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 自分で言うのも変だけれど、私は身長以外、全部が平均的なのだ。謙遜ではなく、妃候補の方々に比べたらありとあらゆるものが劣っている。その中にはもちろん、自国の後ろ盾の強さも含まれている。王帝になったばかりのアルゼット様もどうせ国交を結ぶのであれば強い国がいいに決まっている。

「名を書かれている者以外は即刻国へ帰られよ。一切の質問は受けぬ」

 広間に集められた私たち。呆然とする者、涙を流す者、敵意を向ける人もいた。

「どうしてあなたが残るの? 私が剣を向けられた女より劣るっていうの?」

 はいはい。確かにその通り。

「もう決まったことでしょ?」
 私の代わりにシエ様が答えた。
 へたり込んで動けない子をユウカ様が慰める。

 中には、
「戻っても死が待ってるだけ」
 と憂う人もいた。それはあまりにもかわいそうなので、なんとかこの国で働けないか私はトベールじいにかけあうようお願いした。

 そう、人のお節介ができる私は残ってしまった。

 あのボインさんが帰る。あの童顔も、髪の艶やかな彼女も。
 つまるところ、見てくれでは選んでいないのかもしれない。王妃だから負けん気が強いほうがいいと思われた可能性もある。

 昨日のテストの点が私はたまたまよかったのだろうか。
「おめでとうございます、ルラル様」
 リオールが嬉しそうだから私まで笑顔になれた。
「平均的な自分を褒めてあげたい」
悪いところがなければ秀でている部分もない。帰ってしまわれる王女や公女の中には私よりも妃に向いている人がいるに違いない。

 もっと喜んでいいはずのリオールの顔が曇っていることに気づいた。
「お沙汰が出てしまいまして」
 リオールは一人で国へ帰るらしい。
「私のせい? あの一件のせい?」
 アルゼット様に非礼をしたのは私だ。
「違いますよ。これから先は妃選びのため、様々な儀式で女性のみでないとだめらしいのです」
「そう。心細いわ」
 船も手配済みで、明日には迎えが来るそうだ。今日まで私に言わなかったのは彼の優しさ。

 リオールの部屋で音楽もないのにダンスを踊りながら話をする。
「あなたが一緒にいてくれて、本当に嬉しかった」
ダンスも上手になったと褒めて。
「先に帰ってルラル様のご帰還をお待ちしております」
「うん」
「冗談ですよ。ルラル様、戻ってはなりません」
 そうだった。民が飢えないために、できることをやらなくちゃ。
「リオールがいないのは寂しいけれど、やれるところまでやってみる」
「はい」
 リオールの目が好きだ。緑で、きれい。その目が一生輝いているために正妃じゃなくても側室くらいにはならなくては。

 どこかの国では側室にも階級のようなものがついている。ここはどうなのだろう。妾がたくさんいて、いじめられたら残ってたことを後悔するような場所なのかもしれない。
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