上 下
5 / 16

第5話 初めてのロールキャベツ

しおりを挟む

嬉しい気持ちとダンスをしながら僕は掃除をする。
掃除がこんなにも楽しいなんて人生で初めてだ。
リビングの掃除をノリノリで終わらせる。
次なるターゲットは、寝室だ!
朝とさっきのドタバタで入ったけど、再び入るとなると勇気がいる。
どうにも寝室は神聖な場所みたいな、その人のプライベート感が強くて入るのを躊躇する。

しかし!

今回は掃除という大義名分があるじゃないか!
という事で、意を決して突入!
午前中に入った時とは打って変わって、日差しが強く暑さを感じる。
そういえば、ご主人様の服を着っぱなしだった事を思い出す。
ちょうど暑くなってきたし、ちょうどクローゼットあるし戻しておこう。
僕はバレないように、着ていた服を最初の形を思い出しながらしまう。
よし!これで大丈夫だ!
と、一息ついたところである物が目に入る。
さっきの宅配便のドタバタの時に視界に入ったアレだ……
これってやっぱり…………

ムチ…………だよなぁ……

やっぱりご主人様はそういう趣味なんだろうか……
だとしたらそのうち僕は……


――犬の脳内


女王様スタイルのご主人様が僕の事を四つん這いにさせる。
首輪をつけられた僕はリードに繋がれ背中を踏みつけられる。

「こんなので興奮するのか?」

さらにご主人様の足が僕の背中を強く踏みつける。

「そ、そんなわけ……」
「犬ならご主人様に素直にならなきゃなぁ?」
「うっ……も、もっと……」
「もっと何だ?」
「……もっと…………もっとしてください」
「よーし、良い子だ」

そう言うとご主人様の踏みつけが強くなる。
背中に触れる足が強く熱を帯びていく。
あぁ、きっとご主人様も興奮を……



って何やってるんだ!!
相手はオ・ト・コ!!
まったく何考えてるんだ僕は……
よからぬ妄想から抜け出して、僕は寝室の掃除を進める。
掃除機をかけて終了。
あんまりいじってもあれだからね。
廊下に出て軽く掃除機をかけながら、もう一つの部屋の存在を思い出す。
結局この部屋はなんの部屋なんだろう……
開けてもいいのかな?
入ってもいいのかな?
……ちょっとだけなら良いよね!
まだ見ぬ部屋の前、ドアノブに手をかける。
開けようとしたその時……


電話が鳴った。


ビックリしたぁ……
誰だよこんなタイミングで……
この番号は確か…………

「はい、もしもし」
「時間通りに帰れる、それだけだ」
「は、はい!わかりま」

切られた……
でもわざわざ連絡してくれるなんて、ご主人様は可愛いなぁ!
忠告してくるならば応えてやろう!
時間は…………15時過ぎ。
全然余裕があるじゃないかー!
それに、小さい頃お母さんに聞いた事がある。

「スーパーはね!夕方がね!安いんだよ!」

つまり時間的にはジャストって事さ!
食費も安く済ませられるとは、なんて計画的なんだ!
さて、ここまで裸だった僕はスーパーに向かうために準備をする。

えーと、服は…………
あれ…………
もしかして…………

やっちまったああああああ!!
洗濯はした。
だが、それまでだ!
干すの忘れたああああああ!!
急いで洗濯機へ向かう。
洗濯機の中には脱水が終わったシワシワの自分の服が入っていた。
どうしたらいいんだ……
またご主人様の服を借りていくか?
いや、でも万が一汚しちゃったら怒られるだろうし……
あたふたしてると洗濯機にある文字が見えた。

“乾燥”の2文字だ!!
これだ!!
すかさず洗濯機の蓋を閉めて、乾燥のボタンを押す!
洗濯機は僕の服を熱風で包む。
何分で終わるかなぁ……
ちょっとソファでのんびりしよ。
リビングへ向かい、ソファで横になる。







…………はっ!!
ヤバイ!寝てた!?
今何時だ!!!
リビングの時計を見るとまだ時間は16時半だった。
あぶねー……
40分ほど寝てしまっていた。
だが、まだ間に合うだろう。
洗濯機へ乾いた服を取りに向かう。
服はまだ生乾きだった…………
もう少し乾かすか。
もう一度乾燥ボタンを押す。
そしてリビングへ戻る。
ソファに座り眠気を覚まそうと思い、スマホを見る。
そこで僕は目が覚めた。

今は十七時半過ぎだ…………

なぜだ!?
もう一度リビングの時計を確認する。
時間は十七時半過ぎ、スマホと一緒だ!
どうやら僕はアナログ時計の針を見間違えたみたいだ。
となると、ご主人様が帰ってくる時間はあと……

そんな事を考えてる余裕はない。
僕は急いで生乾きの服に着替えてスーパーへと走る。
走りながら晩ご飯のメニューを考える。
どうしよう、どうしよう!
そういえば、キャベツ買った!
キャベツが入ったご飯ってなんだぁ!?
んー…………………………


ロールキャベツ!!!


中に何入ってたっけな…………
ひき肉か!?
ハンバーグっぽかったもんな!
あとは醤油!砂糖!塩胡椒!
最低限買って急いで帰ろう!!
考え得る最短ルートを通り、スーパーに到着。
カゴを手に取り、値段も確認せずに放り込んでいく。
入り口からレジへ一周してお会計。

「1280円になりまーす」

2千円を渡してお釣りをもらって来た道と寸分狂わずに帰る。
ここまで時間にして十五分!
時刻は17時50分!まだ帰ってこない!
どうしたら時間が潰せるだろうか、いろいろ考えた結果導き出した答えはこれだ。
お風呂場へ向かい湯船にお湯を張る!
ご主人様には先にお風呂に入ってもらおう!!
長く入れるようぬるめのお湯を出してキッチンへと戻る。
キャベツとひき肉をキッチンに並べ、スマホでレシピを調べる!
えーと……ロールキャベツ……っと。
なになにー、所要時間……1時間?
えー!!!間に合わないじゃん!!
とりあえず出来そうな手順その1!
ひき肉をこねる!!
粘れが出るまでこねる!!
そう書いてあるからこねる!!
こねた肉をキャベツで包む!
包む!包む!包む!包む!
尋常じゃないスピードで工程を消化できた。
時間は18時10分……
そろそろか…………?

直感は当たった、玄関から鍵が開く音がした。
急いで玄関に向かい作戦決行!

「ご主人様おかえりなさい!」
「ただいま、飯は」
「今日暑かったですよね!お風呂沸かしてあるんで先にどうぞ!!」
「いや、俺は飯が」
「さあさあ!脱いで脱いで!!」

ご主人様は渋々お風呂へと向かう。
そして無理やり押し込んでキッチンへ戻る。
ロールキャベツはおそらく半分は終わってるはずだ!
もう一度レシピを確認する。
材料がない工程は省いていった結果、残りは煮るだけ。
時間は…………30分!?
買ってもらったフライパンに醤油となぜか砂糖を入れ火にかける。
熱くなったと思われるところでロールキャベツをイン!!
蓋をして待つだけだ……
とりあえず一安心と思った矢先、お風呂場から声がする。

「おーい、タオル無いぞー」

もう出たのか!?
早すぎるだろ!!
僕はタオルを持ってお風呂場へ向かう。
完成までは残り25分……
ここは苦肉の策だ!

「ご主人様~?せっかくなんで背中洗いますね!」

そう言ってまた無理やりお風呂へと押し込んだ。
裸のご主人様とお風呂です2人きり。
これって結構ヤバイ状況??
果たしてロールキャベツは完成するのだろうか……
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

魔女の呪いで男を手懐けられるようになってしまった俺

ウミガメ
BL
魔女の呪いで余命が"1年"になってしまった俺。 その代わりに『触れた男を例外なく全員"好き"にさせてしまう』チート能力を得た。 呪いを解くためには男からの"真実の愛"を手に入れなければならない……!? 果たして失った生命を取り戻すことはできるのか……! 男たちとのラブでムフフな冒険が今始まる(?) ~~~~ 主人公総攻めのBLです。 一部に性的な表現を含むことがあります。要素を含む場合「★」をつけておりますが、苦手な方はご注意ください。 ※この小説は他サイトとの重複掲載をしております。ご了承ください。

魔界最強に転生した社畜は、イケメン王子に奪い合われることになりました

タタミ
BL
ブラック企業に務める社畜・佐藤流嘉。 クリスマスも残業確定の非リア人生は、トラックの激突により突然終了する。 死後目覚めると、目の前で見目麗しい天使が微笑んでいた。 「ここは天国ではなく魔界です」 天使に会えたと喜んだのもつかの間、そこは天国などではなく魔法が当たり前にある世界・魔界だと知らされる。そして流嘉は、魔界に君臨する最強の支配者『至上様』に転生していたのだった。 「至上様、私に接吻を」 「あっ。ああ、接吻か……って、接吻!?なんだそれ、まさかキスですか!?」 何が起こっているのかわからないうちに、流嘉の前に現れたのは美しい4人の王子。この4王子にキスをして、結婚相手を選ばなければならないと言われて──!?

侯爵令息セドリックの憂鬱な日

めちゅう
BL
 第二王子の婚約者候補侯爵令息セドリック・グランツはある日王子の婚約者が決定した事を聞いてしまう。しかし先に王子からお呼びがかかったのはもう一人の候補だった。候補落ちを確信し泣き腫らした次の日は憂鬱な気分で幕を開ける——— ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー 初投稿で拙い文章ですが楽しんでいただけますと幸いです。

魔法菓子職人ティハのアイシングクッキー屋さん

古森きり
BL
魔力は豊富。しかし、魔力を取り出す魔門眼《アイゲート》が機能していないと診断されたティハ・ウォル。 落ちこぼれの役立たずとして実家から追い出されてしまう。 辺境に移住したティハは、護衛をしてくれた冒険者ホリーにお礼として渡したクッキーに強化付加効果があると指摘される。 ホリーの提案と伝手で、辺境の都市ナフィラで魔法菓子を販売するアイシングクッキー屋をやることにした。 カクヨムに読み直しナッシング書き溜め。 小説家になろう、アルファポリス、BLove、魔法Iらんどにも掲載します。

【完結】人形と皇子

かずえ
BL
ずっと戦争状態にあった帝国と皇国の最後の戦いの日、帝国の戦闘人形が一体、重症を負って皇国の皇子に拾われた。 戦うことしか教えられていなかった戦闘人形が、人としての名前を貰い、人として扱われて、皇子と幸せに暮らすお話。   性表現がある話には * マークを付けています。苦手な方は飛ばしてください。 第11回BL小説大賞で奨励賞を頂きました。応援してくださった皆様、ありがとうございます。

職業寵妃の薬膳茶

なか
BL
大国のむちゃぶりは小国には断れない。 俺は帝国に求められ、人質として輿入れすることになる。

愛などもう求めない

白兪
BL
とある国の皇子、ヴェリテは長い長い夢を見た。夢ではヴェリテは偽物の皇子だと罪にかけられてしまう。情を交わした婚約者は真の皇子であるファクティスの側につき、兄は睨みつけてくる。そして、とうとう父親である皇帝は処刑を命じた。 「僕のことを1度でも愛してくれたことはありましたか?」 「お前のことを一度も息子だと思ったことはない。」 目が覚め、現実に戻ったヴェリテは安心するが、本当にただの夢だったのだろうか?もし予知夢だとしたら、今すぐここから逃げなくては。 本当に自分を愛してくれる人と生きたい。 ヴェリテの切実な願いが周りを変えていく。  ハッピーエンド大好きなので、絶対に主人公は幸せに終わらせたいです。 最後まで読んでいただけると嬉しいです。

天使の声と魔女の呪い

狼蝶
BL
 長年王家を支えてきたホワイトローズ公爵家の三男、リリー=ホワイトローズは社交界で“氷のプリンセス”と呼ばれており、悪役令息的存在とされていた。それは誰が相手でも口を開かず冷たい視線を向けるだけで、側にはいつも二人の兄が護るように寄り添っていることから付けられた名だった。  ある日、ホワイトローズ家とライバル関係にあるブロッサム家の令嬢、フラウリーゼ=ブロッサムに心寄せる青年、アランがリリーに対し苛立ちながら学園内を歩いていると、偶然リリーが喋る場に遭遇してしまう。 『も、もぉやら・・・・・・』 『っ!!?』  果たして、リリーが隠していた彼の秘密とは――!?

処理中です...