上 下
14 / 28

ありがとう。【糸川×馬木】

しおりを挟む
今日は力と一緒に放課後スタバデート。
楽しみにしてた新作フラペチーノがついに飲める。
ワクワクが止まらない。

最悪。
こんな日に限って生理が来た。
しかも過去最高に重い。
正直立っているのがやっと。
生理痛薬を飲んでもやっぱり重い。
内蔵が無理やりギューッと縮められていく感覚。
元々そんなに重い方ではなかったのに、どうして今日に限って...。

それだけ重くても、やはり力とのデートと新作フラペチーノは逃せない。
帰りのホームルームが終わると、私は力と一緒に教室を出た。

「九華、昔いちご嫌いだったけど飲めるのか?」

「大丈夫。もう高校生だよ。」

「じゃあ良かった。いやー、楽しみだなー。」

「うん。そうだね。」

ここにきて生理痛が一段と酷くなってきた。
なぜか意味もないのにイライラしてくる。

「ねえ力、歩くの速い。」

「そうか?いつもどうりだけど。」

「速いよ。」

「...そうか。気をつける。」

何にイラついてるんだろ。
力の歩く速度はいつもどうりだ。
力がいつも、今日だって歩幅を合わせてくれてるのは言われなくても知ってる。
でも無性にイライラして八つ当たりしてしまう。

学校から歩いて15分程でスタバに着いた。
新作のフラペチーノはひとつ640円。
いつものことながらなかなか高い。
今月は食欲に任せて欲張り過ぎて金欠だから余計に痛い。

「今日は俺が出すよ。九華どうせ金欠だろ。」

力の優しさと気遣いはありがたい。
でも今日の私は普通じゃない。
もちろん悪い意味で。

「いい。私も出せる。」

「本当に大丈夫か?昨日だってお菓子めっちゃ買ってたじゃん。」

「大丈夫だって。」

「いいけど、無理すんなよ。」

「大丈夫って言ってんじゃん!しつこいな。」

つい大声を出してしまう。
周りのお客さん達が一斉にこっちを見た。

やってしまった。

「そ、そうか。ごめん。」

「うん。」

私もごめん。
そう言えば良いのに、なんだかむしゃくしゃして言えない。
こうやって力の優しさに甘えきってる自分にもイライラして、余計に情緒が不安定になる。

なんとかフラペチーノを買って、窓際のカウンター席に座る。
新作フラペチーノは凄く美味しい。
こうやって毎月絶対に美味しい新作を出せるスタバは本当に凄い。

力はさっきの私の大声からほとんど何も喋らない。
それがまたイライラを増幅させていく。

しかしふとさっきのことを振り返り、途端にイライラが治まった。

力に悪いことしちゃった。
歩くの合わせてくれてるのに、速いって言っちゃった。
心配してくれてるのに、大声で怒鳴っちゃった。
ごめんって言わなきゃいけないのに、ごめんって言えなかった。

「力、さっきはごめん。」

「ああ、いいよ。大丈夫。」

「こんな気の利かない、短気な女でごめん。突然大きな声で怒鳴ったりしてごめん。本当にごめんなさい。」

「ちょっと、泣かないでよ。」

力がポケットティッシュを取り出して渡してくれた。

「こういうことあまり言わないようにしてたけど、多分今日女の子の日でしょ。しかも結構キツめの。
それくらい同じクラスで、幼馴染で、何より彼氏なんだから嫌でもわかるよ。
俺は男だからそういうのがどんなものなのかは情報としてしか知らないけど、今日なんとなくイライラしてるように見えたのはそういうことなんだろうなって思ってた。
だから大丈夫。
俺は大丈夫だから、自然にしててよ。」

力の優しさが身に染みる。
良い彼氏を持った。
我ながら誇らしい。

「余計泣かす気でしょ。」

「バレた?」

「もう、バカ。」

「でも本心だよ。」

「生理じゃない日は生理生理言ってくるくせに。」

「それは違うってわかってるのと、それを九華がネタとして受け取ってくれるからだよ。
ネタにならないくらい辛い時は絶対に言わない。」

「力のくせに気が効くじゃん。」

「何年お前の幼馴染やってると思ってんだよ。」

「言えてる。」

今日の力は、いつもより少しだけかっこよく見えた。
いつもふざけてばかりのくせに。

心做しか少し生理痛が楽になった気がした。

「ありがとう。」

力には聴こえないくらいの声で呟いた。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

JKがいつもしていること

フルーツパフェ
大衆娯楽
平凡な女子高生達の日常を描く日常の叙事詩。 挿絵から御察しの通り、それ以外、言いようがありません。

就職面接の感ドコロ!?

フルーツパフェ
大衆娯楽
今や十年前とは真逆の、売り手市場の就職活動。 学生達は賃金と休暇を貪欲に追い求め、いつ送られてくるかわからない採用辞退メールに怯えながら、それでも優秀な人材を発掘しようとしていた。 その業務ストレスのせいだろうか。 ある面接官は、女子学生達のリクルートスーツに興奮する性癖を備え、仕事のストレスから面接の現場を愉しむことに決めたのだった。

女子高生は卒業間近の先輩に告白する。全裸で。

矢木羽研
恋愛
図書委員の女子高生(小柄ちっぱい眼鏡)が、卒業間近の先輩男子に告白します。全裸で。 女の子が裸になるだけの話。それ以上の行為はありません。 取って付けたようなバレンタインネタあり。 カクヨムでも同内容で公開しています。

壁の薄いアパートで、隣の部屋から喘ぎ声がする

サドラ
恋愛
最近付き合い始めた彼女とアパートにいる主人公。しかし、隣の部屋からの喘ぎ声が壁が薄いせいで聞こえてくる。そのせいで欲情が刺激された両者はー

お漏らし・おしがま短編小説集 ~私立朝原女学園の日常~

赤髪命
大衆娯楽
小学校から高校までの一貫校、私立朝原女学園。この学校に集う女の子たちの中にはいろいろな個性を持った女の子がいます。そして、そんな中にはトイレの悩みを持った子たちも多いのです。そんな女の子たちの学校生活を覗いてみましょう。

校長先生の話が長い、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
学校によっては、毎週聞かされることになる校長先生の挨拶。 学校で一番多忙なはずのトップの話はなぜこんなにも長いのか。 とあるテレビ番組で関連書籍が取り上げられたが、実はそれが理由ではなかった。 寒々とした体育館で長時間体育座りをさせられるのはなぜ? なぜ女子だけが前列に集められるのか? そこには生徒が知りえることのない深い闇があった。 新年を迎え各地で始業式が始まるこの季節。 あなたの学校でも、実際に起きていることかもしれない。

夜の公園、誰かが喘いでる

ヘロディア
恋愛
塾の居残りに引っかかった主人公。 しかし、帰り道に近道をしたところ、夜の公園から喘ぎ声が聞こえてきて…

処理中です...