12 / 24
すぎる欲は人を魔に変える。
しおりを挟む
この間の作業場のおじさんたちを助けたことであたしを訪ねて診療所にくる人が増えた。
ドクには具体的に何をしたのかってしっかり報告をしたわけじゃ無かったけど、それでも察してくれてるっていうのかな?
「はは。マリカは好きにしてくれればいいさ」
ってそう笑って自由にさせてくれている。
回復魔法が使えることくらいはちゃんと話したほうが良いのかなって思ったりもしたけど、彼はなんていうんだろう、きっとあたしの聖魔法をあてにしてこうして診療所に住まわせてくれているわけでもなさそう。
もしかしたらあたしのこと本当は知っててこうしてお世話してくれるのかな?
もしかしたら聖都で顔見られたことでもあったのかな?
そんな気もしないでもないけれどまあこれは口に出さないほうが良いかもで。
うん。
できればドクには何も知らなかったことにしておいてもらいたい。
聖都から離れた属州とはいえ万一にも総督の耳にあたしの事が伝わらないとも限らない。
追放された聖女の肩書きなんて、知らないでいて貰ったほうがドクのためにもいい。
こんな小さな診療所だけど、ううん、小さな診療所だからこそ。
お偉いさんに目をつけられて理不尽な目に遭うなんて事があったら大変だ。
聞こえてくるのは聖女認定の儀の噂。
こんなところにまで聞こえてくるっていうことは、もう大々的に宣伝をしているんだろう。
シルビアン・マクレーは自分の手で聖女をつくりたいのだろうな。それはわかる。でも。
力を持たない傀儡聖女ではあまり役には立たないかもで。
少しでも素質のある人間を探し出したいのだろうな。
でも。
今のこの世界には加護を持つものが少ない。
本来であれば癒しの加護くらいであれば街の医者の数くらいは居たはずなのだ。
人の心がもう少しクリアであれば、デウスだって加護を与えるのを躊躇ったりはしなかったろうに。
人の魂が内包する魔力量、マナの量はその器の大きさに比例する。
人の体の大きさではなく、心の中の、魂の大きさだ。
この通常空間に存在する物質としての体にはこの空間ではない存在としての魂が付属している。
生命が生まれた瞬間にその生命を保つマナとして大霊より分離した魂はその健全な肉体に宿るのだ。
人がその自分自身として感じているアイデンティティーとしての肉体には本来の自分自身である魂が必ず存在する。
そうしてその魂のゲートからマナを放出し、通常の空間の理に干渉し仕事をすることを魔法、そのエネルギーのことを魔力、そしてそのマナをマギ力に変換しマギアを行使するための触媒が精霊であり、その精霊との親和性が魔力特性値という加護になる。
当然加護のあるなしで同じマナの量、同じ魔力量でも使用できうる魔法の強さは変化する。
いくら同じ魔術(魔法構築式)を使ったとしても引き出せる権能は違うということだ。
人の世が堕落しその欲に執着するようになった時。
神は人々にその加護を与えるのを辞めた。
欲望の増大によって魂が肥大しマナが魔と呼ばれるまでに圧縮され濃度を増し、そうして第二第三の魔王が誕生してしまうことを懸念したというのもあったけれど、
それ以上に人にはコントロール不能なその魔が世界に溢れ多くの人間が魔人へと変化してしまうのを嫌ったのだった。
すぎる欲は人を魔に変える。
そして。
魔人となった人は人であった心を殺してしまう。
そのことに嘆いた神は、そうならないためにあたしをこの世界に使した。
あたしがそれを果たせないのであれば魔王による恐怖を。
それでもダメなら。
この世界そのものを消失させてしまう。
そう神はおっしゃったのだ。
ドクには具体的に何をしたのかってしっかり報告をしたわけじゃ無かったけど、それでも察してくれてるっていうのかな?
「はは。マリカは好きにしてくれればいいさ」
ってそう笑って自由にさせてくれている。
回復魔法が使えることくらいはちゃんと話したほうが良いのかなって思ったりもしたけど、彼はなんていうんだろう、きっとあたしの聖魔法をあてにしてこうして診療所に住まわせてくれているわけでもなさそう。
もしかしたらあたしのこと本当は知っててこうしてお世話してくれるのかな?
もしかしたら聖都で顔見られたことでもあったのかな?
そんな気もしないでもないけれどまあこれは口に出さないほうが良いかもで。
うん。
できればドクには何も知らなかったことにしておいてもらいたい。
聖都から離れた属州とはいえ万一にも総督の耳にあたしの事が伝わらないとも限らない。
追放された聖女の肩書きなんて、知らないでいて貰ったほうがドクのためにもいい。
こんな小さな診療所だけど、ううん、小さな診療所だからこそ。
お偉いさんに目をつけられて理不尽な目に遭うなんて事があったら大変だ。
聞こえてくるのは聖女認定の儀の噂。
こんなところにまで聞こえてくるっていうことは、もう大々的に宣伝をしているんだろう。
シルビアン・マクレーは自分の手で聖女をつくりたいのだろうな。それはわかる。でも。
力を持たない傀儡聖女ではあまり役には立たないかもで。
少しでも素質のある人間を探し出したいのだろうな。
でも。
今のこの世界には加護を持つものが少ない。
本来であれば癒しの加護くらいであれば街の医者の数くらいは居たはずなのだ。
人の心がもう少しクリアであれば、デウスだって加護を与えるのを躊躇ったりはしなかったろうに。
人の魂が内包する魔力量、マナの量はその器の大きさに比例する。
人の体の大きさではなく、心の中の、魂の大きさだ。
この通常空間に存在する物質としての体にはこの空間ではない存在としての魂が付属している。
生命が生まれた瞬間にその生命を保つマナとして大霊より分離した魂はその健全な肉体に宿るのだ。
人がその自分自身として感じているアイデンティティーとしての肉体には本来の自分自身である魂が必ず存在する。
そうしてその魂のゲートからマナを放出し、通常の空間の理に干渉し仕事をすることを魔法、そのエネルギーのことを魔力、そしてそのマナをマギ力に変換しマギアを行使するための触媒が精霊であり、その精霊との親和性が魔力特性値という加護になる。
当然加護のあるなしで同じマナの量、同じ魔力量でも使用できうる魔法の強さは変化する。
いくら同じ魔術(魔法構築式)を使ったとしても引き出せる権能は違うということだ。
人の世が堕落しその欲に執着するようになった時。
神は人々にその加護を与えるのを辞めた。
欲望の増大によって魂が肥大しマナが魔と呼ばれるまでに圧縮され濃度を増し、そうして第二第三の魔王が誕生してしまうことを懸念したというのもあったけれど、
それ以上に人にはコントロール不能なその魔が世界に溢れ多くの人間が魔人へと変化してしまうのを嫌ったのだった。
すぎる欲は人を魔に変える。
そして。
魔人となった人は人であった心を殺してしまう。
そのことに嘆いた神は、そうならないためにあたしをこの世界に使した。
あたしがそれを果たせないのであれば魔王による恐怖を。
それでもダメなら。
この世界そのものを消失させてしまう。
そう神はおっしゃったのだ。
0
お気に入りに追加
77
あなたにおすすめの小説
アルゴノートのおんがえし
朝食ダンゴ
ファンタジー
『完結済!』【続編製作中!】
『アルゴノート』
そう呼ばれる者達が台頭し始めたのは、半世紀以上前のことである。
元来アルゴノートとは、自然や古代遺跡、ダンジョンと呼ばれる迷宮で採集や狩猟を行う者達の総称である。
彼らを侵略戦争の尖兵として登用したロードルシアは、その勢力を急速に拡大。
二度に渡る大侵略を経て、ロードルシアは大陸に覇を唱える一大帝国となった。
かつて英雄として名を馳せたアルゴノート。その名が持つ価値は、いつしか劣化の一途辿ることになる。
時は、記念すべき帝国歴五十年の佳節。
アルゴノートは、今や荒くれ者の代名詞と成り下がっていた。
『アルゴノート』の少年セスは、ひょんなことから貴族令嬢シルキィの護衛任務を引き受けることに。
典型的な貴族の例に漏れず大のアルゴノート嫌いであるシルキィはセスを邪険に扱うが、そんな彼女をセスは命懸けで守る決意をする。
シルキィのメイド、ティアを伴い帝都を目指す一行は、その道中で国家を巻き込んだ陰謀に巻き込まれてしまう。
セスとシルキィに秘められた過去。
歴史の闇に葬られた亡国の怨恨。
容赦なく襲いかかる戦火。
ーー苦難に立ち向かえ。生きることは、戦いだ。
それぞれの運命が絡み合う本格派ファンタジー開幕。
苦難のなかには生きる人にこそ読んで頂きたい一作。
○表紙イラスト:119 様
※本作は他サイトにも投稿しております。
僕のおつかい
麻竹
ファンタジー
魔女が世界を統べる世界。
東の大地ウェストブレイ。赤の魔女のお膝元であるこの森に、足早に森を抜けようとする一人の少年の姿があった。
少年の名はマクレーンといって黒い髪に黒い瞳、腰まである髪を後ろで一つに束ねた少年は、真っ赤なマントのフードを目深に被り、明るいこの森を早く抜けようと必死だった。
彼は、母親から頼まれた『おつかい』を無事にやり遂げるべく、今まさに旅に出たばかりであった。
そして、その旅の途中で森で倒れていた人を助けたのだが・・・・・・。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
※一話約1000文字前後に修正しました。
他サイト様にも投稿しています。
猫ばっかり構ってるからと宮廷を追放された聖女のあたし。戻ってきてと言われてももう遅いのです。守護結界用の魔力はもう別のところで使ってます!
友坂 悠
ファンタジー
あたし、レティーナ。
聖女だけど何もお仕事してないって追放されました。。
ほんとはすっごく大事なお仕事してたのに。
孤児だったあたしは大聖女サンドラ様に拾われ聖女として育てられました。そして特別な能力があったあたしは聖獣カイヤの中に眠る魔法結晶に祈りを捧げることでこの国の聖都全体を覆う結界をはっていたのです。
でも、その大聖女様がお亡くなりになった時、あたしは王宮の中にあった聖女宮から追い出されることになったのです。
住むところもなく身寄りもないあたしはなんとか街で雇ってもらおうとしますが、そこにも意地悪な聖女長さま達の手が伸びて居ました。
聖都に居場所の無くなったあたしはカイヤを連れて森を彷徨うのでした……。
そこで出会った龍神族のレヴィアさん。
彼女から貰った魔ギア、ドラゴンオプスニルと龍のシズクを得たレティーナは、最強の能力を発揮する!
追放された聖女の冒険物語の開幕デス!
どーも、反逆のオッサンです
わか
ファンタジー
簡単なあらすじ オッサン異世界転移する。 少し詳しいあらすじ 異世界転移したオッサン...能力はスマホ。森の中に転移したオッサンがスマホを駆使して普通の生活に向けひたむきに行動するお話。 この小説は、小説家になろう様、カクヨム様にて同時投稿しております。
捨てられたお姫様
みるみる
ファンタジー
ナステカ王国に双子のお姫様が産まれたました。
ところが、悪い魔女が双子のお姫様のうちの一人に、「死ぬまで自分やまわりの人が不幸になる‥」という呪いをかけてしまったのです。
呪いのせいか、国に次々と災いが降りかかり、とうとう王妃様まで病に伏してしまいました。
王様と国の重鎮達は、呪われたお姫様を殺そうとしますが‥‥‥。
自分が実はお姫様なのだという事や、悪い魔女の呪いを受けている事を知らない、捨て子のリナと、
不器用で落ちこぼれながらも、正義感が強い魔法使いの男が、共に試練を乗り越えて成長していくお話です。
元四天王は貧乏令嬢の使用人 ~冤罪で国から追放された魔王軍四天王。貧乏貴族の令嬢に拾われ、使用人として働きます~
大豆茶
ファンタジー
『魔族』と『人間族』の国で二分された世界。
魔族を統べる王である魔王直属の配下である『魔王軍四天王』の一人である主人公アースは、ある事情から配下を持たずに活動しいていた。
しかし、そんなアースを疎ましく思った他の四天王から、魔王の死を切っ掛けに罪を被せられ殺されかけてしまう。
満身創痍のアースを救ったのは、人間族である辺境の地の貧乏貴族令嬢エレミア・リーフェルニアだった。
魔族領に戻っても命を狙われるだけ。
そう判断したアースは、身分を隠しリーフェルニア家で使用人として働くことに。
日々を過ごす中、アースの活躍と共にリーフェルニア領は目まぐるしい発展を遂げていくこととなる。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる