしている。彼女をここまで委縮させるなんて、やはり怖い人なの?
そうだ。お風呂がどうとか言ってたな。
「何の準備もしていないのか?」
とアルゼット様はお怒りのようだった。王帝だからなんでも思い通りのお坊ちゃんなのかしら。私の一番下の弟と似た気質だわ。
「すみませんね、忙しくて。ミスズ、お飲み物でも持って来て差し上げて」
「は、はいっ」
あのミスズの慌てようで察しが付く。やっぱりこの王帝、悪者なんじゃないだろうか。
「来い」
腕を引っ張られ、私はベッドに倒れ込んだ。
「おやめください」
「お前、手が汚いな」
「さっきまで、畑にいたもので」
「ああ、そうか。かぼちゃだ。最初の質問のときにかぼちゃが作りたいと言った女だ」
王帝がゲラゲラ笑いだした。
「そうですが、なにか?」
「いや、おもしろい女だと思ってな。本当だ、土の匂いがする」
と私の指先の匂いを嗅ぐ。
「手を洗ってきますので、お離しください」
「別にいい」
と言いながら、ハンカチで私の指を拭った。
「汚れますわ」
「こうするものだ」
上質のシルクでツルツルする。手首を押さえられて動けない。
「痛い」
と言ったら手を解いてくれた。
「かぼちゃのどこがそんなに好きなんだ?」
と聞かれた。
「煮ても美味しいし、かぼちゃ餡のお餅にしても美味しい。シチューもいいですね。器としても使えるし、ちょっと甘めのカレーも最高。かぼちゃ、あまり好きではありませんか?」
「嫌いではないが好んで食べようとは思わんな」
「あんなにおいしいものを?」
私はあれで命が助かったから、崇めすぎているのかもしれない。
「そなた、俺と寝所にいて、嫌ではないのか?」
頬を撫でられると背中がぞくりとした。
「嫌ですけど、この城自体があなたのおうちでしょう?」
いつもとは違う格好だ。剣も差していないし、ゆったりとした寝間着のような服装。
「ははっ。確かにそうだな。房事や睦言については?」
なんのことだろう。
「掃除は毎日していただいてます。むつ、六つ? ロク、ああ、お酒はロック?」
「もうよい」
こんなふうに人に抱き締められるのはいつぶりかしら。母様が亡くなったとき、父様がこうしてくれた。この人も寂しいのかもしれない。
昨日の夜、本当はちっとも眠れなかった。この人は怖そうだし、リオールは帰ってしまうし。お見送りもできなかった。昼間は平気だったのに、瞼が重い。そうだ。アルゼット様をたらしこまないといけないのだ。もうすぐ私の国では病を患っている父が退任し兄が王様になる。戴冠式をするのにはお金がかかるのだ。それらのことよりも民の生活のほうが大事と考える兄様だが、どちらにしてもお金は必要なの。この人、お願いしたら好きになってくれるのかな。人の気持ちってそういうものじゃないのだろう。どうしたらいいのだろうか。わからないから寝てしまおう。
なんで?
「どこへ行っていた?」
威厳だけはすごい。
「郵便を出しに行って参りました」
やだ。ミスズが半泣きの顔をしている。彼女をここまで委縮させるなんて、やはり怖い人なの?
そうだ。お風呂がどうとか言ってたな。
「何の準備もしていないのか?」
とアルゼット様はお怒りのようだった。王帝だからなんでも思い通りのお坊ちゃんなのかしら。私の一番下の弟と似た気質だわ。
「すみませんね、忙しくて。ミスズ、お飲み物でも持って来て差し上げて」
「は、はいっ」
あのミスズの慌てようで察しが付く。やっぱりこの王帝、悪者なんじゃないだろうか。
「来い」
腕を引っ張られ、私はベッドに倒れ込んだ。
「おやめください」
「お前、手が汚いな」
「さっきまで、畑にいたもので」
「ああ、そうか。かぼちゃだ。最初の質問のときにかぼちゃが作りたいと言った女だ」
王帝がゲラゲラ笑いだした。
「そうですが、なにか?」
「いや、おもしろい女だと思ってな。本当だ、土の匂いがする」
と私の指先の匂いを嗅ぐ。
「手を洗ってきますので、お離しください」
「別にいい」
と言いながら、ハンカチで私の指を拭った。
「汚れますわ」
「こうするものだ」
上質のシルクでツルツルする。手首を押さえられて動けない。
「痛い」
と言ったら手を解いてくれた。
「かぼちゃのどこがそんなに好きなんだ?」
と聞かれた。
「煮ても美味しいし、かぼちゃ餡のお餅にしても美味しい。シチューもいいですね。器としても使えるし、ちょっと甘めのカレーも最高。かぼちゃ、あまり好きではありませんか?」
「嫌いではないが好んで食べようとは思わんな」
「あんなにおいしいものを?」
私はあれで命が助かったから、崇めすぎているのかもしれない。
「そなた、俺と寝所にいて、嫌ではないのか?」
頬を撫でられると背中がぞくりとした。
「嫌ですけど、この城自体があなたのおうちでしょう?」
いつもとは違う格好だ。剣も差していないし、ゆったりとした寝間着のような服装。
「ははっ。確かにそうだな。房事や睦言については?」
なんのことだろう。
「掃除は毎日していただいてます。むつ、六つ? ロク、ああ、お酒はロック?」
「もうよい」
こんなふうに人に抱き締められるのはいつぶりかしら。母様が亡くなったとき、父様がこうしてくれた。この人も寂しいのかもしれない。
昨日の夜、本当はちっとも眠れなかった。この人は怖そうだし、リオールは帰ってしまうし。お見送りもできなかった。昼間は平気だったのに、瞼が重い。そうだ。アルゼット様をたらしこまないといけないのだ。もうすぐ私の国では病を患っている父が退任し兄が王様になる。戴冠式をするのにはお金がかかるのだ。それらのことよりも民の生活のほうが大事と考える兄様だが、どちらにしてもお金は必要なの。この人、お願いしたら好きになってくれるのかな。人の気持ちってそういうものじゃないのだろう。どうしたらいいのだろうか。わからないから寝てしまおう。
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・執筆時間空けてしまった間に途中過程が気に食わなくなったので、設定などを少し変えて改稿しています。
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