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第二部。
大預言者。
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「よろしくお願い致します」
差し伸べてくれた手をとって、そう改めて挨拶をする。
他国の、それも皇帝の息女相手に不敬でしょうか? そんなふうにも思うものの、差し伸べられた手を取らずではそちらの方がダメでしょう。そう考えふわっと手を取り握手をして。
皇女の笑顔が可愛らしく、その磁器のような透き通る滑らかなお肌がほんの少しだけ赤く染まる。
周囲にたくさん集まってるギアたちも、彼女に好意を持っているのがよくわかる。
自分と比較するわけではないけれど、ギアに好かれるということはそれだけきっとマギアスキルも高いのだなぁとそう感じる。
この方はもしかしたら帝国の聖女様なのだろうか?
この国、アルメルセデスでは聖女と言ったら王室の息女や上級貴族のどなたかが務めるのが常となっていますから、きっと帝国でもそうなのではないでしょうか?
そんなふうにも思って。
「サラ殿下は、聖女様なのでしょうか?」
思わずそんな言葉が口に出ていた。
「ふふふ。わたくしは聖女の職にはついてはいませんわ。きっと聖女になることはないでしょうね」
と、そんなふうに答える皇女。
その言葉に。
もしかしたらもうご結婚が決まっていらっしゃるのかしら?
と、その後の言葉が出てこなくなってしまったセルフィーナ。
「あら、結婚が決まっているわけではないのですよ? 聖女は別の方が務めておりますし、わたくしには大預言者という務めがございますから」
(え? わたくし、口に出していませんのに?)
「ふふ。ごめんなさいね。わたくし、心の色が見えますの。貴女の表層意識がどんな色なのかと、その意味合いがうっすらと。気味が悪く感じられたらほんとごめんなさい」
そうあっさりと答えるサラ。
それは驚愕の内容に思えた。
そんな、他人の心がわかるだなんて。
ということは彼女の前では誰も嘘などつくことができないということで。
それも、市井にある一般人の立場ではない、皇帝陛下の御息女、皇女殿下がそのような能力を保持しているだなんていうことは。
それだけで彼女の命が危険に晒される可能性だってあるのではないかしら?
嘘をつきたい人はきっといるもの。
そういう人に命を狙われでもしたら大変。
ふつうだったらそんな秘密、初対面の者になど晒さないだろうに。
ああどうしましょう、と。
心の中でぐるぐると悩んでしまって。
「貴女は本当、素直なのね。でも、わたくしを怖がったり気味悪く思ったりしていないってことはわかるわ。だから、ありがとう」
サラ皇女はこくんとうなづいて。
「やっぱり、この国にきた甲斐がありましたわ。わたくしきっと、貴女に会う為にここに来たのですよ」
そう言って。
もう一度ふわりと笑みをこぼした。
差し伸べてくれた手をとって、そう改めて挨拶をする。
他国の、それも皇帝の息女相手に不敬でしょうか? そんなふうにも思うものの、差し伸べられた手を取らずではそちらの方がダメでしょう。そう考えふわっと手を取り握手をして。
皇女の笑顔が可愛らしく、その磁器のような透き通る滑らかなお肌がほんの少しだけ赤く染まる。
周囲にたくさん集まってるギアたちも、彼女に好意を持っているのがよくわかる。
自分と比較するわけではないけれど、ギアに好かれるということはそれだけきっとマギアスキルも高いのだなぁとそう感じる。
この方はもしかしたら帝国の聖女様なのだろうか?
この国、アルメルセデスでは聖女と言ったら王室の息女や上級貴族のどなたかが務めるのが常となっていますから、きっと帝国でもそうなのではないでしょうか?
そんなふうにも思って。
「サラ殿下は、聖女様なのでしょうか?」
思わずそんな言葉が口に出ていた。
「ふふふ。わたくしは聖女の職にはついてはいませんわ。きっと聖女になることはないでしょうね」
と、そんなふうに答える皇女。
その言葉に。
もしかしたらもうご結婚が決まっていらっしゃるのかしら?
と、その後の言葉が出てこなくなってしまったセルフィーナ。
「あら、結婚が決まっているわけではないのですよ? 聖女は別の方が務めておりますし、わたくしには大預言者という務めがございますから」
(え? わたくし、口に出していませんのに?)
「ふふ。ごめんなさいね。わたくし、心の色が見えますの。貴女の表層意識がどんな色なのかと、その意味合いがうっすらと。気味が悪く感じられたらほんとごめんなさい」
そうあっさりと答えるサラ。
それは驚愕の内容に思えた。
そんな、他人の心がわかるだなんて。
ということは彼女の前では誰も嘘などつくことができないということで。
それも、市井にある一般人の立場ではない、皇帝陛下の御息女、皇女殿下がそのような能力を保持しているだなんていうことは。
それだけで彼女の命が危険に晒される可能性だってあるのではないかしら?
嘘をつきたい人はきっといるもの。
そういう人に命を狙われでもしたら大変。
ふつうだったらそんな秘密、初対面の者になど晒さないだろうに。
ああどうしましょう、と。
心の中でぐるぐると悩んでしまって。
「貴女は本当、素直なのね。でも、わたくしを怖がったり気味悪く思ったりしていないってことはわかるわ。だから、ありがとう」
サラ皇女はこくんとうなづいて。
「やっぱり、この国にきた甲斐がありましたわ。わたくしきっと、貴女に会う為にここに来たのですよ」
そう言って。
もう一度ふわりと笑みをこぼした。
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