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レヴィアさん。

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 《あらあら、驚かせちゃったかしら》

 天から響くようなそんな声。女性の声?

 あたしは驚きのあまり口元に両手を当て、ちょっと惚けた顔でその龍を見上げてた。水が滴るその龍の首はそれ以上浮上したりはせずにこちらを見ている。

 《貴女にお礼を言おうと思っただけなのだけど。あ、そうだわ》

 そう声が聞こえたかと思ったら、その龍が紅い光に包まれた。

 そして。

 湖畔にエメラルドグリーンの髪をたゆたゆとなびかせた女性。

 たぶんその龍が変化したのだろうそんな雰囲気を纏った女性の姿になって。

「この方がお話もしやすいですよね」

 そう優しく微笑んだのだった。




「身体が毒にやられてしまってもうどうしようって思って泣いてたの。思ったように飛べないし動けないしで」

 はう。こんなに強そうな龍の人でもそういう風になるのね。

「ああ、自己紹介もまだでしたね。わたし、龍神族のレヴィアと申しますわ。ほんとうにありがとうございます。でもまさか、人間にわたしを癒すことができるだけの治癒が使えるなんて驚きです。あなたのお名前は?」

「あたしはレティーナって言います。えっと、聖女をやってたのですけどクビになって……」

「まあ、あなたほどの力をもった方を辞めさせるなんて、人間はなんて浅はかな……、ああ、ごめんなさいね貴女も人間ですものね。気分を害したらごめんなさい」

「いえ、いいんです……」

 あう。思い出すとほんと悲しくなる。あんな場所でもあたしにとっては大聖女さまとの思い出の残る我が家だったのだなって今更ながら思い返して。

 嫌われて、要らないと思われることがこんなにも情けなくて悲しいだなんて。今まで考えもしなかった。

「泣かないでレティーナ。貴女はわたしの恩人です。できれば力になってあげたいんだけどどうしたらいいかしら……」

 レヴィアさん、右手をほおにあて頭をかしげ。

「ああそうだ。ねえねえレティーナ、貴女にこれをあげるわ。龍玉のブレスレットなの」

 そう言って彼女、銀色の腕輪をあたしにくれた。エメラルドグリーンの宝石がはまった腕輪。これが龍玉?

「ドラゴンオプスニルっていう魔具なのですけど、これがあれば貴女にわたしの力をわけてあげることができるわ」

「そんな。大事なものじゃないのですか? こんな綺麗な宝石頂けません……」

「いいからいいから。ねえ、右の腕にはめてみて?」

 そう言ってレヴィアさん、なかば強引にあたしの腕をとるとそこにその銀色の腕輪をはめて。

「ほら、良い感じよ」

 そうウインク。

 あれ? はらっと視界に映るあたしの髪、緑っぽくなった?

「おい! お前! レティーナに何をした!」

 はうカイヤ。どうしたの!?

 それまで大人しく猫してたカイヤがいきなり大声を出して。

「どうしたのカイヤ?」

「どうしたもこうしたも! レティーナ、君今自分がどんな姿になってるかわかってる?」

 え? どういうこと?

「金髪だった髪はエメラルドグリーンに変わり、瞳の色だって綺麗な碧だったのに、今は琥珀色になってる! まるで……、そう、そいつ、龍神族みたいになってるよ!」

 えー?

 あたしは肩にかかる髪を手ですくい……、ああ、確かにこれはエメラルドグリーンだよ、ね?

「そのドラゴンオプスニルに登録されたわたしのマトリクスが表面に被さってるせいですけど、何か問題が?」

「何が、何か問題が、だ。こうして姿が変わったじゃないか!」

「まあまあ、かわいいナイトさんですね。そう、姿が少し変わったのと身体能力が龍神族並みに引き上げられただけですよ? 人の身体はひ弱ですからね。せめてものお礼なのですよ」

「代償は無いのか? 何も?」

「ええ。そういった心配はいりませんわ。外せば元に戻りますし。それに、もし危険な事がおきてどうしようもなくなった時は、その龍玉を通じてわたしに呼びかけて下さい。力になれるかもしれません」

「なら良いが……。悪かったな怒鳴って……」

「良いのですよかわいいナイトさん。あなたにもこれをあげましょうね」

 レヴィアさん、カイヤの首元を撫でるとそこに現れたかわいい白のリボン。胸元にはシズクのような形状の石が揺れていた。

「はう。カイヤかわいい」

 やっぱりエメラルドグリーンに輝くそのシズク、首元のリボンからゆらゆら揺れて。

「あなた、聖獣なのね。そのシズク石にはわたしの力を込めてあります。いざとなった時はその力でレティーナを守ってあげてね」

「ふん! 言われるまでも無い。まあ、でも、助かる。ありがとうな」



「じゃぁね、また会いましょう」そう言って。月明かりを背に空に飛び立ったレヴィア。

 空中で龍の姿に戻りそのまま北の方へと飛んでいった。


 龍神族が住むノーザランドは遙か北にあるというけれど……。

 どんなところなんだろうな?

 いつか行ってみたいな。そんな事を思いながら、あたしは月夜に飛ぶ龍の姿をいつまでも眺めていた。
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