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『そして夜が明けた』(2019)
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「どーすんのさ、これ」
白うさは近所の山小屋から拝借してきた洗剤を手に、屋根に上っていた。
「どっかの馬鹿魔法使いの失敗作、どうやって始末するのかって聞いてんの」
壁を伝って屋根へと這い上がってくるスライムを叩く茶くまは、洗剤は使えないのかと悲鳴を上げた。
「掛けた結果がこれじゃない。増えちゃったのはアンタの所為よ」
確かに、スライムが酸性ならアルカリ性で中和すればいいと茶くまは考えてた。
「って、中性洗剤じゃ勝てないよ!」
「でも、スライムの中には酸性とアルカリ性どっちも居るから、アルカリ剤で倒せるのと強くなるのが居るよ?」
スライムの核となっている何かを叩き潰しながら、茶いぬは呟いた。
「じゃ、やっぱ洗剤じゃ勝てないんだよ!」
白うさは茶くまを思い切り叩く。
「いたっ、叩くならスライムにしてよ!」
「ところでさぁ……スライムって、今ここに居るのが全部?」
スライムを蹴り飛ばしながら、ねこは問う。
白うさと茶くまは顔を見合わせ、ふと遠くを見遣る。
「そう言えば……」
茶くまは地面を大移動するスライムの大群に、慌てて屋根まで逃げたハロウィンかぼちゃを探す。
やや離れた隣のロッジのの壁には、一匹のスライムも居なかった。
「……もしかして、こいつら、動物だけが標的か?」
白うさは向こうに巣を構える鳥を探した。
襲いやすさでははるかに上回っているはずの卵を抱えている鳥の巣に、スライムは向かっていない。
「いや、哺乳類専門みたいだな……」
スライムを蹴り飛ばし、白うさはめんどうだと言わんばかりに座り込む。
「ちょっと、さぼらないでよ!」
茶くまは手にしたスライムを白うさに放り投げてやりたいとさえ思った。
「あー、もうめんどくさい。つか、叩いたって核が潰れなきゃ消えてくれないし、素手でぼこすかやんのもう無理じゃね?」
「確かに、素手はもうしんどいけど……降りて棒が取りに行けないじゃん!」
茶いぬが見下ろす地面には、砂地が見えないほどのスライムがひしめき合っている。
「カラスさんに手伝ってもらえば早くない?」
ねこの思いつきは妙案だった。しかし、良い思い付きでも無かった。
「見返りがなきゃあいつらは動かないし、そもそも此処にはカラスのねぐらが無いよ」
茶いぬは足にまとわりつくスライムを、スライムのひしめき合う地面に蹴り落とした。
「でも、鳥さんならくちばしも爪もあるから、きっとすぐに倒してくれるよ」
「だけど、もう日暮れも近いのに、鳥が力貸してくれると思う?」
茶くまは悲痛な声を上げた。
「あ、そうか。おーい、かーぼちゃー」
白うさは煙突によじ登り、向こうのロッジの屋上に居るかぼちゃに手を振った。
「こうもりにさー、フクロウ呼んでって頼んでよー」
「えー?」
挙げた両手を振りながら、ハロウィンかぼちゃは首を傾げた。
「こいつらの核をー、つついて潰して欲しいんだよー。ついでにー、適当な棒きれ持ってきてって頼んでよー」
「わかったー」
かぼちゃは両手を振ってこたえ、お供のこうもりを遣いに出した。
そして夜、フクロウ軍の総攻撃を受けたスライムは駆逐され、バカンスを楽しめなかった動物達は、棒きれ片手に残党狩りに飛び出して、馬鹿魔法使いを襲撃した。
彼等が何をしたのかは分からないが、こうもり曰く、魔法使いの小屋は泡だらけになっていたとの事だった。
白うさは近所の山小屋から拝借してきた洗剤を手に、屋根に上っていた。
「どっかの馬鹿魔法使いの失敗作、どうやって始末するのかって聞いてんの」
壁を伝って屋根へと這い上がってくるスライムを叩く茶くまは、洗剤は使えないのかと悲鳴を上げた。
「掛けた結果がこれじゃない。増えちゃったのはアンタの所為よ」
確かに、スライムが酸性ならアルカリ性で中和すればいいと茶くまは考えてた。
「って、中性洗剤じゃ勝てないよ!」
「でも、スライムの中には酸性とアルカリ性どっちも居るから、アルカリ剤で倒せるのと強くなるのが居るよ?」
スライムの核となっている何かを叩き潰しながら、茶いぬは呟いた。
「じゃ、やっぱ洗剤じゃ勝てないんだよ!」
白うさは茶くまを思い切り叩く。
「いたっ、叩くならスライムにしてよ!」
「ところでさぁ……スライムって、今ここに居るのが全部?」
スライムを蹴り飛ばしながら、ねこは問う。
白うさと茶くまは顔を見合わせ、ふと遠くを見遣る。
「そう言えば……」
茶くまは地面を大移動するスライムの大群に、慌てて屋根まで逃げたハロウィンかぼちゃを探す。
やや離れた隣のロッジのの壁には、一匹のスライムも居なかった。
「……もしかして、こいつら、動物だけが標的か?」
白うさは向こうに巣を構える鳥を探した。
襲いやすさでははるかに上回っているはずの卵を抱えている鳥の巣に、スライムは向かっていない。
「いや、哺乳類専門みたいだな……」
スライムを蹴り飛ばし、白うさはめんどうだと言わんばかりに座り込む。
「ちょっと、さぼらないでよ!」
茶くまは手にしたスライムを白うさに放り投げてやりたいとさえ思った。
「あー、もうめんどくさい。つか、叩いたって核が潰れなきゃ消えてくれないし、素手でぼこすかやんのもう無理じゃね?」
「確かに、素手はもうしんどいけど……降りて棒が取りに行けないじゃん!」
茶いぬが見下ろす地面には、砂地が見えないほどのスライムがひしめき合っている。
「カラスさんに手伝ってもらえば早くない?」
ねこの思いつきは妙案だった。しかし、良い思い付きでも無かった。
「見返りがなきゃあいつらは動かないし、そもそも此処にはカラスのねぐらが無いよ」
茶いぬは足にまとわりつくスライムを、スライムのひしめき合う地面に蹴り落とした。
「でも、鳥さんならくちばしも爪もあるから、きっとすぐに倒してくれるよ」
「だけど、もう日暮れも近いのに、鳥が力貸してくれると思う?」
茶くまは悲痛な声を上げた。
「あ、そうか。おーい、かーぼちゃー」
白うさは煙突によじ登り、向こうのロッジの屋上に居るかぼちゃに手を振った。
「こうもりにさー、フクロウ呼んでって頼んでよー」
「えー?」
挙げた両手を振りながら、ハロウィンかぼちゃは首を傾げた。
「こいつらの核をー、つついて潰して欲しいんだよー。ついでにー、適当な棒きれ持ってきてって頼んでよー」
「わかったー」
かぼちゃは両手を振ってこたえ、お供のこうもりを遣いに出した。
そして夜、フクロウ軍の総攻撃を受けたスライムは駆逐され、バカンスを楽しめなかった動物達は、棒きれ片手に残党狩りに飛び出して、馬鹿魔法使いを襲撃した。
彼等が何をしたのかは分からないが、こうもり曰く、魔法使いの小屋は泡だらけになっていたとの事だった。
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