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11.甘いものは好きですか
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―雅人―
ライブ二日目。
メンバー達の控室を覗きに行くと、オープニングの衣装に着替え終わった瞬が近づいて来た。
「で?どうだったんですか」
「は?」
何の事かと首を傾げると、メイクしてる分いつもより作り物めいた瞬の顔が近づいてきた。
「で、え、と」
「?!」
一気に両耳が熱くなる。そんな俺の様子を見て、瞬は意地悪く口角を上げた。
「えー、なになに。良い感じでした?」
「何だ良い感じって!」
勢いで言い返し、はっとなる。
「お前!そういや余計な事吹き込んだだろ」
「え?何の話」
「俺が酒に酔うと泣き上戸になるとか……っ」
「あー」
それねえ、と瞬は何やら含みのある表情をした。
「何だよ」
「んー……だって朝陽さん、最初雅人さんのこと」
瞬が言い終わるのを遮る様に、やたらと明るい声が控え室に響き渡った。
「みんなー、見て見てー!」
振り向くと、千隼が有名スイーツ店の箱を両手に抱えて控室に入って来た。
「朝陽さんに差し入れ貰ったよ!」
名前を聞いただけで鼓動が変な感じに跳ねた。
「差し入れ?」
「うん、見て。めっちゃ美味しそうでしょー」
千隼が箱を広げて中身を見せてくる。
色とりどりのチョコがかかったエクレアが並んでいた。
「お疲れ様でーす」
聞き覚えのある声に顔を上げる。朝陽は俺と目が合うと、箱を指差して笑った。
「どうぞ、石黒さんも」
「え?いや、俺はいいですよ。メンバー達に」
「もしかして甘いの嫌いでした?」
聞かれ、答えに躊躇していると瞬が後ろから
「好きですよね?甘いもの」
と、また余計な事を口にした。
「あれ、そうなの?」
「こう見えて、めっちゃ甘党なんですよ」
「なんだ、こう見えてって!」
「普段は自分のイメージ気にして食べないんですけど」
「イメージって何?」
朝陽が吹き出す。
「あはは、なんか可愛い」
「何だ、可愛いって!」
「顔真っ赤ですよ、石黒さん」
言われ、余計に顔が熱くなる。
「別に、そういうわけじゃなくて」
しどろもどろな言い訳が口をつく。
「スイーツ店に男一人で入るのは勇気要るよな、とかそういう話を前にしただけで」
「行きたい店でもあるんですか?」
ない、と俺が言うより早く、今度は奏多が口を挟んでくる。
「あそこでしょ、原宿のど真ん中にあるパンケーキの」
「パンケーキ?」
朝陽が首を傾げる。
「男同士でも行けるのにねえ」
奏多と二人で行って来た、と前に話していた碧生が口を添える。朝陽が笑った。
「石黒さん、パンケーキが食べたいんですか?」
「いや食べたくないから!」
もはや意地になって言い返し、ちょっと用事がと嘘をついて、足早に控室から逃げ出した。
「石黒さん!」
背後から大声で呼び止められ、足を止めた。
「な、何ですか?」
駆け寄って来た朝陽の方を振り返ると、満面の笑みを返された。
「俺も好きですよ、パンケーキ」
「……はい?」
「行きましょうよ。原宿の、あの店」
「は?いや、ちょ」
混乱している間に畳み掛けられる。
「じゃ、ライブ終わったら連絡しますから!」
「えっ、あさ、……ま、松岡さん!」
呼び止めた声に、ひらひらと手を振って返された。
ライブ二日目。
メンバー達の控室を覗きに行くと、オープニングの衣装に着替え終わった瞬が近づいて来た。
「で?どうだったんですか」
「は?」
何の事かと首を傾げると、メイクしてる分いつもより作り物めいた瞬の顔が近づいてきた。
「で、え、と」
「?!」
一気に両耳が熱くなる。そんな俺の様子を見て、瞬は意地悪く口角を上げた。
「えー、なになに。良い感じでした?」
「何だ良い感じって!」
勢いで言い返し、はっとなる。
「お前!そういや余計な事吹き込んだだろ」
「え?何の話」
「俺が酒に酔うと泣き上戸になるとか……っ」
「あー」
それねえ、と瞬は何やら含みのある表情をした。
「何だよ」
「んー……だって朝陽さん、最初雅人さんのこと」
瞬が言い終わるのを遮る様に、やたらと明るい声が控え室に響き渡った。
「みんなー、見て見てー!」
振り向くと、千隼が有名スイーツ店の箱を両手に抱えて控室に入って来た。
「朝陽さんに差し入れ貰ったよ!」
名前を聞いただけで鼓動が変な感じに跳ねた。
「差し入れ?」
「うん、見て。めっちゃ美味しそうでしょー」
千隼が箱を広げて中身を見せてくる。
色とりどりのチョコがかかったエクレアが並んでいた。
「お疲れ様でーす」
聞き覚えのある声に顔を上げる。朝陽は俺と目が合うと、箱を指差して笑った。
「どうぞ、石黒さんも」
「え?いや、俺はいいですよ。メンバー達に」
「もしかして甘いの嫌いでした?」
聞かれ、答えに躊躇していると瞬が後ろから
「好きですよね?甘いもの」
と、また余計な事を口にした。
「あれ、そうなの?」
「こう見えて、めっちゃ甘党なんですよ」
「なんだ、こう見えてって!」
「普段は自分のイメージ気にして食べないんですけど」
「イメージって何?」
朝陽が吹き出す。
「あはは、なんか可愛い」
「何だ、可愛いって!」
「顔真っ赤ですよ、石黒さん」
言われ、余計に顔が熱くなる。
「別に、そういうわけじゃなくて」
しどろもどろな言い訳が口をつく。
「スイーツ店に男一人で入るのは勇気要るよな、とかそういう話を前にしただけで」
「行きたい店でもあるんですか?」
ない、と俺が言うより早く、今度は奏多が口を挟んでくる。
「あそこでしょ、原宿のど真ん中にあるパンケーキの」
「パンケーキ?」
朝陽が首を傾げる。
「男同士でも行けるのにねえ」
奏多と二人で行って来た、と前に話していた碧生が口を添える。朝陽が笑った。
「石黒さん、パンケーキが食べたいんですか?」
「いや食べたくないから!」
もはや意地になって言い返し、ちょっと用事がと嘘をついて、足早に控室から逃げ出した。
「石黒さん!」
背後から大声で呼び止められ、足を止めた。
「な、何ですか?」
駆け寄って来た朝陽の方を振り返ると、満面の笑みを返された。
「俺も好きですよ、パンケーキ」
「……はい?」
「行きましょうよ。原宿の、あの店」
「は?いや、ちょ」
混乱している間に畳み掛けられる。
「じゃ、ライブ終わったら連絡しますから!」
「えっ、あさ、……ま、松岡さん!」
呼び止めた声に、ひらひらと手を振って返された。
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