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脱サラ編 第四話
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迎えた成果発表の日。
少し緊張しながらも作業着に着替える。
成果発表は11時からだ。まだ3時間ほど早い。資料を見直したりするのも良いとは思うが、私はあえて通常業務を行うことにした。資料に向き合っていると更に緊張してしまう気がしたからだ。無駄に緊張してしまうよりもいつも通り過ごし、いつも通りの気持ちで成果発表に向かいたかった。
だが、何故か周りがソワソワしていた。
「お、おい喜多。大丈夫か?緊張してないか?仕事はいいから資料見てていいんだぞ?」
と、松田さん。ヤクザフェイスでソワソワしないでほしい。
松田さん以外にも、清水さんや須藤さん、他の同僚達も一斉にソワソワしていたので、見ていて私は冷静になっていた。
さ、仕事しよ。
◇
いつも通り穏やかに仕事をこなし、ちょっとお腹が空いた頃。
時計を見ると10時30分だった。そろそろ成果発表の準備をしなきゃだ。
とはいえ、資料は前もって総務に送っているので私がやる事と言えば印刷したプレゼン資料を持って成果発表会場(会議室)へ向かうくらいだ。
早めに行っておくか?いやぁ、早めに行っても緊張するしなぁ…私極端に緊張するとお腹痛くなっちゃうのよ。ぽんぽんペインは滅んでしまえばいいのに。
「喜多、タバコ行くぞ。」
おっと松田さんのご登場だ。タバコですか、いいでしょう行きましょうぞ。
「うぃ。行きましょか。」
松田さんと休憩所へと向かう。さて、何か話でもあるのだろうか。それとも、単純に私とタバコが吸いたかっただけかな?ヤクザフェイスで可愛いことしますね。まったく。
休憩所には誰もいなかった。時間的に皆昼休み前のスパートをかけて頑張っているのだろう。
二人してタバコを取り出し火をつける。私は深く吸い、ゆっくりと吐き出す。松田さんは強めに吸い、強めに吐く。人によって吸い方が異なるのでちょっと面白い。
吸わない人には申し訳ないがタバコはコミュニケーションの一つだと思っている。私と松田さんの場合、タバコを吸いながら仕事の段取り合わせや軽めの打ち合わせをしたりする。何故だか、タバコを吸ってる時の方が良い意見が出たり上手く回ったりするんだよね。
「喜多、緊張してるか?」
「どうでしょうね、今は不思議と緊張はしてないですよ。」
「そうか。」
ふむ、多少なりとも私の事を心配してくれているのだろう。私は良い先輩をもったものだ。
「俺が若かった頃は高卒に成果発表なんてなかったからよ、昇給する機会が少なかったんだ。だから俺は今だに8級なんだよ。」
この会社は等級を取り入れて役職を決めている。1級は社長、2級は本部長、3級は部長、4級は課長、5、6級は係長、7~10級は平社員、11~12級が新入社員、といった具合だ。
松田さんは8級、私は9級。つまり我々高卒組は平社員という事だ。
「俺がこのまま定年まで働いてもせいぜい6級までしか上がれないだろう。そんなに真面目に働いてるわけでもないからな。これは普通に働いてる高卒の限界だ。だが、喜多は早々に昇進の機会が与えられたんだ。成果上げてさっさと俺の等級抜かしちまえ。」
松田さんはヘラヘラと笑いながらそう言ったが、どこか儚げな雰囲気を感じた。現状からどれだけ頑張っても給料はそこまで変わらず、重要な役職に就けないということを悟っているのだろう。高卒なんてそんなもんだ。
「やるだけやってみますよ、せっかく昇進の機会が転がり込んできたわけですからね。ただ、上手くいくかはわかりませんがね。」
私もヘラヘラしながらそう返した。松田さんを抜かしてやろう、とか下剋上だ!なんかは思ってはいない。だけど、せっかくの機会だから頑張ってみますよ。
「そうかいそうかい。まぁせいぜい頑張ってくれよ。」
その後は談笑しながら、二本目のタバコを消してそれぞれの作業へと戻っていった。良いリフレッシュになった。さて、会議室に向かいますかね。
雨模様の、少し湿った凪風を頬に感じながら清々しい気分で会議室へと向かった。
少し緊張しながらも作業着に着替える。
成果発表は11時からだ。まだ3時間ほど早い。資料を見直したりするのも良いとは思うが、私はあえて通常業務を行うことにした。資料に向き合っていると更に緊張してしまう気がしたからだ。無駄に緊張してしまうよりもいつも通り過ごし、いつも通りの気持ちで成果発表に向かいたかった。
だが、何故か周りがソワソワしていた。
「お、おい喜多。大丈夫か?緊張してないか?仕事はいいから資料見てていいんだぞ?」
と、松田さん。ヤクザフェイスでソワソワしないでほしい。
松田さん以外にも、清水さんや須藤さん、他の同僚達も一斉にソワソワしていたので、見ていて私は冷静になっていた。
さ、仕事しよ。
◇
いつも通り穏やかに仕事をこなし、ちょっとお腹が空いた頃。
時計を見ると10時30分だった。そろそろ成果発表の準備をしなきゃだ。
とはいえ、資料は前もって総務に送っているので私がやる事と言えば印刷したプレゼン資料を持って成果発表会場(会議室)へ向かうくらいだ。
早めに行っておくか?いやぁ、早めに行っても緊張するしなぁ…私極端に緊張するとお腹痛くなっちゃうのよ。ぽんぽんペインは滅んでしまえばいいのに。
「喜多、タバコ行くぞ。」
おっと松田さんのご登場だ。タバコですか、いいでしょう行きましょうぞ。
「うぃ。行きましょか。」
松田さんと休憩所へと向かう。さて、何か話でもあるのだろうか。それとも、単純に私とタバコが吸いたかっただけかな?ヤクザフェイスで可愛いことしますね。まったく。
休憩所には誰もいなかった。時間的に皆昼休み前のスパートをかけて頑張っているのだろう。
二人してタバコを取り出し火をつける。私は深く吸い、ゆっくりと吐き出す。松田さんは強めに吸い、強めに吐く。人によって吸い方が異なるのでちょっと面白い。
吸わない人には申し訳ないがタバコはコミュニケーションの一つだと思っている。私と松田さんの場合、タバコを吸いながら仕事の段取り合わせや軽めの打ち合わせをしたりする。何故だか、タバコを吸ってる時の方が良い意見が出たり上手く回ったりするんだよね。
「喜多、緊張してるか?」
「どうでしょうね、今は不思議と緊張はしてないですよ。」
「そうか。」
ふむ、多少なりとも私の事を心配してくれているのだろう。私は良い先輩をもったものだ。
「俺が若かった頃は高卒に成果発表なんてなかったからよ、昇給する機会が少なかったんだ。だから俺は今だに8級なんだよ。」
この会社は等級を取り入れて役職を決めている。1級は社長、2級は本部長、3級は部長、4級は課長、5、6級は係長、7~10級は平社員、11~12級が新入社員、といった具合だ。
松田さんは8級、私は9級。つまり我々高卒組は平社員という事だ。
「俺がこのまま定年まで働いてもせいぜい6級までしか上がれないだろう。そんなに真面目に働いてるわけでもないからな。これは普通に働いてる高卒の限界だ。だが、喜多は早々に昇進の機会が与えられたんだ。成果上げてさっさと俺の等級抜かしちまえ。」
松田さんはヘラヘラと笑いながらそう言ったが、どこか儚げな雰囲気を感じた。現状からどれだけ頑張っても給料はそこまで変わらず、重要な役職に就けないということを悟っているのだろう。高卒なんてそんなもんだ。
「やるだけやってみますよ、せっかく昇進の機会が転がり込んできたわけですからね。ただ、上手くいくかはわかりませんがね。」
私もヘラヘラしながらそう返した。松田さんを抜かしてやろう、とか下剋上だ!なんかは思ってはいない。だけど、せっかくの機会だから頑張ってみますよ。
「そうかいそうかい。まぁせいぜい頑張ってくれよ。」
その後は談笑しながら、二本目のタバコを消してそれぞれの作業へと戻っていった。良いリフレッシュになった。さて、会議室に向かいますかね。
雨模様の、少し湿った凪風を頬に感じながら清々しい気分で会議室へと向かった。
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