23 / 29
第2章
23 魔法陣の変化
しおりを挟む「お、こわもておにーさんだ」
あの大きさ、オーラ!他のひとに避けられてる……間違いない!
「そ、そうだね」
「まうしろに行きたいな」
「……ほ、本当にわ、渡すつもりなの?」
「うん!だって、自分でこしみのよういするくらいだよ!アレもみほんがあればつくれるってー」
「そ、そうかなぁ?」
必死に足を動かし追い付こうとするも、歩幅が違うのでなかなか追い付けない……あ、こっちに気づいた!ゆっくり歩くようになってくれたので頑張れば追い付けそうだ!
「フランカお姉ちゃん!わたし、またあほな子のフリするから!フリだからね!しんぱいいらないから」
「わ、わかったわ!」
フランカお姉ちゃんの返事を聞き……へラっと笑いながら列に並ぶ。ちょうど強面おにーさんの真後ろだ。ふふ!狙いどおりだ!
毎回、会える訳じゃないので、会えたときのために用意してきたものがある。それは……わらじだ!思ったより早く会えたので片足分しかないけど……
時々、ボーッとしたり虚空を見つめ、ヘラっと笑いながら強面おにーさんの大きな背に隠れるように……様子のおかしな子がたまたまぶつかった風を装い、腰にわらじの片方をぶら下げる。
ごそごそ……よし、うまくできた!
ゆっくり後ろを振り返った強面おにーさんにアイコンタクトでぶら下げたことを伝えたらコクリと頷いたので大丈夫だと思う。
ふぅ、ミッション完了だ。
帰り道……
「ね、ねぇ。メリッサちゃん……どうしてあのひとにわらじを渡すことにしたの?」
「うーん……わたしたちのこと気にかけてくれそうだから?」
「そ、そっか」
実はわたしにも思惑はある……あの強面おにーさん……あれだけの魔力量だ。味方に付けておきたい。それに、お祈りのことだって伝えたら魔石班に広がるかもしれない……ってね。
まぁ、1番はわたしたちのことを避けずに接してくれるからかな?ほとんどのひとは自分の末路かもしれないと同情の視線は向けても関わろうとはしないから……
◇ ◇ ◇
次に強面おにーさんを見かけたときは不格好ながらわらじを両足にはいてた……見本だけでわらじが作れるとかすごい器用だ。
それからは見かけるたび、強面おにーさんの後ろにならび……食べられる雑草を差し入れしたり、ポーション草のかけらをあげたりした。
こちらを見たときには雑草をモグモグして見せたので通じてると思う。
強面おにーさんと遭遇するたび、フランカお姉ちゃんがプルプルしてるけど、きっと、そのうち慣れてくれるはず……現に後ろに並ぶときはわたしが見張りから見えないように移動してくれてるし。あほの子のふりにも慣れてくれたみたいで、わたしがヘラっと笑ったイコール強面おにーさんが近くにいるって思うようになったけど。
魔石班はご飯にそこまで困ってないと気づいたのは部屋にもどってからだった。
雑草とか別に食べる必要なかったんじゃ……
貴重なポーション草まで分けてあげたのに……ポーション草だって伝えられてないから雑草とひとくくりに考えるかも……ま、やってしまったものはしかたないかぁ。
強面おにーさんは……あまり、表情筋がうごかないけど……ハワードに話しかけるより、反応があるのでまだ、わかりやすい。
あれから……ハワードはわたしが甘い汁を取りに行くと言う時だけ器を持ってついてくるようになった……
ハワードのつけた傷からもきちんと樹液はとることができたので、ハワード専用になっている。きっと、前世とは違うファンタジーな樹なんだと思って扱うことにした。
ハワードに器で集める方法を教えたら、自分の分を採取できるようになった!
「ハワードが覚えないとあそこのはとれないよー」って言ったらものすごい目でこちらを見てきたので……「だって、わたしとどかないもん」と言うと教えたとおりに動いてくれた。
え?みんなの分は手伝ってはくれないよ?自分の分をとったらわたしか声かけるまで味わってるから……それに、この樹のそばってなんか落ち着くんだよね。樹に洞とかあったら、絶対秘密基地にしてたはず。
それ以外では反応があまりないけど……大きな1歩を踏み出したのだ。いつか、話をできる日が来るかもしれないってみんな期待している。
そして、あの甘い汁……樹液ね。ポーション草と混ぜるとポーションもどきがちょっとましになって飲みやすくなる上、効果もほんのりアップするという大発見をしたの!
多分、たくさん混ぜればもっと飲みやすくなると思うけど、量に限りがあるのでしかたない。
ちなみにグウェンさんの腕の内側でパッチテストはしっかりと済ませている……ハワードは飛び付かなかったので、そのままグウェンさんが舐めて2段階目のパッチテストに利用した。
その際、グウェンさんが一向に動かなくなってしまったのでまさか!毒だったのか!とみんな慌てたが、今まで食べた甘味で1番だったので驚愕していたらしい。
グウェンさんが硬直するくらい美味しいと知り、みんなも食べたがったが、そこは我慢。数日、グウェンさんの様子が変わらないことを確認してからとなる。
あまった樹液はわたしとハワードでおいしくいただきました!
当の本人は「毒味の特権だな!」とみんなに味の説明をして元気に過ごした。
今となっては樹液のほとんどをポーションもどきに混ぜて食べている……甘味としては食べられないけど、それよりポーションもどきの不味さ軽減とポーションもどきの効果アップ(体がぽかぽかする)を優先した。みんなも了承済みだ。
たまーにあまった樹液をみんなでわけあうのが楽しみだったりする。
「ねぇ、メリッサちゃん!なんだか、私の手首の魔方陣……色が変わってきたと思わない?」
そういうのは出会ったときとくらべ、随分と顔色のよくなったマチルダさんだ。
「おぉ……たしかにちょっと、かわったかも?」
「ほら、私はもうすぐメリッサと同じくらいの色になりそうだよ」
「おおー!」
「儂はあんまりかわってないのぉ……なんでじゃろうか?」
「魔力枯渇とかいうのが関係してんじゃねぇの?つーか、俺もあんま変わってないんだが」
「わ、私も……よ、よくわかりません」
お祈りについては……どうやら個人差があることがわかった。
「なんでだろうねー」
ようやく、みんなには少しずつお祈りの効果が出始めてきているが色にばらつきはあるのだ……魔力量で違うのか想像力の差なのかはわからない。
「マイケルもグウェンも全く変わってないわけじゃないだろう?」
「まぁなー」
「うむ。そうじゃな……」
「帝国がいう嘘の流民話より、よっぽど希望があるんだ……気長にやりな」
「は、はい」
「うむ」
「だな」
わたしのときよりは随分と時間がかかっているけど、全員の隷属の魔方陣が濃紺になる日もそう遠くないだろう……
18
お気に入りに追加
54
あなたにおすすめの小説
異世界転生したのだけれど。〜チート隠して、目指せ! のんびり冒険者 (仮)
ひなた
ファンタジー
…どうやら私、神様のミスで死んだようです。
流行りの異世界転生?と内心(神様にモロバレしてたけど)わくわくしてたら案の定!
剣と魔法のファンタジー世界に転生することに。
せっかくだからと魔力多めにもらったら、多すぎた!?
オマケに最後の最後にまたもや神様がミス!
世界で自分しかいない特殊個体の猫獣人に
なっちゃって!?
規格外すぎて親に捨てられ早2年経ちました。
……路上生活、そろそろやめたいと思います。
異世界転生わくわくしてたけど
ちょっとだけ神様恨みそう。
脱路上生活!がしたかっただけなのに
なんで無双してるんだ私???
幼女に転生したらイケメン冒険者パーティーに保護&溺愛されています
ひなた
ファンタジー
死んだと思ったら
目の前に神様がいて、
剣と魔法のファンタジー異世界に転生することに!
魔法のチート能力をもらったものの、
いざ転生したら10歳の幼女だし、草原にぼっちだし、いきなり魔物でるし、
魔力はあって魔法適正もあるのに肝心の使い方はわからないし で転生早々大ピンチ!
そんなピンチを救ってくれたのは
イケメン冒険者3人組。
その3人に保護されつつパーティーメンバーとして冒険者登録することに!
日々の疲労の癒しとしてイケメン3人に可愛いがられる毎日が、始まりました。
失われた力を身に宿す元聖女は、それでも気楽に過ごしたい~いえ、Sランク冒険者とかは結構です!~
紅月シン
ファンタジー
聖女として異世界に召喚された狭霧聖菜は、聖女としての勤めを果たし終え、満ち足りた中でその生涯を終えようとしていた。
いや嘘だ。
本当は不満でいっぱいだった。
食事と入浴と睡眠を除いた全ての時間で人を癒し続けなくちゃならないとかどんなブラックだと思っていた。
だがそんな不満を漏らすことなく死に至り、そのことを神が不憫にでも思ったのか、聖菜は辺境伯家の末娘セーナとして二度目の人生を送ることになった。
しかし次こそは気楽に生きたいと願ったはずなのに、ある日セーナは前世の記憶と共にその身には聖女としての癒しの力が流れていることを知ってしまう。
そしてその時点で、セーナの人生は決定付けられた。
二度とあんな目はご免だと、気楽に生きるため、家を出て冒険者になることを決意したのだ。
だが彼女は知らなかった。
三百年の時が過ぎた現代では、既に癒しの力というものは失われてしまっていたということを。
知らぬままに力をばら撒く少女は、その願いとは裏腹に、様々な騒動を引き起こし、解決していくことになるのであった。
※完結しました。
※小説家になろう様にも投稿しています
スマートシステムで異世界革命
小川悟
ファンタジー
/// 毎日19時に投稿する予定です。 ///
★☆★ システム開発の天才!異世界転移して魔法陣構築で生産チート! ★☆★
新道亘《シンドウアタル》は、自分でも気が付かないうちにボッチ人生を歩み始めていた。
それならボッチ卒業の為に、現実世界のしがらみを全て捨て、新たな人生を歩もうとしたら、異世界女神と事故で現実世界のすべてを捨て、やり直すことになってしまった。
異世界に行くために、新たなスキルを神々と作ったら、とんでもなく生産チートなスキルが出来上がる。
スマフォのような便利なスキルで異世界に生産革命を起こします!
序章(全5話)異世界転移までの神々とのお話しです
第1章(全12話+1話)転生した場所での検証と訓練
第2章(全13話+1話)滞在先の街と出会い
第3章(全44話+4話)遺産活用と結婚
第4章(全17話)ダンジョン探索
第5章(執筆中)公的ギルド?
※第3章以降は少し内容が過激になってきます。
上記はあくまで予定です。
カクヨムでも投稿しています。
#歌は世界を救う?~異世界おっさん探訪記~
takashi4649
ファンタジー
ちょっとブラックな会社に勤めている伊紗歌 慧(33)
いつも通り録り溜めたアニメを見て、自分の部屋で寝たはずが……
……起きたらそこは、深い森の中だった。
森の中で寂しくなり、ついつい歌を口ずさむと精霊たちに囲まれる!
話を聞くと、どうやらこの世界はほぼ音痴しか居らず
精霊たちは歌に餓えているとの事らしい。
いっちょおっさん一肌脱ぐしかない?
特にちぃと能力の無いおっさんが行く、ゆるうた異世界探訪記
果たしておっさんの行く末は如何に?
1話の文章量を少なくしておりますので、いつでもお手軽にスナック感覚で楽しんで戴けたら幸いです。
異世界生活物語
花屋の息子
ファンタジー
目が覚めると、そこはとんでもなく時代遅れな異世界だった。転生のお約束である魔力修行どころか何も出来ない赤ちゃん時代には、流石に凹んだりもしたが俺はめげない。なんて言っても、魔法と言う素敵なファンタジーの産物がある世界なのだから・・・知っている魔法に比べると低出力なきもするが。
そんな魔法だけでどうにかなるのか???
地球での生活をしていたはずの俺は異世界転生を果たしていた。転生したオジ兄ちゃんの異世界における心機一転頑張ります的ストーリー
精霊王女になった僕はチートクラスに強い仲間と世界を旅します
カオリグサ
ファンタジー
病で幼いころから病室から出たことがなかった少年
生きるため懸命にあがいてきたものの、進行が恐ろしく速い癌によって体が蝕まれ
手術の甲斐もむなしく死んでしまった
そんな生を全うできなかった少年に女神が手を差し伸べた
女神は少年に幸せになってほしいと願う
そして目覚めると、少年は少女になっていた
今生は精霊王女として生きることとなった少女の
チートクラスに強い仲間と共に歩む旅物語
『ラズーン』第六部
segakiyui
ファンタジー
統合府ラズーンの招聘を受けた小国セレドの皇女ユーノは、美貌の付き人アシャに支えられ、ラズーンに辿り着いたが、アシャはラズーンの『第一正統後継者』であり、世界は遥か昔の装置が生み出したものであり、しかも今は『運命(リマイン)』と呼ばれる異形の者達に脅かされていると知る。故国を守るため、引いては姉の想い人と思い込んでいる愛しいアシャを守るため、ぶつかり始めたラズーンと『運命(リマイン)』の決戦に赴くユーノは、アシャが自分を愛していることを知らない。アシャもまた、ユーノを守る誓いのために想いを告げることができない。2人の想いが重なり合うことはあるのか。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる