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婚約破棄されたので、意中の人を落とすことにします

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 「俺は真実の愛を見つけたっ!セレスティーヌ、お前との婚約は破棄させてもらう!!俺はマリッサと結婚する!!」

 国王の誕生日を祝うパーティには他国の王族や大勢の貴族達が集まり盛況だった。
 王城の大広間で公爵家嫡男であるリオンはセレスティーヌに向かって言い放ったのだ。

 「リオン様……ほ、本気で仰っていらっしゃいますの?」
 「ああ!本気だ!俺は真実の愛に目覚めたんだっ……これ以上セレスティーヌとのおままごとのような生活はごめんだ!」
 「おままごと……」
 「俺は一緒に居るだけで幸せな気持ちにさせてくれるマリッサと一緒になる!身分など関係ないっ!」
 「そうですか……覚悟がおありなのですね?」

 リオン様が場違いな方を連れていると思えばそういうことでしたか…… 

 「ああ、もちろんだ!行こうマリッサ」
 「は、はい」

 そう言い放つと2人は手に手を取り合いパーティー会場から走り去って行った。
 あの2人こそおままごとのようですけど……本人たちは真剣なのでしょう。せっかくのドレスが無駄になってしまいましたね……さて、これからどうしましょう。

 「はぁ……皆さまそういうことだそうですよ?わたくし、気分が悪いので失礼します」

 当事者がいなくなった大広間は大混乱となり事態を収めようと王族や一部の貴族達は一晩中奔走する事となった。しかし、国王の誕生日を祝うパーティには他国の王族、貴族の前での騒動だったため、あっという間に噂は広がっていく。

 元はといえば周囲の勧めにより整った婚約だったが……勧めた人物たちはリオンがこんなに考えなしだとは思っていなかっただろう。
 リオンは金髪碧眼の甘い顔立ちでブルネットの髪に茶色の瞳という地味なセレスティーヌをカバーしようとの狙いもあった。
 少しおめでたい性格だったが、セレスティーヌは真面目すぎるところがあるのでお互いに補い合えると思っていた。
 なんだかんだとセレスティーヌとリオンはカップルだと微笑ましく見られていたはずだった。昨日までは。
 不幸のどん底にいると思われたセレスティーヌでしたが……

   「まあ、しかたありません。これで、わたくしが誰を選んでも文句は言わせませんわっ!だって、皆さまが認めた婚約者がアレですから……ふっふっふっ……早速、根回しせませんとね」

   お父様の部屋を訪ね……あら、お父様すっかり疲れ切っていますね。

 「さて、お父様……わたくしも好きにして良いですわね?」
 「し、しかしなぁ……」
 「あら?お父様や周囲が認めたリオン様があのザマですのよ?」
 「そうね……わたくしはセレスティーヌの味方ですわ」
 「お母様……」
 「だってわたくしの娘よりあんなどこの馬の骨かわからないような小娘を選ぶ男なんて……あり得ませんわ」
 「そうですよね……それにしてもなぜ、自身の方から婚約破棄できると思ったのでしょう?」
 「セレスティーヌ……リオンは昨日騒動を起こした時点で廃嫡され追い出したそうだ」
 「そうですか……まぁ、当然ですわね。でなければ公爵家に害が及びますもの。いくら息子が可愛くても廃嫡以外選択肢はございませんわ」
 「ああ、だが公爵もあの姿を見ていたからな……リオンの行動に怒り心頭で後継は幼い次男にするそうだ」
 「そうですか。お父様、わたくし……結婚したい方がいますの。もちろんお父様がどうにかしてくださいますよね?そうでなければわたくし王位を継ぎませんから」
 「なっ!後継者はセレスティーヌしかいないのだぞっ!セレスティーヌが王位を継がなければまた争いになるではないかっ」
 「ですからお父様が責任を持って縁談をまとめてくださいまし。そうすればわたくしもいずれ女王として君臨することでしょう」

 相手を聞き、国王と王妃、宰相や大臣は揃って頭を抱えたという。
 決して爵位が問題ではない。むしろ公爵家嫡男である。全く問題ない。ただ父親である宰相ですらせめて次男の方ならよかったのにと頭を抱えるのだった……

 「あの場に息子がいなくて本当によかった……あの場にいればリオン様はただではすまなかっただろう」
 「いや、あの正義感は大したものだが……顔がな……」
 「ああ、きっとリオンは恐怖で漏らしただろうな……」

 公爵家嫡男であり若くして騎士団長を務めていながら国王のパーティに顔を出すなと命令が下った男……決して邪険にされているとかそういうことではない。顔が怖すぎて他の国の貴族が怖がるから仕方なく裏方に回されたのだった。

 度重なる国王や宰相からの説得にも応じず、噂の的になり続けたセレスティーヌは縁談が遅々として進まないことに苛立っていた。
 セレスティーヌは真面目で面白みがないと思われているが実際は真面目なんてものではない。どう立ち回れば自分の優位に進むか考え行動してるだけなのだ。もちろんリオンが庶民に夢中になっていたことも知っていた……想定外といえばパーティで騒ぎにしたことぐらいだろう。ひっそり婚約を解消するつもりだったのに……

 だから、ある日決行した。事前に破いておいたドレスを木に引っかけ足が丸見えになるようセットします。ドレスはもちろん婚約破棄された時のものですわ。これを着て歩けば笑い者確実なので処分する前に大仕事を任せました。
 もちろん、ジーク以外が通りかかることのないよう侍女たちに協力してもらいました。止められるかと思いきや意外にもノリノリでしたわ。さすがわたくしの侍女ですわね。
 ジークが通りかかるタイミングを見計らって……

 「きゃっ」
 「王女様、どうなさったのですっ!」
 「風でめくれたドレスの裾がひっかかってしまったのです」

 この国では女性はむやみに足を見せてはいけないという風習があります。それを逆手に取ることにしたのです。

 「今外しますからっ」
 「こんなところを見られてしまってはわたくしもう結婚は絶望的ですわ……」
 「そんなことは……」
 「では、婚約破棄された上にこんなところを見られてしまったわたくしと結婚してくださる人がいるとでも?」
 「必ずいらっしゃいます!」
 「そう……もし見つからなかったら、ジークが責任とってくださる?」
 「はい、もちろん……はい?」
 「よかったわ!これでわたくしも結婚できますのね!早速お父様に報告しなければっ」
 「王女様っ!」
 
 もちろん、ジーク以外に相手など見つかるわけがない。そう根回ししたのだから。
 正義感の塊であるジークはアレよアレよと丸め込まれいつのまにか王女の夫の座につくこととなる。
 
 その後……女王として君臨した彼女の横には筋肉隆々、強面過ぎて金髪碧眼が全く意味をなしていないと恐れられた騎士団長がおり仲睦まじく暮らしましたとさ。


 ちなみに、公爵家から着の身着のまま追い出されたリオンは玉の輿だと喜んでいた庶民の娘の元に転がり込むこととなる。
 マリッサは王女の婚約者だとは知らず、ただ貴族に気に入られたと思っていたが……噂により真実を知りいつ自分が捕まるかと不安な日々を過ごすことになる。
 そんなふたりの恋愛が長く続くわけがないのは明白であった……セレスティーヌが聞けばこういうだろう。「まぁ!実に薄っぺらい真実の愛だこと」と……






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