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青い髪。

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 青い髪というのは結構珍しい髪色だ。
 古い貴族の血を引くものにたまに現れる色で、平民にはほぼ居ない。
 わたくしが幼い頃にお亡くなりになったおじいさまも確か青い髪だったし、お会いしたことはないのだけれどレイングラード家でも先先代の侯爵様がそんな澄んだ青い髪色をなさっていたのだということが壁に飾られた肖像画をみてもわかる。

 いつだったか、そんなお祖父様の肖像画を眺めながら、自分もこんな髪色であったならとそうジュリウス様が誰に聞かせることもなく呟くのを聞いたことがある。
 ジュリウス様の髪色は輝くような黄金で、わたくしはそれをとても美しいと思っていたら意外に思ったものだった。
 どうして?
 と、聞きたいのを堪えて傍に控えていたから、わたくしがそんな呟きを聞いていたとは彼も思っていなかったかもしれないけれど。

 というか、わたくしはジュリウス様とお仕事以外の会話をほとんどしたことがない。
 何か話しかけられても、ええ、とか、はい、とか言うだけで、ほとんど会話になっていなかった。
 今にして思えば、きっと面白味のない伴侶であったのだろうなと、そう反省する。
 きっと、わたくしがジュリウス様を愛しているだなんて、今更言っても信じてもらえないだろう。
 それくらい彼のわたくしを見る目はまるで他人を見るような、そんな瞳だったから。

 お仕事にしてみても、領地のお仕事はずっとお義父さまと一緒にしていただけでジュリウス様からお声をかけられたことはない。
 先日のジュリウス様が新しい侯爵になられて初めての領地会議の席にも、わたくしは呼ばれもしなかった。
 それまではずっとお義父さまについて会議に出席し、時には秘書に徹し、時にはアイデアを求められ、時には仕事を任されることもあって、そんな領地経営のお仕事にも面白さを感じていたところだったけれど、きっともうそんなのも必要はないのだろう。

 もしかしたらお家の細々としたことも、わたくしが口を出す必要はないのだろうか?

 執事のセバスに色々と相談されるたびに解決策を提示しおお義父様の許可を得て行なってきた家の細々とした事柄。
 これからはきっとジュリウス様が全てを取り仕切るのだろう。
 そこに、わたくしの出る幕なんかないかもしれない。

 そうでなくともわたくしは後一年でこの家を出ていく人間だ。

 あまり深入りしない方がいいのかもしれないし……。




 夜中中そんなことを考えていたらあまりよく寝られなかった。
 気がついたらもう明け方だ。
 いつもだったらもう起き出して色々身支度し始める時間だったけれど、お布団から出る気になれなくて。

 今日も夜は店に立とう。
 貴族社会の出来事なんか忘れ、思いっきり働いていれば、きっとこの虚しさ悲しさも忘れられる。
 どうせもう日中わたくしのやることなど何もないのだもの。

 そう思ったら、朝からちゃんと起きる気力がどこかに行ってしまったようで、そのまま二度寝をしてしまったようだった。
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