30 / 32
穏やかな日。
しおりを挟む
♢♢♢
その日はとても穏やかに晴れ渡った気持ちの良い一日だった。
もう冬だというのに日差しが暖かく、風も冷たさが和らいでいる。
例年だったら雪が降り始め領民も屋内の手仕事くらいしか出来なくなるほどであったけれど、去年から続く陽気は作物の豊作をもたらし国内全体を見渡してみてもかなりの食料備蓄が見込める程で。
このまま今年は暖冬になるだろうというのが王宮技術院の見解だった。
「良いお天気ね。今日はいい日になりそうだわ」
「貴女はお気楽でいいですね」
「あらあら嫌味? でも許してあげるわ。わたくし今日はとっても気分が良いのですもの」
「そう、ですか……」
女の気持ちはわからない。そう頭を振るジュリウス。
あと数時間後には領館の会議室での会食がはじまる。
メニューも何もかもジュリウスにはなんの相談もなく、ベローニカとジェファーソンで決めていた。
まあ、自分にはそういう事はわからないしな。
そう自嘲しながらも、今までの人生もすべて、もしかしてわからない事だらけだったのだろうかと思い返す。
自分の視野が狭かったのか、と。
「俺は、ダメですね……。ほんとにダメだ……」
そう吐き出していた。
弱音を吐くつもりではなかったけれど、ついついそんな言葉が口から出てしまっていたのだった。
「そうねえ。ほんとにダメな子だわ。あなたは嫌がるかもしれないけど、わたくしはあなたのことは本当の子ども、ううん、弟みたいに思ってきたのよ。だから判断も甘めだけど、それでもあなたは男としては最低だったし、ダメダメだったわ。マリエルちゃんはかわいそうでしょうがなかった。だから、あなたが改心しないのなら、「わかれよう」って言ったあなたにはもうそれ以上何も言うつもりも無かったのですけど、ね」
「ベローニカ……」
「ちょっとだけおせっかいをやいてみたの。まあどうなるのかわからないですけどね」
意味深な話し方のベローニカから目が離せないまま、ジュリウスは立ちつくす。
そのままゆったりと時間が過ぎて、そろそろ正午という頃合になった頃。
「奥様、若旦那さま。お時間でございます」
ジェファーソンがそう声をかける。
会議室に向かう二人。
そこには。
家臣ら数名に混ざって、マリエルの姿があった。
その日はとても穏やかに晴れ渡った気持ちの良い一日だった。
もう冬だというのに日差しが暖かく、風も冷たさが和らいでいる。
例年だったら雪が降り始め領民も屋内の手仕事くらいしか出来なくなるほどであったけれど、去年から続く陽気は作物の豊作をもたらし国内全体を見渡してみてもかなりの食料備蓄が見込める程で。
このまま今年は暖冬になるだろうというのが王宮技術院の見解だった。
「良いお天気ね。今日はいい日になりそうだわ」
「貴女はお気楽でいいですね」
「あらあら嫌味? でも許してあげるわ。わたくし今日はとっても気分が良いのですもの」
「そう、ですか……」
女の気持ちはわからない。そう頭を振るジュリウス。
あと数時間後には領館の会議室での会食がはじまる。
メニューも何もかもジュリウスにはなんの相談もなく、ベローニカとジェファーソンで決めていた。
まあ、自分にはそういう事はわからないしな。
そう自嘲しながらも、今までの人生もすべて、もしかしてわからない事だらけだったのだろうかと思い返す。
自分の視野が狭かったのか、と。
「俺は、ダメですね……。ほんとにダメだ……」
そう吐き出していた。
弱音を吐くつもりではなかったけれど、ついついそんな言葉が口から出てしまっていたのだった。
「そうねえ。ほんとにダメな子だわ。あなたは嫌がるかもしれないけど、わたくしはあなたのことは本当の子ども、ううん、弟みたいに思ってきたのよ。だから判断も甘めだけど、それでもあなたは男としては最低だったし、ダメダメだったわ。マリエルちゃんはかわいそうでしょうがなかった。だから、あなたが改心しないのなら、「わかれよう」って言ったあなたにはもうそれ以上何も言うつもりも無かったのですけど、ね」
「ベローニカ……」
「ちょっとだけおせっかいをやいてみたの。まあどうなるのかわからないですけどね」
意味深な話し方のベローニカから目が離せないまま、ジュリウスは立ちつくす。
そのままゆったりと時間が過ぎて、そろそろ正午という頃合になった頃。
「奥様、若旦那さま。お時間でございます」
ジェファーソンがそう声をかける。
会議室に向かう二人。
そこには。
家臣ら数名に混ざって、マリエルの姿があった。
563
お気に入りに追加
1,750
あなたにおすすめの小説
【完結】殿下は私を溺愛してくれますが、あなたの“真実の愛”の相手は私ではありません
Rohdea
恋愛
──私は“彼女”の身代わり。
彼が今も愛しているのは亡くなった元婚約者の王女様だけだから──……
公爵令嬢のユディットは、王太子バーナードの婚約者。
しかし、それは殿下の婚約者だった隣国の王女が亡くなってしまい、
国内の令嬢の中から一番身分が高い……それだけの理由で新たに選ばれただけ。
バーナード殿下はユディットの事をいつも優しく、大切にしてくれる。
だけど、その度にユディットの心は苦しくなっていく。
こんな自分が彼の婚約者でいていいのか。
自分のような理由で互いの気持ちを無視して決められた婚約者は、
バーナードが再び心惹かれる“真実の愛”の相手を見つける邪魔になっているだけなのでは?
そんな心揺れる日々の中、
二人の前に、亡くなった王女とそっくりの女性が現れる。
実は、王女は襲撃の日、こっそり逃がされていて実は生きている……
なんて噂もあって────
愛してほしかった
こな
恋愛
「側室でもいいか」最愛の人にそう問われ、頷くしかなかった。
心はすり減り、期待を持つことを止めた。
──なのに、今更どういうおつもりですか?
※設定ふんわり
※何でも大丈夫な方向け
※合わない方は即ブラウザバックしてください
※指示、暴言を含むコメント、読後の苦情などはお控えください
私は心を捨てました 〜「お前なんかどうでもいい」と言ったあなた、どうして今更なのですか?〜
月橋りら
恋愛
私に婚約の打診をしてきたのは、ルイス・フォン・ラグリー侯爵子息。
だが、彼には幼い頃から大切に想う少女がいたーー。
「お前なんかどうでもいい」 そうあなたが言ったから。
私は心を捨てたのに。
あなたはいきなり許しを乞うてきた。
そして優しくしてくるようになった。
ーー私が想いを捨てた後で。
どうして今更なのですかーー。
*この小説はカクヨム様、エブリスタ様でも連載しております。
【本編完結】若き公爵の子を授かった夫人は、愛する夫のために逃げ出した。 一方公爵様は、妻死亡説が流れようとも諦めません!
はづも
恋愛
本編完結済み。番外編がたまに投稿されたりされなかったりします。
伯爵家に生まれたカレン・アーネストは、20歳のとき、幼馴染でもある若き公爵、ジョンズワート・デュライトの妻となった。
しかし、ジョンズワートはカレンを愛しているわけではない。
当時12歳だったカレンの額に傷を負わせた彼は、その責任を取るためにカレンと結婚したのである。
……本当に好きな人を、諦めてまで。
幼い頃からずっと好きだった彼のために、早く身を引かなければ。
そう思っていたのに、初夜の一度でカレンは懐妊。
このままでは、ジョンズワートが一生自分に縛られてしまう。
夫を想うが故に、カレンは妊娠したことを隠して姿を消した。
愛する人を縛りたくないヒロインと、死亡説が流れても好きな人を諦めることができないヒーローの、両片想い・幼馴染・すれ違い・ハッピーエンドなお話です。
たとえ番でないとしても
豆狸
恋愛
「ディアナ王女、私が君を愛することはない。私の番は彼女、サギニなのだから」
「違います!」
私は叫ばずにはいられませんでした。
「その方ではありません! 竜王ニコラオス陛下の番は私です!」
──番だと叫ぶ言葉を聞いてもらえなかった花嫁の話です。
※1/4、短編→長編に変更しました。
私のことが大嫌いらしい婚約者に婚約破棄を告げてみた結果。
夢風 月
恋愛
カルディア王国公爵家令嬢シャルロットには7歳の時から婚約者がいたが、何故かその相手である第二王子から酷く嫌われていた。
顔を合わせれば睨まれ、嫌味を言われ、周囲の貴族達からは哀れみの目を向けられる日々。
我慢の限界を迎えたシャルロットは、両親と国王を脅……説得して、自分たちの婚約を解消させた。
そしてパーティーにて、いつものように冷たい態度をとる婚約者にこう言い放つ。
「私と殿下の婚約は解消されました。今までありがとうございました!」
そうして笑顔でパーティー会場を後にしたシャルロットだったが……次の日から何故か婚約を解消したはずのキースが家に押しかけてくるようになった。
「なんで今更元婚約者の私に会いに来るんですか!?」
「……好きだからだ」
「……はい?」
いろんな意味でたくましい公爵令嬢と、不器用すぎる王子との恋物語──。
※タグをよくご確認ください※
【完結】記憶喪失になってから、あなたの本当の気持ちを知りました
Rohdea
恋愛
誰かが、自分を呼ぶ声で目が覚めた。
必死に“私”を呼んでいたのは見知らぬ男性だった。
──目を覚まして気付く。
私は誰なの? ここはどこ。 あなたは誰?
“私”は馬車に轢かれそうになり頭を打って気絶し、起きたら記憶喪失になっていた。
こうして私……リリアはこれまでの記憶を失くしてしまった。
だけど、なぜか目覚めた時に傍らで私を必死に呼んでいた男性──ロベルトが私の元に毎日のようにやって来る。
彼はただの幼馴染らしいのに、なんで!?
そんな彼に私はどんどん惹かれていくのだけど……
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる