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魔力紋。

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 ひゃぁ!

 って、何?

 あたし今プロポーズされた?

 っていうかこの人、かなりストレートに来たよね。甘い言葉とかかなぐり捨てて実利の話しかしなかった?

 うんと、要約すると。

 ・コンダーは小国でうちの国の家柄の力、結びつきが欲しい。

 ・あたしの魔力量が多そうだから目をつけた。他に取られる前に手をつけておきたい。

 ・平民の血とか気にしないし幸せにするよう努力するからどう?

 ってこんな話。

 ほれたのはれたの恋だの愛だのなんかはすっ飛ばしてるけどまあ王族の婚姻なんか実利目当てがほとんどなんだろうしそれは覚悟はしてたけどちょっとまだ嫌かな。



「わたくし、まだ婚姻のこととか考えられなくて……」

 そう俯き加減に話す。

「まあそうでしょうね。でも、まだ時間はあります。貴女が十五になるまで、私は何度もこの国に通いますよ」

 そう破顔するアルル殿下。

 はうあう。諦めてくれる気はなさそうな顔だ……。



 この人が全部本音で話してることは視える色でもよくわかる。

 嘘の色は見えない。

 まあ好きだって想われてるような色も見えないけど。

 そこはそれ。悪意がないだけ好感は持てるかな。

 でも。

 ふつうに恋愛するのとかは諦めてたけどそれでもやっぱりまだ考えられない。

 そんなこんなで真っ赤になったまま俯いてるとセバスがねえさまたちを連れて薔薇園にやってきた。

 一通り殿下と挨拶してそのまま迎賓館に移動したのだった。


 お茶会の場では当たり障りのない会話ばかりでちょっと拍子抜け。

 アルル王太子もさっきみたいにあたしにアタックしてくるわけでも無い。

 ねえさま方とお天気の話とかお菓子の話とか、兄様たちと政治がらみの話とか、主に魔王討伐戦争の話とか、そんな話だけ。

 でもね?

 もしさっきの邂逅がセバスに計られたのだったとしたらちょっとふにゃぁ。

 王宮サイドはあたしがコンダーに輿入れするのを望んでるとも取れる。

 本当にそうなら逃げるのは難しい? ああ、どうしよう。

 アルル様が悪い人じゃ無いのはわかるよ。でも。まだちょっとふにゃぁ。


 そういえば魔力紋って言ってたっけアルル様。

 人に固有な魔力紋有り。っていうのは魔法の勉強をはじめてすぐに習った言葉。

 人を人たらしめるもの、魂の奥底にはこの世界空間に繋がるゲートがある。

 真那マナで満たされた人の魂はレイスといい、そのレイスのゲートから真那マナを放出、変換し、この世界に干渉する何かを起こす事、それを魔法と呼んでいる。
 要するにマナを力に変換して仕事をすることその方法そのものが魔法。マナを変換したエネルギーそのものを魔力と呼んでるわけ。
 その変換された魔力には個々人特有の波紋があるらしい。指紋みたいにその人を特定できるとも聞いた。

 ただしその魔力紋を判別する機械、技術は大昔に廃れ、今では残された真具を残すのみ。

 アルル王太子の言う事が本当なら、ほんと貴重な特殊な技能のはずだ。魔力紋を視る、だなんて。

 それに。

 そんな魔力紋からその人の潜在魔力量が測れるとか、聞いたことないけど。

 ね?

 あたしがこの国随一の魔力量だなんてそんな冗談みたいなことも、素直には信じられなかったりだよ。
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