19 / 32
【小納言】あたしの姫様は実は男の子だ。
しおりを挟む
あたしの姫さまは実は男の子だ。
お母様から、
「今日からお前が姫さまにお仕えしなさい」
そう言われてやってきたお屋敷は、すごく大きくて。
お母様と一緒に過ごせるのは嬉しかったけど、なんだか怖いな、そんな感情が先に立っていた。
同じ藤原性とは言えお父様は従五位下権の少納言。
お母様は長年おとどさまの東の方にお仕えして、姫の乳母子も勤めていた関係で彼女の遊び相手として白羽の矢が立ったのがあたしだった、と、言うことだった。
あたしは十で姫さまはまだ七つ。
彼女を初めて見たとき、その可憐で神秘的ともいえる美しさに、あたしは一目惚れして。
ああ。この子はあたしが守るんだ。
そう心に決めた。
そんな彼女が実は男の子だと知ったのは、お仕えして半年くらい過ぎたある日、だった。
夜中に熱を出しぐっしょりと汗で濡れた姫さまをみかね、着物を脱がし身体を拭いてあげようとお声をかけた。
「姫さま、お着物着替えましょうね。もう汗でぐっしょり。このままではお身体に差し支えますわ」
そう、少し起こして着替えさせようとしたその時だった。
「ダメ、少納言、だめ……。わたし自分で脱ぐから……」
熱で浮かされながらもあたしに脱がされるのを拒む姫。
でも。
少し起き上がり襦袢を脱ごうとした所で力尽きた姫さまは、そのままぐったりと倒れ。
うちぎもはだけた状態で動けなくなった姫さまをほかっておけず、絹の手拭いを片手に彼女を抱き上げたあたしは、ゆっくりと濡れた襦袢を脱がしてゆき……。
そして。
まだ八つになったばかりの彼女の秘密を知ってしまった。見てしまったのだった。
肋骨が浮くくらいの病弱なその身体。胸の膨らみもまだなのはこれだけ痩せているせいだろうと気にもしなかった。
だけれどその下まで見てしまったあとで。
丁寧に身体を拭いてまっさらの襦袢を着せ、うちぎを着せる。
上からふすまを掛け暖かくして。
かわいい寝息をたてるその額を軽く撫でると
う、うん……。
と、吐息が漏れる。
熱も少しおさまったみたいだ。
ああ。あたしの姫さま。
大好きですよ。
お母様から、
「今日からお前が姫さまにお仕えしなさい」
そう言われてやってきたお屋敷は、すごく大きくて。
お母様と一緒に過ごせるのは嬉しかったけど、なんだか怖いな、そんな感情が先に立っていた。
同じ藤原性とは言えお父様は従五位下権の少納言。
お母様は長年おとどさまの東の方にお仕えして、姫の乳母子も勤めていた関係で彼女の遊び相手として白羽の矢が立ったのがあたしだった、と、言うことだった。
あたしは十で姫さまはまだ七つ。
彼女を初めて見たとき、その可憐で神秘的ともいえる美しさに、あたしは一目惚れして。
ああ。この子はあたしが守るんだ。
そう心に決めた。
そんな彼女が実は男の子だと知ったのは、お仕えして半年くらい過ぎたある日、だった。
夜中に熱を出しぐっしょりと汗で濡れた姫さまをみかね、着物を脱がし身体を拭いてあげようとお声をかけた。
「姫さま、お着物着替えましょうね。もう汗でぐっしょり。このままではお身体に差し支えますわ」
そう、少し起こして着替えさせようとしたその時だった。
「ダメ、少納言、だめ……。わたし自分で脱ぐから……」
熱で浮かされながらもあたしに脱がされるのを拒む姫。
でも。
少し起き上がり襦袢を脱ごうとした所で力尽きた姫さまは、そのままぐったりと倒れ。
うちぎもはだけた状態で動けなくなった姫さまをほかっておけず、絹の手拭いを片手に彼女を抱き上げたあたしは、ゆっくりと濡れた襦袢を脱がしてゆき……。
そして。
まだ八つになったばかりの彼女の秘密を知ってしまった。見てしまったのだった。
肋骨が浮くくらいの病弱なその身体。胸の膨らみもまだなのはこれだけ痩せているせいだろうと気にもしなかった。
だけれどその下まで見てしまったあとで。
丁寧に身体を拭いてまっさらの襦袢を着せ、うちぎを着せる。
上からふすまを掛け暖かくして。
かわいい寝息をたてるその額を軽く撫でると
う、うん……。
と、吐息が漏れる。
熱も少しおさまったみたいだ。
ああ。あたしの姫さま。
大好きですよ。
1
お気に入りに追加
30
あなたにおすすめの小説
元おっさんの幼馴染育成計画
みずがめ
恋愛
独身貴族のおっさんが逆行転生してしまった。結婚願望がなかったわけじゃない、むしろ強く思っていた。今度こそ人並みのささやかな夢を叶えるために彼女を作るのだ。
だけど結婚どころか彼女すらできたことのないような日陰ものの自分にそんなことができるのだろうか? 軟派なことをできる自信がない。ならば幼馴染の女の子を作ってそのままゴールインすればいい。という考えのもと始まる元おっさんの幼馴染育成計画。
※この作品は小説家になろうにも掲載しています。
※【挿絵あり】の話にはいただいたイラストを載せています。表紙はチャーコさんが依頼して、まるぶち銀河さんに描いていただきました。
全裸で異世界に呼び出しておいて、国外追放って、そりゃあんまりじゃないの!?
猿喰 森繁
恋愛
私の名前は、琴葉 桜(ことのは さくら)30歳。会社員。
風呂に入ろうと、全裸になったら異世界から聖女として召喚(という名の無理やり誘拐された被害者)された自分で言うのもなんだけど、可哀そうな女である。
日本に帰すことは出来ないと言われ、渋々大人しく、言うことを聞いていたら、ある日、国外追放を宣告された可哀そうな女である。
「―――サクラ・コトノハ。今日をもって、お前を国外追放とする」
その言葉には一切の迷いもなく、情けも見えなかった。
自分たちが正義なんだと、これが正しいことなのだと疑わないその顔を見て、私はムクムクと怒りがわいてきた。
ずっと抑えてきたのに。我慢してきたのに。こんな理不尽なことはない。
日本から無理やり聖女だなんだと、無理やり呼んだくせに、今度は国外追放?
ふざけるのもいい加減にしろ。
温厚で優柔不断と言われ、ノーと言えない日本人だから何をしてもいいと思っているのか。日本人をなめるな。
「私だって好き好んでこんなところに来たわけじゃないんですよ!分かりますか?無理やり私をこの世界に呼んだのは、あなたたちのほうです。それなのにおかしくないですか?どうして、その女の子の言うことだけを信じて、守って、私は無視ですか?私の言葉もまともに聞くおつもりがないのも知ってますが、あなたがたのような人間が国の未来を背負っていくなんて寒気がしますね!そんな国を守る義務もないですし、私を国外追放するなら、どうぞ勝手になさるといいです。
ええ。
被害者はこっちだっつーの!
婚約破棄されたら魔法が解けました
かな
恋愛
「クロエ・ベネット。お前との婚約は破棄する。」
それは学園の卒業パーティーでの出来事だった。……やっぱり、ダメだったんだ。周りがザワザワと騒ぎ出す中、ただ1人『クロエ・ベネット』だけは冷静に事実を受け止めていた。乙女ゲームの世界に転生してから10年。国外追放を回避する為に、そして后妃となる為に努力し続けて来たその時間が無駄になった瞬間だった。そんな彼女に追い打ちをかけるかのように、王太子であるエドワード・ホワイトは聖女を新たな婚約者とすることを発表した。その後はトントン拍子にことが運び、冤罪をかけられ、ゲームのシナリオ通り国外追放になった。そして、魔物に襲われて死ぬ。……そんな運命を辿るはずだった。
「こんなことなら、転生なんてしたくなかった。元の世界に戻りたい……」
あろうことか、最後の願いとしてそう思った瞬間に、全身が光り出したのだ。そして気がつくと、なんと前世の姿に戻っていた!しかもそれを第二王子であるアルベルトに見られていて……。
「……まさかこんなことになるなんてね。……それでどうする?あの2人復讐でもしちゃう?今の君なら、それができるよ。」
死を覚悟した絶望から転生特典を得た主人公の大逆転溺愛ラブストーリー!
※最初の5話は毎日18時に投稿、それ以降は毎週土曜日の18時に投稿する予定です
隠れ御曹司の愛に絡めとられて
海棠桔梗
恋愛
目が覚めたら、名前が何だったかさっぱり覚えていない男とベッドを共にしていた――
彼氏に浮気されて更になぜか自分の方が振られて「もう男なんていらない!」って思ってた矢先、強引に参加させられた合コンで出会った、やたら綺麗な顔の男。
古い雑居ビルの一室に住んでるくせに、持ってる腕時計は超高級品。
仕事は飲食店勤務――って、もしかしてホスト!?
チャラい男はお断り!
けれども彼の作る料理はどれも絶品で……
超大手商社 秘書課勤務
野村 亜矢(のむら あや)
29歳
特技:迷子
×
飲食店勤務(ホスト?)
名も知らぬ男
24歳
特技:家事?
「方向音痴・家事音痴の女」は「チャラいけれど家事は完璧な男」の愛に絡め取られて
もう逃げられない――
旦那様、ビジネスライクに行きましょう!〜下町育ちの伯爵夫人アナスタシアは自分の道を譲らない〜
腹ペコ鳩時計
恋愛
「これは政略結婚だ。君を愛するつもりはない」
どこぞの大衆娯楽小説で読んだ様な、オリジナリティの欠片も無い台詞から始まった結婚生活。
アナスタシアは傷付いてうつむ……かなかった。
「まぁ、ほぼほぼ想像通りの展開よね」
国有数の資産家である伯爵家の若き当主ユージーンと、下町育ちの公爵家の養女アナスタシアの、政略結婚から始まるちぐはぐストーリー。
育ちも価値観も違う2人に、徐々に絆は芽生えていく…のか!?
めげない、媚びない、容赦はしない!
雑草魂の伯爵夫人アナスタシア、ここに見参!!
※このお話は、小説家になろう、カクヨムでも公開しています。
表紙はAIイラストを使用しています。
【コミカライズ決定】地味令嬢は冤罪で処刑されて逆行転生したので、華麗な悪女を目指します!~目隠れ美形の天才王子に溺愛されまして~
胡蝶乃夢
恋愛
婚約者である王太子の望む通り『理想の淑女』として尽くしてきたにも関わらず、婚約破棄された挙句に冤罪で処刑されてしまった公爵令嬢ガーネット。
時間が遡り目覚めたガーネットは、二度と自分を犠牲にして尽くしたりしないと怒り、今度は自分勝手に生きる『華麗な悪女』になると決意する。
王太子の弟であるルベリウス王子にガーネットは留学をやめて傍にいて欲しいと願う。
処刑された時、留学中でいなかった彼がガーネットの傍にいることで運命は大きく変わっていく。
これは、不憫な地味令嬢が華麗な悪女へと変貌して周囲を魅了し、幼馴染の天才王子にも溺愛され、ざまぁして幸せになる物語です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる