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第一章 The war ain't over!
7-1 グラインド・ゴシップⅡ
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ライブバーでの収録翌日、オンラインメディアには予告の通り下数の記事の続編が公開されていた。その内容は、レインがかつて勤めていると噂されていたアパレルショップを取材した内容で、テナント移転後のショップで当時を知る現在のマネージャーと接触し、レインが働いていた事やその勤務態度について話を聞いた内容から始まっていた。
続けて彼が数年前に働いたアクセサリーショップへの取材内容がまとめられており、入念に取材された様子から、下数は自分に接触する以前より芸能界から姿を消した有名人を取材する企画の一環としてこの取材をしていたのだろうと推測した。
「多分、前にバイトしてた店に取材をして、あの人は今何をみたいな懐古記事を書くつもりだったんだろう。数日でマネージャーや店長捕まえて話を聞くのは少し無理な気がする。ただ、あのライブハウスに俺が居た事を掴んだのは何でか……あの辺で活動してる別の人間を探している内に偶然知っただけならいいんだけど」
下数は一度でもメジャーデビューを果たしたロックバンドの元メンバーを中心に記事を書いており、ライブハウスなど演奏できる場所が集中する地域を拠点に活動している事が窺える。
魚拓を取っている佐伯に通話をつないだまま、レインはその記事を読み進めた。
「結局のところ、俺と接触したはいいけど、アパレルの仕事を辞めてからはこっちに引き込んでて、取材じゃ動向が掴めないから、仕方なく黒歴史掘り返してジャンキー疑惑でっち上げて閲覧稼ぎといったところか……弁護士は紹介してもらったけど、レインは死んでるし、先手は打てないや」
「あー、なんか歯痒いなー……まあ、記事の配信はほぼ定刻だし、魚拓はすぐに取っておくよ。あと、コメントも出来るだけ残せるようにしておくから、何かマズいい内容が有れば、弁護士の先生にすぐ連絡が取れるようにしておいた方がいい」
「分かった、そうするよ」
オンラインに出される記事の保管は在宅で自由業の佐伯に任せ、レインは予定通り商品の仕分け作業に向かう。
喫茶店の二階にある商品保管場所には、問屋から届けられたイヤリングの土台がそのまま積まれていた。小分け用の袋には既にラベルが貼り付けられており、既定の数量をそのまま詰めるだけになっている。
白北が副業で始めたアクセサリーパーツの小売は規模こそ小さいが、在庫切れの少なさが評判になっている。だが、その分商品補充が慌ただしい。
レインは在庫の残量の少なくなった入り数を集中的に袋詰めし、在庫を補充する。
「ゴールド4個パックと……後はTピン補充してー……」
レインが次の仕事にとりかかろうとしたところ、慌ただしい足音が勢いよく作業部屋の扉を開いた。
「レイさん、メーデーメーデー、ブラストバスターの社長さん、うちに来た」
「……はぁ?」
息を弾ませるミカの言葉に、レインは思わず声を上げた。
「ひとまず、こっちに連れてきて、今はマスターに任せてる」
「あぁ、分った。って、他のお客は?」
「今はいない」
「じゃあ貸し切ってくれとマスターに言ってくれ」
「分った」
慌ただしい足音を立てながら、ミカは階段を下りてゆく。
「あぁ、もう、なんてこった」
レインは作業用の手袋を放り投げ、階下へと向かった。
続けて彼が数年前に働いたアクセサリーショップへの取材内容がまとめられており、入念に取材された様子から、下数は自分に接触する以前より芸能界から姿を消した有名人を取材する企画の一環としてこの取材をしていたのだろうと推測した。
「多分、前にバイトしてた店に取材をして、あの人は今何をみたいな懐古記事を書くつもりだったんだろう。数日でマネージャーや店長捕まえて話を聞くのは少し無理な気がする。ただ、あのライブハウスに俺が居た事を掴んだのは何でか……あの辺で活動してる別の人間を探している内に偶然知っただけならいいんだけど」
下数は一度でもメジャーデビューを果たしたロックバンドの元メンバーを中心に記事を書いており、ライブハウスなど演奏できる場所が集中する地域を拠点に活動している事が窺える。
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「結局のところ、俺と接触したはいいけど、アパレルの仕事を辞めてからはこっちに引き込んでて、取材じゃ動向が掴めないから、仕方なく黒歴史掘り返してジャンキー疑惑でっち上げて閲覧稼ぎといったところか……弁護士は紹介してもらったけど、レインは死んでるし、先手は打てないや」
「あー、なんか歯痒いなー……まあ、記事の配信はほぼ定刻だし、魚拓はすぐに取っておくよ。あと、コメントも出来るだけ残せるようにしておくから、何かマズいい内容が有れば、弁護士の先生にすぐ連絡が取れるようにしておいた方がいい」
「分かった、そうするよ」
オンラインに出される記事の保管は在宅で自由業の佐伯に任せ、レインは予定通り商品の仕分け作業に向かう。
喫茶店の二階にある商品保管場所には、問屋から届けられたイヤリングの土台がそのまま積まれていた。小分け用の袋には既にラベルが貼り付けられており、既定の数量をそのまま詰めるだけになっている。
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「ゴールド4個パックと……後はTピン補充してー……」
レインが次の仕事にとりかかろうとしたところ、慌ただしい足音が勢いよく作業部屋の扉を開いた。
「レイさん、メーデーメーデー、ブラストバスターの社長さん、うちに来た」
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「ひとまず、こっちに連れてきて、今はマスターに任せてる」
「あぁ、分った。って、他のお客は?」
「今はいない」
「じゃあ貸し切ってくれとマスターに言ってくれ」
「分った」
慌ただしい足音を立てながら、ミカは階段を下りてゆく。
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