聖女追放。

友坂 悠

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魔王石。

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 一つ心配なのはマキナのこと。

 この町に来てからと言うものマキナはあたしの心配ばかりして自分のしたいことやりたいことそういったことを見つけられずにいる?
 もう半分あたしのボディガードな感じで常に周囲に気を配ってくれているんだけど、それではね。

「ねえマキナ、あなたも何かお仕事とか探してみる?」
 あたしはそうやんわり話してみたんだけど、
「ああ、もうちょっとしたら考えてみるよ」
 ってそう言うだけで。

 うん。
 どうしよっかな。
 このままじゃあまりマキナの精神衛生上良くない気がする。
 あたしに依存しすぎてる?
 彼の生活の全てがあたしを中心に回ってるみたいで。

 そりゃあ、ここに連れてきたのはあたしだ。
 あの村にいてはマキナはがダメになっちゃう。
 そう思ってのはずだった。
 だけど。

 あたしを好きでいてくれるのも嬉しいし、あたしのことを心配してくれるのもまあしょうがないかも知れないんだけど。
 このままだと万一あたしに危険が及んだりした時に彼の心が真っ赤になってしまうかもと思うと本末転倒になってしまう。

 彼の心の奥底にある魔王石。
 元々魔というものは人の感情によってその力を増す。
 初代の魔王はその自らの欲望に飲まれた。
 肥大化した欲望によって真っ赤に燃えた魔王石は、その初代魔王自身の肉体をも取り込み人ならざるものへと変質し。
 そして魔王という概念へと変化したのだった。

 精神生命体でもあった魔王はあたしにも完全に滅ぼす事はできなかった。
 なんとかその本体を封じ、聖都の聖丘の地下深くに封印することに成功したけれど……。
 それでも。

 魔王はその後500年周期で人の体を持って復活する。
 今にして思えばそれにもデウスの思惑が絡んでいたのだろう。
 大霊グレートレイスによらず転生する魔王という存在に、あたしも引きずられるように転生を重ねていった。
 いつの時代もそれは魔王対人という戦いの果てに、あたしはその都度魔王を封じてきた。
 デウスはそれも必要悪だとしていたのか?
 魔王が居ない日々は人の世を淀みの池に沈めるようにも見え。
 その都度あたしは絶望していたものだった。

 でも。

 今度こそ、なんとかしたい。

 こんな不毛な輪廻は断ち切って、魔王に頼らない世の中にしたい。

 それに。

 こんなにも綺麗な心を持っているマキナをみすみす魔王にしてしまいたくはない。

 あたしのわがまま?

 ううん、だって。

 マキナはこんなにも純粋なんだもの。



 今までの魔王とはその魔王がまだ人の心を持っている状態で出会ったことがなかったから。
 だから余計にそう思うのかも知れないけれど。

 このマキナを人の心の淀みを払うための犠牲にしたくはない。
 絶対に、だめ。

 そのためには……。

 そうだ!

 勇者だよ!

 マキナには勇者をやって貰えばいいんだよ!
 そうすればきっと。
 うん。きっと。
 この子にはその力があるんだから!
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