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離縁されたい。
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定例となった朝のサイラス様とのお食事。
シルフィーナはここ数日、考え事に耽ってまともに旦那様のお顔も見れずにいた。
心配そうに覗き込むサイラスにも気が付かず、食事の量もかなり少なくなってしまっていて。
「君は花が好きでしたよね。近々領地に帰るので、そちらの館にある薔薇園を案内しましょうか」
そんなサイラスの言葉にも、「はい。ありがとうございます」と生返事をするだけで。
話を聞いていないわけではないし、本来であればそれはとても嬉しい提案であったのだけれど。
今のシルフィーナにはそれ以上に、頭を離れない言葉があって。
それがぐるぐると回るように浮かび上がってくるものだからどうしてもそちらに気を取られてしまう。
「薔薇園は今はちょうど春の見頃となって咲き乱れているはずです。君もきっと気にいると思いますよ」
と、そう優しい目で語りかけるサイラス様。
申し訳ない。
そう思いながらもどうしても考えてしまうのは、
「やっぱりわたくしは離縁してもらうべきではないだろうか」
と、そんな考えだった。
どうしても、このままでいいわけは無い。そんな思考で頭の中がいっぱいになってしまう。
旦那様には旦那様で事情があるのだろう。
でもそれは自分で無くても良いはずだ。
お飾りの奥さんが必要なだけであれば他にも、そう、リーファさんでもいいんじゃないだろうか?
彼女は綺麗で上品で、貴族としての振る舞いも自分なんかよりもよっぽど堂にいっている。
そうも思い。
ああでも、ひょっとして彼女は親戚だから逆に気をつかっているのか?
三年でお払い箱にするには情が邪魔をするからか。
そんなふうにも考えてしまい。
だから。
あとくされのないわたくしの様な下級の貧乏貴族をお金で買ったのか!?
そんなことも考え、悲しくなってしまう。
この、最後の、お金で買われたのじゃないのか?
その考えはずっと心の奥底で楔となっている。
それが本当に悲しくて。
こうして優しい言葉をかけてくださるのも、演技なの?
そう思ったら今すぐにでもここから逃げ出したくなってしまう。
「どうしたの? ほんとう、元気がないね?」
きらきらとした瞳で、こちらを優しく覗き込む旦那様。
ああ、だめ。
それ以上優しくされたら、勘違いしてしまう。
自分はただのお飾妻なのに、ほんとうは愛されているのじゃないかって。
『君を愛することはできない』
そう、言われたじゃないの。
そう、断言なさったじゃないの。
旦那様は、これは『契約結婚』だと、そう間違いなくおっしゃったのに。
シルフィーナは、パンクしそうなそんな想いを吐き出すことができずに。
ただただ俯くだけしかできなかった。
♢ ♢ ♢
自分が旦那様のことを愛してしまったからいけないのだ。
それはわかっている。
もし、損得だけを考えるなら、きっと提示され通りの契約結婚続けたほうがいいのだろう。
実家もそれで助かって、シルフィーナ自身も侯爵夫人の暮らしが送れるのだから。
だけれど。
辛い。
じぶんを偽って生きるのは。
(わたくしの心は弱いのかもです……)
貴族に生まれたからには自分の人生など家に尽くして当たり前。
自分の幸せより家が大事。
そして一旦嫁いだならば、その嫁ぎ先に尽くせ。
そう言われて育ってきた。
そうであるなら。
今のここでの自分の選択肢は、たとえそれが表向きの事だけであったのだとしても、侯爵夫人として恥ずかしくない様に生きるべき。
それがたとえ三年間のあいだだけであったとしても。
(それはわかってはいるのです……。でも)
ただひたすら。
悲しかった。
シルフィーナはここ数日、考え事に耽ってまともに旦那様のお顔も見れずにいた。
心配そうに覗き込むサイラスにも気が付かず、食事の量もかなり少なくなってしまっていて。
「君は花が好きでしたよね。近々領地に帰るので、そちらの館にある薔薇園を案内しましょうか」
そんなサイラスの言葉にも、「はい。ありがとうございます」と生返事をするだけで。
話を聞いていないわけではないし、本来であればそれはとても嬉しい提案であったのだけれど。
今のシルフィーナにはそれ以上に、頭を離れない言葉があって。
それがぐるぐると回るように浮かび上がってくるものだからどうしてもそちらに気を取られてしまう。
「薔薇園は今はちょうど春の見頃となって咲き乱れているはずです。君もきっと気にいると思いますよ」
と、そう優しい目で語りかけるサイラス様。
申し訳ない。
そう思いながらもどうしても考えてしまうのは、
「やっぱりわたくしは離縁してもらうべきではないだろうか」
と、そんな考えだった。
どうしても、このままでいいわけは無い。そんな思考で頭の中がいっぱいになってしまう。
旦那様には旦那様で事情があるのだろう。
でもそれは自分で無くても良いはずだ。
お飾りの奥さんが必要なだけであれば他にも、そう、リーファさんでもいいんじゃないだろうか?
彼女は綺麗で上品で、貴族としての振る舞いも自分なんかよりもよっぽど堂にいっている。
そうも思い。
ああでも、ひょっとして彼女は親戚だから逆に気をつかっているのか?
三年でお払い箱にするには情が邪魔をするからか。
そんなふうにも考えてしまい。
だから。
あとくされのないわたくしの様な下級の貧乏貴族をお金で買ったのか!?
そんなことも考え、悲しくなってしまう。
この、最後の、お金で買われたのじゃないのか?
その考えはずっと心の奥底で楔となっている。
それが本当に悲しくて。
こうして優しい言葉をかけてくださるのも、演技なの?
そう思ったら今すぐにでもここから逃げ出したくなってしまう。
「どうしたの? ほんとう、元気がないね?」
きらきらとした瞳で、こちらを優しく覗き込む旦那様。
ああ、だめ。
それ以上優しくされたら、勘違いしてしまう。
自分はただのお飾妻なのに、ほんとうは愛されているのじゃないかって。
『君を愛することはできない』
そう、言われたじゃないの。
そう、断言なさったじゃないの。
旦那様は、これは『契約結婚』だと、そう間違いなくおっしゃったのに。
シルフィーナは、パンクしそうなそんな想いを吐き出すことができずに。
ただただ俯くだけしかできなかった。
♢ ♢ ♢
自分が旦那様のことを愛してしまったからいけないのだ。
それはわかっている。
もし、損得だけを考えるなら、きっと提示され通りの契約結婚続けたほうがいいのだろう。
実家もそれで助かって、シルフィーナ自身も侯爵夫人の暮らしが送れるのだから。
だけれど。
辛い。
じぶんを偽って生きるのは。
(わたくしの心は弱いのかもです……)
貴族に生まれたからには自分の人生など家に尽くして当たり前。
自分の幸せより家が大事。
そして一旦嫁いだならば、その嫁ぎ先に尽くせ。
そう言われて育ってきた。
そうであるなら。
今のここでの自分の選択肢は、たとえそれが表向きの事だけであったのだとしても、侯爵夫人として恥ずかしくない様に生きるべき。
それがたとえ三年間のあいだだけであったとしても。
(それはわかってはいるのです……。でも)
ただひたすら。
悲しかった。
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