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第四話 無茶ぶりフォンデュ
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「何ですか、ロディア様」
ロディアに呼ばれて出てきたヴェールの人物は女性らしかった。
「喜びなさい、あなたの代わりを見つけたわ」
「代わり……まさか、その子?」
フトゥールは怪訝に明日歌を眺めた。
「えぇ」
「……あなた、タロット占いをご存知ですか?」
フトゥールは明日歌を怪訝に眺めたまま、問い掛ける。
「た、タロット占い……知っては居ますけど、占った事も、占われた事も」
フトゥールは真顔でロディアを見た。
「……無茶ぶりもほどほどにしてあげて下さい。幾ら使い魔を残しておくとはいえ、素人に鑑定させるつもりですか?」
「でも大丈夫よ、彼女はカウンセラーの成り損ないだから、話は出来るはずよ」
「え、ちょ、ちょっと待って下さい、私は」
成り損ないという言葉が気に障ったのではない。
正確には、成り損ないですらないのだ。
だが、それを伝える事は叶わなかった。
「カウンセラー? そんなものに神秘の力を解読しろなんて」
フトゥールは呆れた様にロディアを見遣る。だが、ロディアは笑っていた。
「大丈夫、成り損ないだから」
失礼を通り越して無礼である一方、何も正しく無い認識に基づく会話が、一方的に進められる。
「それに、彼女は“回収”の対象よ。プルートの事も知っているし、ひえひえ雪だるまも知っているわ」
フトゥールは明日歌を見遣る。
「信じるか信じないかは勝手だけど、私はエルフで、人間としての姿は百二歳のおばあさん。失礼なんだけどね、私まだ八十三年しか生きていないから。ただ、そろそろ人間としての書類を破棄しなきゃいけないの。次はそのおばあさんの曾孫って事で暮らす予定なんだけど……その支度にちょっと時間が欲しいの。で、私が留守にしている間を、蛇の奥方はあなたに任せると言っているのよ」
死神に蛇女。今更エルフが居ても、もう不思議はなかった。
「あら、驚かないの?」
「……死神が居ました、蛇女が居ました、雪だるまが氷を食べていました……今更驚きようがありません」
「そう。じゃあ言っておくけど、此処の店は魔界と人間界をつなぐ場所だから、あなたが鑑定するのは魔界の住民かもしれないから、誰が来ても驚いちゃ駄目よ。あと、クッキーが喋ってもね」
明日歌は首を傾げた。
「あのね、あなたが使う事になるタロットカードは魔界の魔術を集めて作った特別なカードで、使い魔が憑いているの、カードデッキその物に。だから、素人に占いを任せるのであれば、私はあれを此処に置いて行って、使い魔に解説を代行させるわ。ただ、使い魔の声を聞く事が出来るのは占者だけ。そして、魔力の無い者がその声を聞く為には、使い魔の依り代が必要になる、それがクッキーなの」
フトゥールが言わんとする事はなんとなく分かった。だが、明日歌は何故それがクッキーなのかがどうしても分からない。
「あの、どうしてクッキーが……」
「此処はカフェよ? そこに有っておかしく無い物しか置けないじゃない。それに、特製の人形抜き型を使えば、可愛い人形クッキーが喋る事になる。まさか、チョコチップクッキーが喋るなんて不気味じゃない」
明日歌は否定したかったが、クッキーが喋る事自体が不気味です、とは言えなかった。
雪だるまのぬいぐるみが氷を食べて冷房の代わりになっていたのだから。
「……話を分かってくれたならいいわ」
フトゥールは肩を竦めた。すると、ロディアは彼女に問い掛ける。
「フトゥール、今日はその子にタロットを教えてやってくれる?」
「お客さんは?」
「指名がなきゃ私が受けるわ」
「お店は?」
「家畜どもに鞭を打って働かせてやるわ」
「分かりました。えっと……」
フトゥールは明日歌を見る。
「あなたの名前、聞いてなかったわね」
「木珠明日歌です」
「そう。それじゃあ明日歌、こっちに来て」
いきなりの呼び捨てに明日歌は眉を顰めたが、相手はエルフである。人間の常識は通用しない。
諦めに肩を落としつつ、彼女はフトゥールに従った。
*
少し待っていろと言われ、隅のテーブルに着いていると、フトゥールは何かを手にして現れた。
「じゃ、まずはタロットの使い方からね」
フトゥールは青いヴェルヴェットのクロスをテーブルに広げた。
「第一に、占う場所は綺麗である事。そして、カードは必ずクロスの上で扱う事。第二に、カードは占う者以外触れない事。依頼者にカード混ぜさせたり引かせる占者も居るけど、このカードは特殊な力を持ったカードだから、仮令スペアであっても、安易に触れさせない事。汚れた手で触れないとか、汚さないというのは前提条件よ」
クロスの上に据えられたカードの山に、フトゥールは手を添える。
「占いを始める時には、カードを据えた状態で依頼者の相談内容を聞き出して。カウンセラーの成り損ないだと、相談時点で依頼者が言いたい事以上の内容を引き出しかねないけれど、あんまりに漠然とした内容ではない限り、あまり深く追求せずに、カードの示す過去と現在から状況を読み解いて」
「それで分かるんですか?」
依頼者の言葉無しに相談内容を解読しろと言うフトゥールに、明日歌は懐疑的だった。
「ええ。きちんとカードの意味を読み解けば分かるわ。そもそも、占いは言語だけを以てその問題を解決する物ではないの。神秘の力を此処に呼び寄せ、言葉にされていない、あるいは、依頼人自身でも言葉に出来ない真実を読み解き、その上で未来の道筋を照らすもの……どうしましょうか、どうしたいのでしょうかと占者自身が質問して、相手に決めさせるのは占いじゃないわ」
フトゥールは明日歌を見遣る。だが、不思議と明日歌は気を悪くしている様には見えなかった。
「あら? 相手の話を引き出して、受け止めて、こちらから出来る限り情報を提示せずに相手に考えさせるのがあなたの正義かと思ってたわ?」
明日歌は目を伏せ、口を開いた。
「いえ……それはそれで、根拠ある技法だとは思いますが……こちらから何も提示できずに、だらだら話だけ聞いて、結局何も解決出来ないのは無意味だと思いましたし……でも、結局、占いだってこちらからは何も言わないんですよね?」
「いや、そうでもないわよ、少なくとも私は」
「え?」
明日歌の見たフトゥールはあっけらかんとしていた。
「問題の質や依頼者の性分にもよるけど、こちらからある程度具体性のある対策を解読して伝える必要もあるわ。抽象的な解読から現実的かつ具体的な話に話が流れていく事もあるし、強制力は無いにしろ、こっちから踏み込んだ事を言う事だってあるわ。それこそ、人間はお説教される為にお金を払って手相見を頼んだりするんでしょ? 少々の事で文句を言われたら、もう来るなって塩撒いてやるわよ」
「それは、まあ……」
「それにー、信じるも信じないも向こうの勝手、そういう物よ」
頬杖を突きフトゥールは笑った。
ロディアに呼ばれて出てきたヴェールの人物は女性らしかった。
「喜びなさい、あなたの代わりを見つけたわ」
「代わり……まさか、その子?」
フトゥールは怪訝に明日歌を眺めた。
「えぇ」
「……あなた、タロット占いをご存知ですか?」
フトゥールは明日歌を怪訝に眺めたまま、問い掛ける。
「た、タロット占い……知っては居ますけど、占った事も、占われた事も」
フトゥールは真顔でロディアを見た。
「……無茶ぶりもほどほどにしてあげて下さい。幾ら使い魔を残しておくとはいえ、素人に鑑定させるつもりですか?」
「でも大丈夫よ、彼女はカウンセラーの成り損ないだから、話は出来るはずよ」
「え、ちょ、ちょっと待って下さい、私は」
成り損ないという言葉が気に障ったのではない。
正確には、成り損ないですらないのだ。
だが、それを伝える事は叶わなかった。
「カウンセラー? そんなものに神秘の力を解読しろなんて」
フトゥールは呆れた様にロディアを見遣る。だが、ロディアは笑っていた。
「大丈夫、成り損ないだから」
失礼を通り越して無礼である一方、何も正しく無い認識に基づく会話が、一方的に進められる。
「それに、彼女は“回収”の対象よ。プルートの事も知っているし、ひえひえ雪だるまも知っているわ」
フトゥールは明日歌を見遣る。
「信じるか信じないかは勝手だけど、私はエルフで、人間としての姿は百二歳のおばあさん。失礼なんだけどね、私まだ八十三年しか生きていないから。ただ、そろそろ人間としての書類を破棄しなきゃいけないの。次はそのおばあさんの曾孫って事で暮らす予定なんだけど……その支度にちょっと時間が欲しいの。で、私が留守にしている間を、蛇の奥方はあなたに任せると言っているのよ」
死神に蛇女。今更エルフが居ても、もう不思議はなかった。
「あら、驚かないの?」
「……死神が居ました、蛇女が居ました、雪だるまが氷を食べていました……今更驚きようがありません」
「そう。じゃあ言っておくけど、此処の店は魔界と人間界をつなぐ場所だから、あなたが鑑定するのは魔界の住民かもしれないから、誰が来ても驚いちゃ駄目よ。あと、クッキーが喋ってもね」
明日歌は首を傾げた。
「あのね、あなたが使う事になるタロットカードは魔界の魔術を集めて作った特別なカードで、使い魔が憑いているの、カードデッキその物に。だから、素人に占いを任せるのであれば、私はあれを此処に置いて行って、使い魔に解説を代行させるわ。ただ、使い魔の声を聞く事が出来るのは占者だけ。そして、魔力の無い者がその声を聞く為には、使い魔の依り代が必要になる、それがクッキーなの」
フトゥールが言わんとする事はなんとなく分かった。だが、明日歌は何故それがクッキーなのかがどうしても分からない。
「あの、どうしてクッキーが……」
「此処はカフェよ? そこに有っておかしく無い物しか置けないじゃない。それに、特製の人形抜き型を使えば、可愛い人形クッキーが喋る事になる。まさか、チョコチップクッキーが喋るなんて不気味じゃない」
明日歌は否定したかったが、クッキーが喋る事自体が不気味です、とは言えなかった。
雪だるまのぬいぐるみが氷を食べて冷房の代わりになっていたのだから。
「……話を分かってくれたならいいわ」
フトゥールは肩を竦めた。すると、ロディアは彼女に問い掛ける。
「フトゥール、今日はその子にタロットを教えてやってくれる?」
「お客さんは?」
「指名がなきゃ私が受けるわ」
「お店は?」
「家畜どもに鞭を打って働かせてやるわ」
「分かりました。えっと……」
フトゥールは明日歌を見る。
「あなたの名前、聞いてなかったわね」
「木珠明日歌です」
「そう。それじゃあ明日歌、こっちに来て」
いきなりの呼び捨てに明日歌は眉を顰めたが、相手はエルフである。人間の常識は通用しない。
諦めに肩を落としつつ、彼女はフトゥールに従った。
*
少し待っていろと言われ、隅のテーブルに着いていると、フトゥールは何かを手にして現れた。
「じゃ、まずはタロットの使い方からね」
フトゥールは青いヴェルヴェットのクロスをテーブルに広げた。
「第一に、占う場所は綺麗である事。そして、カードは必ずクロスの上で扱う事。第二に、カードは占う者以外触れない事。依頼者にカード混ぜさせたり引かせる占者も居るけど、このカードは特殊な力を持ったカードだから、仮令スペアであっても、安易に触れさせない事。汚れた手で触れないとか、汚さないというのは前提条件よ」
クロスの上に据えられたカードの山に、フトゥールは手を添える。
「占いを始める時には、カードを据えた状態で依頼者の相談内容を聞き出して。カウンセラーの成り損ないだと、相談時点で依頼者が言いたい事以上の内容を引き出しかねないけれど、あんまりに漠然とした内容ではない限り、あまり深く追求せずに、カードの示す過去と現在から状況を読み解いて」
「それで分かるんですか?」
依頼者の言葉無しに相談内容を解読しろと言うフトゥールに、明日歌は懐疑的だった。
「ええ。きちんとカードの意味を読み解けば分かるわ。そもそも、占いは言語だけを以てその問題を解決する物ではないの。神秘の力を此処に呼び寄せ、言葉にされていない、あるいは、依頼人自身でも言葉に出来ない真実を読み解き、その上で未来の道筋を照らすもの……どうしましょうか、どうしたいのでしょうかと占者自身が質問して、相手に決めさせるのは占いじゃないわ」
フトゥールは明日歌を見遣る。だが、不思議と明日歌は気を悪くしている様には見えなかった。
「あら? 相手の話を引き出して、受け止めて、こちらから出来る限り情報を提示せずに相手に考えさせるのがあなたの正義かと思ってたわ?」
明日歌は目を伏せ、口を開いた。
「いえ……それはそれで、根拠ある技法だとは思いますが……こちらから何も提示できずに、だらだら話だけ聞いて、結局何も解決出来ないのは無意味だと思いましたし……でも、結局、占いだってこちらからは何も言わないんですよね?」
「いや、そうでもないわよ、少なくとも私は」
「え?」
明日歌の見たフトゥールはあっけらかんとしていた。
「問題の質や依頼者の性分にもよるけど、こちらからある程度具体性のある対策を解読して伝える必要もあるわ。抽象的な解読から現実的かつ具体的な話に話が流れていく事もあるし、強制力は無いにしろ、こっちから踏み込んだ事を言う事だってあるわ。それこそ、人間はお説教される為にお金を払って手相見を頼んだりするんでしょ? 少々の事で文句を言われたら、もう来るなって塩撒いてやるわよ」
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