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第六話 君には笑顔が似合う
scene25 仲直り
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―大知―
"大知くんへ
この間はごめんなさい。
顔を見て話すべきやと思うけど、その場で上手く言葉にできる自信が無くて手紙を書きました。長くなるかもしれへんけど読んで欲しいです。
俺は、中学3年の時から耳が聞こえにくくなりました。
その頃にはもう推薦で進学先が決まってて、高校は家から通える普通課に入学したんやけど、どんどん病気が進行して学校に通うのが難しくなってしまいました。
前にハルとご飯食べた時にも話したと思うけど、俺とハルは同じダンス教室にずっと通ってた。でも耳が悪くなるにつれて当然ダンスもできなくなってきて、辞めた。
でも本当は、俺もハルや大知くんみたいにアイドルになりたかった。
耳が聞こえなくなっていく自分のことを受け入れられなくて、家から出られなくなった時期もあった。進級できなくて留年することになって、聴覚障害のある人が通う高校に転校した。手話はそこで覚えたんやけど、ハルも動画とか見ながら一緒に勉強してくれた。
少しずつ、聞こえない自分のことを受け入れられるようになったつもりやった。外で手話を使うとめっちゃ見られるし、補聴器にも視線を感じるけど、それも慣れとったつもりやった。
でも、あの日はすごく辛い気持ちになってしまった。
ライブで歌っとった大知くん、ほんまにかっこ良かった。優しい雰囲気の人やと思ってたから、ステージの上でがらっと変わった表情にめっちゃどきどきしたし、引き込まれて気づいたら夢中で見とった。
でも、聞こえんくて。何も。何歌ってるのか、どんなBGMなのか。トークの内容も、ファンの子が何に盛り上がって何が面白して笑ってるのかも全部分からんくて。
もどかしい気持ちで、苦しくなってしまった。
本屋で大知くんを待ってた時、大知くんの写真を鞄にぶら下げてる女の子がヘッドホンで音楽を聴いとった。それがすごく羨ましかった。妬ましくなった。
そんな気持ちになったのを誤魔化したくて本を見とったら、今度は知らない子に急にぶつかられて転ぶし、その子のお母さんに補聴器めっちゃ見られるし。
外へ出たら自転車に轢かれそうになるし、大知くんにはめっちゃ迷惑かけるし。
すごく苛々しちゃった。
大知くんに伝わらないって分かってたけど、気持ちをぶちまけられずにいられなかった。
何言ってるか分からんかったと思うけど、八つ当たりにしてもひどい事をいっぱい言った。大知くんは何も悪くないのに。
連絡してくるな、なんて送ってごめんなさい。すごく困らせたよね。
もう俺のこと嫌になったと思う。でもこのまま二度と顔を見せないのは卑怯やと思ったし、きちんと謝らなあかんと思って今日会いに来ました。
本当にごめんなさい。眞白"
読み終えて顔を上げると、青ざめた顔でコートの裾を握り締めている眞白と目が合った。
「足、もう大丈夫?」
指差して聞くと頷いてくれたので、良かった、と表情を緩めた。
「ちょっと座ろ?」
ベンチに座り、とんとん、と隣を叩く。
遠慮がちに近づいてきたかと思えば落ちそうなほど端に座ったので、こっち、と笑って空いた隙間を叩いた。
ようやく近くに座ってくれたところで、丁寧に折り畳んだ手紙を眞白に見せた。
「全部読んだよ」
硬い表情で頷きが返ってくる。眞白はポケットからスマホを出すと、震える指で文字を打ってこちらに見せてきた。
『本当にごめんなさい』
眞白のスマホを借り、返事を打つ。
『ううん。俺も配慮が足りなかったかも知れない。俺はただ、怪我した眞白が心配だっただけなんだけどな。もう連絡してくるなって言われてどうしようかと思ってたよ』
俺の返事を読んだ眞白の顔に焦りが浮かんだ。
『ごめんなさい、本当に、ごめ』
大慌てで連打し始めた手を掴んで止める。
「もういいよ。……あ」
こちらを見た眞白の手からスマホを取り、文字を打ち込んで画面を向けた。
『もう、ごめん禁止!』
いつぞや眞白に言われた台詞をそのまま返してやる。気づいたのか、ようやく眞白の口元に笑みが浮かんだ。
「……やっと笑った」
自分の頬に指を添える。ちょうど、眞白の頬にえくぼがへこむ場所に。
「眞白は、笑った顔が一番いいよ」
笑って、とゆっくり言うと、ぎこちない笑顔が返ってきた。何だか照れ臭くなって、つられるように笑ってしまう。
「……良かった」
ほっとして、さっき折り畳んだばかりの手紙をもう一度開いた。
「眞白、アイドルになりたかったんだ」
手紙の中の一文を指でなぞる。
「俺は眞白が見にきてくれたの嬉しかったんたけど、辛い気持ちにさせちゃってたんだね……」
独り言の様に呟いていたら控えめに腕を叩かれて、音声入力アプリの画面を向けられた。
ああ、そうか。
こんな何気ない一言すら伝わらないもどかしさに、眞白は傷ついてたんだね。
スマホを受け取り、マイクボタンを押す。
「眞白。これからも俺と仲良くしてくれる?」
表示された文字を見て、眞白はしっかりと頷いてくれた。
「じゃあこれからはもっと、色んなことを話せる様になりたい。たくさん、眞白の事を教えてほしい。どんな事を考えて、どんな風に感じるのか…。もっと、眞白のことが知りたいから」
読んでいる眞白の目に、うっすらと膜が張る。
『俺も、大知くんとちゃんと仲良くなりたい』
うん、と頷く。眞白も頷き、もう一言付け加えた。
『友だちになりたい』
「ええ?もうなってると思ってたのに……」
吹き出した俺を見て、眞白が不思議そうに首を傾げる。
「うん、なろう。今度こそちゃんと」
立ち上がり、眞白に向けて手を差し出す。
「そろそろ行こっか」
戸惑いつつも素直に俺の手を取った眞白の細い手を握り、軽く引っ張って立たせた。
どうやってここまで来たの、と聞くと、実は悠貴の部屋に泊まっていたことが分かったので、並んで歩き出す。『star.b』は皆んな、同じマンションの違う部屋に住んでいるからだ。
車道側を歩きながら、そっと眞白の横顔を盗み見た。すぐに気づかれて目が合って、何だか恥ずかしくなってお互いに笑ってしまう。
……ああ、良かった。またこうやって笑えるようになって。
すっかり陽が昇って明るくなった空を見上げる。
――ねえ、眞白。
俺と友だちになりたいって言ったけど、俺はそうじゃないよ。
拳ひとつ分空けて歩く今のこの距離さえ、縮めてしまいたいもどかしさでいっぱいなんだ。
俺がこんな気持ちでいること、どうやったら君に伝えられるんだろう。
"大知くんへ
この間はごめんなさい。
顔を見て話すべきやと思うけど、その場で上手く言葉にできる自信が無くて手紙を書きました。長くなるかもしれへんけど読んで欲しいです。
俺は、中学3年の時から耳が聞こえにくくなりました。
その頃にはもう推薦で進学先が決まってて、高校は家から通える普通課に入学したんやけど、どんどん病気が進行して学校に通うのが難しくなってしまいました。
前にハルとご飯食べた時にも話したと思うけど、俺とハルは同じダンス教室にずっと通ってた。でも耳が悪くなるにつれて当然ダンスもできなくなってきて、辞めた。
でも本当は、俺もハルや大知くんみたいにアイドルになりたかった。
耳が聞こえなくなっていく自分のことを受け入れられなくて、家から出られなくなった時期もあった。進級できなくて留年することになって、聴覚障害のある人が通う高校に転校した。手話はそこで覚えたんやけど、ハルも動画とか見ながら一緒に勉強してくれた。
少しずつ、聞こえない自分のことを受け入れられるようになったつもりやった。外で手話を使うとめっちゃ見られるし、補聴器にも視線を感じるけど、それも慣れとったつもりやった。
でも、あの日はすごく辛い気持ちになってしまった。
ライブで歌っとった大知くん、ほんまにかっこ良かった。優しい雰囲気の人やと思ってたから、ステージの上でがらっと変わった表情にめっちゃどきどきしたし、引き込まれて気づいたら夢中で見とった。
でも、聞こえんくて。何も。何歌ってるのか、どんなBGMなのか。トークの内容も、ファンの子が何に盛り上がって何が面白して笑ってるのかも全部分からんくて。
もどかしい気持ちで、苦しくなってしまった。
本屋で大知くんを待ってた時、大知くんの写真を鞄にぶら下げてる女の子がヘッドホンで音楽を聴いとった。それがすごく羨ましかった。妬ましくなった。
そんな気持ちになったのを誤魔化したくて本を見とったら、今度は知らない子に急にぶつかられて転ぶし、その子のお母さんに補聴器めっちゃ見られるし。
外へ出たら自転車に轢かれそうになるし、大知くんにはめっちゃ迷惑かけるし。
すごく苛々しちゃった。
大知くんに伝わらないって分かってたけど、気持ちをぶちまけられずにいられなかった。
何言ってるか分からんかったと思うけど、八つ当たりにしてもひどい事をいっぱい言った。大知くんは何も悪くないのに。
連絡してくるな、なんて送ってごめんなさい。すごく困らせたよね。
もう俺のこと嫌になったと思う。でもこのまま二度と顔を見せないのは卑怯やと思ったし、きちんと謝らなあかんと思って今日会いに来ました。
本当にごめんなさい。眞白"
読み終えて顔を上げると、青ざめた顔でコートの裾を握り締めている眞白と目が合った。
「足、もう大丈夫?」
指差して聞くと頷いてくれたので、良かった、と表情を緩めた。
「ちょっと座ろ?」
ベンチに座り、とんとん、と隣を叩く。
遠慮がちに近づいてきたかと思えば落ちそうなほど端に座ったので、こっち、と笑って空いた隙間を叩いた。
ようやく近くに座ってくれたところで、丁寧に折り畳んだ手紙を眞白に見せた。
「全部読んだよ」
硬い表情で頷きが返ってくる。眞白はポケットからスマホを出すと、震える指で文字を打ってこちらに見せてきた。
『本当にごめんなさい』
眞白のスマホを借り、返事を打つ。
『ううん。俺も配慮が足りなかったかも知れない。俺はただ、怪我した眞白が心配だっただけなんだけどな。もう連絡してくるなって言われてどうしようかと思ってたよ』
俺の返事を読んだ眞白の顔に焦りが浮かんだ。
『ごめんなさい、本当に、ごめ』
大慌てで連打し始めた手を掴んで止める。
「もういいよ。……あ」
こちらを見た眞白の手からスマホを取り、文字を打ち込んで画面を向けた。
『もう、ごめん禁止!』
いつぞや眞白に言われた台詞をそのまま返してやる。気づいたのか、ようやく眞白の口元に笑みが浮かんだ。
「……やっと笑った」
自分の頬に指を添える。ちょうど、眞白の頬にえくぼがへこむ場所に。
「眞白は、笑った顔が一番いいよ」
笑って、とゆっくり言うと、ぎこちない笑顔が返ってきた。何だか照れ臭くなって、つられるように笑ってしまう。
「……良かった」
ほっとして、さっき折り畳んだばかりの手紙をもう一度開いた。
「眞白、アイドルになりたかったんだ」
手紙の中の一文を指でなぞる。
「俺は眞白が見にきてくれたの嬉しかったんたけど、辛い気持ちにさせちゃってたんだね……」
独り言の様に呟いていたら控えめに腕を叩かれて、音声入力アプリの画面を向けられた。
ああ、そうか。
こんな何気ない一言すら伝わらないもどかしさに、眞白は傷ついてたんだね。
スマホを受け取り、マイクボタンを押す。
「眞白。これからも俺と仲良くしてくれる?」
表示された文字を見て、眞白はしっかりと頷いてくれた。
「じゃあこれからはもっと、色んなことを話せる様になりたい。たくさん、眞白の事を教えてほしい。どんな事を考えて、どんな風に感じるのか…。もっと、眞白のことが知りたいから」
読んでいる眞白の目に、うっすらと膜が張る。
『俺も、大知くんとちゃんと仲良くなりたい』
うん、と頷く。眞白も頷き、もう一言付け加えた。
『友だちになりたい』
「ええ?もうなってると思ってたのに……」
吹き出した俺を見て、眞白が不思議そうに首を傾げる。
「うん、なろう。今度こそちゃんと」
立ち上がり、眞白に向けて手を差し出す。
「そろそろ行こっか」
戸惑いつつも素直に俺の手を取った眞白の細い手を握り、軽く引っ張って立たせた。
どうやってここまで来たの、と聞くと、実は悠貴の部屋に泊まっていたことが分かったので、並んで歩き出す。『star.b』は皆んな、同じマンションの違う部屋に住んでいるからだ。
車道側を歩きながら、そっと眞白の横顔を盗み見た。すぐに気づかれて目が合って、何だか恥ずかしくなってお互いに笑ってしまう。
……ああ、良かった。またこうやって笑えるようになって。
すっかり陽が昇って明るくなった空を見上げる。
――ねえ、眞白。
俺と友だちになりたいって言ったけど、俺はそうじゃないよ。
拳ひとつ分空けて歩く今のこの距離さえ、縮めてしまいたいもどかしさでいっぱいなんだ。
俺がこんな気持ちでいること、どうやったら君に伝えられるんだろう。
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