上 下
11 / 104

お肉パーティ。

しおりを挟む
 帰りは行きより早かった。カイヤが大きい猫の姿になって森の入り口付近まで乗せていってくれたのだ。

 もふもふの黒い毛皮に埋もれる様にしがみついたあたしとティア。その気持ちよさからか今日は色々ありすぎて精神的に疲れていたのかティアはあたしの前でカイヤに抱きついたまま眠ってしまっていた。落ちない様にと支えてあげたけどまあね。今朝は早起きもしたんだろうししょうがないなぁ。

「ティア。おきて」

 森の入り口でほっぺたに触ってむにむにしてみる。

「んーん。もう朝?」

「ねぼけて無いの、ティア。そろそろ森を出るから起きて。カイヤのこの姿を街の人に晒したく無いの。魔獣扱いされたら嫌でしょう?」

「はうう。あたい寝ちゃってた? ごめんねあんまりにももふもふが気持ち良くて……」

 はっと飛び起きたティア。申し訳なさそうに手を合わせる。

「寝てたのはいいの。疲れちゃったんだと思うしね。それよりも、早く街に帰ってマニの実とケーブビードの魔石を換金しましょう? そのお金で今夜はパーティ記念のお食事会ね?」

「あは。そっか。楽しみ。でもいいの? 魔石売っちゃって」

「これ一個くらいならティアが偶然見つけた事にしてくれれば良いわ。洞窟の入り口に落ちてました、って。魔獣同士が争う事だってあるし稀に落ちてる魔石が見つかることはあり得るわ。それに、きっとティアが拾った事にしたら、そこまで追求されないから大丈夫よ」

「そういうもんかな?」

「そういうものよ」

 まああたしの場合無用な詮索をされたく無いだけだけどね。

 そうしてギルドであたしはマニの実を、ティアは魔石を換金した。

 マニの実は100ギル。魔石はなんと一万ギルで買取って貰えた。流石にカウンターでお金のやり取りをするのが憚られたのかマイアお姉さんティアを連れて奥に行って。
「奥の部屋なんて初めてで緊張しちゃった」
 って話すティア。
 他の冒険者の嫉妬や、横取りされる危険もあるからって絶対に内緒にしなさいって注意されたという。

 そりゃあそうだよね。こんな年端も行かない女の子が偶然にも一万ギルを手に入れたって知ったら、きっと良からぬ輩が近寄ってくるに違いないもの。

 実際あたしもこの子にそのまま一万ギルなんて大金を持たせておくのは危険だと思うしマニの実の分を半分、50ギルずつ山分けして一万ギルはあたしのレイスの収納に貯金しておくねということにした。

 それでも「あたしあんまりまだ役にたててないし」と遠慮するティアだったけど、そこはそれ。

 それと、途中で採った薬草はまだ数が少ないからもうちょっと貯めてから換金しようねって話したら、なんだか凄く納得された。

 そうやって収納に入れてるからいつも新鮮な薬草を大量にもってこれるんだ、って。

 ほんとは違うんだけどね。

 あたしは薬草を見つけたときにはいつもそこで聖魔法を使って成長を促進して、増殖させてから摘み取ってたの。

 まあズルだよね。

 でもまあそんな事を話して聖女だったってバレても困るし、それに、植物の成長促進とか並みの聖女でもなかなか出来ないらしいから。

 その辺はその辺で。話さなくてもいいことは話さないでいよう。そうも思うのだ。




 でもって。

 今夜も食事は山猫亭。

 美味しいお肉パーティー。

 巨大なイノ豚の魔物が狩られたらしく、街には今美味しいイノ豚のお肉が溢れているらしい。

 薄切りにしたお肉と野菜を塩胡椒で美味しく炒めたのとか、厚切りステーキを甘辛いソースで和えたのとか、いろんなお肉料理を頼んだあたしたち。

 あたしはビア、ティアはカシス水で乾杯して頂いた。

 もちろんカイヤにも美味しいお肉のローストを頼んだよ。

「ビアって苦くない?」

「あは。お子様舌のティアにはそうかもねー」

「もう、すぐそうやってお姉さんぶるんだから!」

「あはは」

 なんだかこういうのも楽しい、な。

 あたしは少しほろ酔いで。ティアとの食事を楽しんでいた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

アルゴノートのおんがえし

朝食ダンゴ
ファンタジー
『完結済!』【続編製作中!】  『アルゴノート』  そう呼ばれる者達が台頭し始めたのは、半世紀以上前のことである。  元来アルゴノートとは、自然や古代遺跡、ダンジョンと呼ばれる迷宮で採集や狩猟を行う者達の総称である。  彼らを侵略戦争の尖兵として登用したロードルシアは、その勢力を急速に拡大。  二度に渡る大侵略を経て、ロードルシアは大陸に覇を唱える一大帝国となった。  かつて英雄として名を馳せたアルゴノート。その名が持つ価値は、いつしか劣化の一途辿ることになる。  時は、記念すべき帝国歴五十年の佳節。  アルゴノートは、今や荒くれ者の代名詞と成り下がっていた。 『アルゴノート』の少年セスは、ひょんなことから貴族令嬢シルキィの護衛任務を引き受けることに。  典型的な貴族の例に漏れず大のアルゴノート嫌いであるシルキィはセスを邪険に扱うが、そんな彼女をセスは命懸けで守る決意をする。  シルキィのメイド、ティアを伴い帝都を目指す一行は、その道中で国家を巻き込んだ陰謀に巻き込まれてしまう。  セスとシルキィに秘められた過去。  歴史の闇に葬られた亡国の怨恨。  容赦なく襲いかかる戦火。  ーー苦難に立ち向かえ。生きることは、戦いだ。  それぞれの運命が絡み合う本格派ファンタジー開幕。  苦難のなかには生きる人にこそ読んで頂きたい一作。  ○表紙イラスト:119 様  ※本作は他サイトにも投稿しております。

【前編完結】50のおっさん 精霊の使い魔になったけど 死んで自分の子供に生まれ変わる!?

眼鏡の似合う女性の眼鏡が好きなんです
ファンタジー
リストラされ、再就職先を見つけた帰りに、迷子の子供たちを見つけたので声をかけた。  これが全ての始まりだった。 声をかけた子供たち。実は、覚醒する前の精霊の王と女王。  なぜか真名を教えられ、知らない内に精霊王と精霊女王の加護を受けてしまう。 加護を受けたせいで、精霊の使い魔《エレメンタルファミリア》と為った50のおっさんこと芳乃《よしの》。  平凡な表の人間社会から、国から最重要危険人物に認定されてしまう。 果たして、芳乃の運命は如何に?

そろそろ前世は忘れませんか。旦那様?

氷雨そら
恋愛
 結婚式で私のベールをめくった瞬間、旦那様は固まった。たぶん、旦那様は記憶を取り戻してしまったのだ。前世の私の名前を呼んでしまったのがその証拠。  そしておそらく旦那様は理解した。  私が前世にこっぴどく裏切った旦那様の幼馴染だってこと。  ――――でも、それだって理由はある。  前世、旦那様は15歳のあの日、魔力の才能を開花した。そして私が開花したのは、相手の魔力を奪う魔眼だった。  しかも、その魔眼を今世まで持ち越しで受け継いでしまっている。 「どれだけ俺を弄んだら気が済むの」とか「悪い女」という癖に、旦那様は私を離してくれない。  そして二人で眠った次の朝から、なぜかかつての幼馴染のように、冷酷だった旦那様は豹変した。私を溺愛する人間へと。  お願い旦那様。もう前世のことは忘れてください!  かつての幼馴染は、今度こそ絶対幸せになる。そんな幼馴染推しによる幼馴染推しのための物語。  小説家になろうにも掲載しています。

婚約破棄された令嬢が記憶を消され、それを望んだ王子は後悔することになりました

kieiku
恋愛
「では、記憶消去の魔法を執行します」 王子に婚約破棄された公爵令嬢は、王子妃教育の知識を消し去るため、10歳以降の記憶を奪われることになった。そして記憶を失い、退行した令嬢の言葉が王子を後悔に突き落とす。

【完結】聖女にはなりません。平凡に生きます!

暮田呉子
ファンタジー
この世界で、ただ平凡に、自由に、人生を謳歌したい! 政略結婚から三年──。夫に見向きもされず、屋敷の中で虐げられてきたマリアーナは夫の子を身籠ったという女性に水を掛けられて前世を思い出す。そうだ、前世は慎ましくも充実した人生を送った。それなら現世も平凡で幸せな人生を送ろう、と強く決意するのだった。

強制力がなくなった世界に残されたものは

りりん
ファンタジー
一人の令嬢が処刑によってこの世を去った 令嬢を虐げていた者達、処刑に狂喜乱舞した者達、そして最愛の娘であったはずの令嬢を冷たく切り捨てた家族達 世界の強制力が解けたその瞬間、その世界はどうなるのか その世界を狂わせたものは

【完結】もう…我慢しなくても良いですよね?

アノマロカリス
ファンタジー
マーテルリア・フローレンス公爵令嬢は、幼い頃から自国の第一王子との婚約が決まっていて幼少の頃から厳しい教育を施されていた。 泣き言は許されず、笑みを浮かべる事も許されず、お茶会にすら参加させて貰えずに常に完璧な淑女を求められて教育をされて来た。 16歳の成人の義を過ぎてから王子との婚約発表の場で、事あろうことか王子は聖女に選ばれたという男爵令嬢を連れて来て私との婚約を破棄して、男爵令嬢と婚約する事を選んだ。 マーテルリアの幼少からの血の滲むような努力は、一瞬で崩壊してしまった。 あぁ、今迄の苦労は一体なんの為に… もう…我慢しなくても良いですよね? この物語は、「虐げられる生活を曽祖母の秘術でざまぁして差し上げますわ!」の続編です。 前作の登場人物達も多数登場する予定です。 マーテルリアのイラストを変更致しました。

神のいとし子は追放された私でした〜異母妹を選んだ王太子様、今のお気持ちは如何ですか?〜

星井柚乃(旧名:星里有乃)
恋愛
「アメリアお姉様は、私達の幸せを考えて、自ら身を引いてくださいました」 「オレは……王太子としてではなく、一人の男としてアメリアの妹、聖女レティアへの真実の愛に目覚めたのだ!」 (レティアったら、何を血迷っているの……だって貴女本当は、霊感なんてこれっぽっちも無いじゃない!)  美貌の聖女レティアとは対照的に、とにかく目立たない姉のアメリア。しかし、地味に装っているアメリアこそが、この国の神のいとし子なのだが、悪魔と契約した妹レティアはついに姉を追放してしまう。  やがて、神のいとし子の祈りが届かなくなった国は災いが増え、聖女の力を隠さなくなったアメリアに救いの手を求めるが……。 * 2023年01月15日、連載完結しました。 * ヒロインアメリアの相手役が第1章は精霊ラルド、第2章からは隣国の王子アッシュに切り替わります。最終章に該当する黄昏の章で、それぞれの関係性を決着させています。お読みくださった読者様、ありがとうございました! * 初期投稿ではショートショート作品の予定で始まった本作ですが、途中から長編版に路線を変更して完結させました。 * この作品は小説家になろうさんとアルファポリスさんに投稿しております。 * ブクマ、感想、ありがとうございます。

処理中です...