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黒歴史は繰り返す?

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 ああ、なるほど――彼の心に冷めた気持ちが広がる。

 どういうつもりかは知らないが、彼女は何らかの思惑があり、自らの美貌を使って自分を誘惑しようとしているのだ。
 心当たりはある。おそらくはこの国の王族の誰かが裏で糸を引き、この女をここに寄こしたのだろう。
 
 しかし、この国の王宮の侍医を辞めて5年以上が経つのに今更自分になんの利用価値があるというのか・・久しく忘れていたはずのどす黒い感情が彼の心の中に渦巻いたのだ。
 彼は以前、王宮内での後継者争いに巻き込まれそうになった経緯があったのだ。

 今でもこの国の王族は、凝りもせず王太子の座を側室同士で・・血で血を洗う争いを繰り広げていると聞く。
 王宮の権謀術数が渦巻く世界に心底嫌気がさしたからこそ、村の治療師として穏やかに暮らしていたというのに・・
 この毒花は、自分に何の用があるというのだろうか?

「そういえば、まだお名前を伺ってはいませんでしたね。私は、この村で治療師をしているセルフィスと申します」
「わ、私は・・その・・」

 治療師は穏やかに微笑んでいるが、その目はちっとも笑ってはいなかった。
 熱っぽく見つめ、さり気なく触れてたはずなのに心を動かすどころか、氷のように冷ややかな眼差しで見つめてくるのだ。
 聞いていた話とは全く違うではないかと心の中で依頼主に毒づく。彼女は視線を彷徨わせ、おどおどとしだしたのだ。そんな険悪な空気の中で・・・

 突然、勢いよく戸口が開き能天気な声が聞こえてきたのだ。

 「ただいま戻りました~! いや~遅くなってすみませんセルフィス様!つい薬草採りに夢中になってしまって、今回もたくさん採れましたよ♪」
 「・・」
 「・・」

 いきなりの展開に驚き、二人は毒気を抜かれたように戸口から入ってきた声の主を見つめたのだ。
 だが不思議なことに娘はなぜか戸口から入ってきたアメリアの姿を見ると、みるみると顔が引きつり、顔色も悪くなっていく。

 アメリアは、薬草でいっぱいになった籠を土間に置くと、はたっと視線を感じた方向に顔をむけると、

「え・・ あれ、貴女はひょっとしてメリーナ様・・?」
「ぎゃああああああああああああああああ!!!!なんであんたが、こんなところにいるのよ!!!!」

 メリーナと呼ばれた娘は失神するのでは、というくらいの悲鳴を上げたのだ。
 
 彼女にとっては2度と関わり合いになりたくない女が、無害な顔をして目の前に立っていたのだ。
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