2 / 26
異世界に転生してしまったようです
01
しおりを挟む
♢ ♢ ♢
ここは、魔法の世界の『フィアーバ』と呼ばれる国。レンガ造りの建物の中は火の魔法でほんのり明るく照らされ、雷の魔法で動く機関車。水の魔法で大地に雨を降らせ、土の魔法を使い人々は植物を育てるのだ。何の変哲もないただのガラスを美しいガラス細工に加工する際に出るガラスの破片が舞う風の魔法の美しいこと。人々は当たり前のように魔法を使い、人々の生活の中には魔法が根付いている。
そんな魔法の世界に生まれ落ちた私は、アリア・マーベルと名付けられた。幸いにもこの世界で名だたる名家であるマーベル家に生まれついた私は、生まれてから今日まで何不自由なく育てられた。端的に言ってしまえば、甘やかされに、甘やかされて育ったのである。そんな私も本日で、御年12歳。この世に手に入らないものはない、そう信じて疑わないほどだった。
……そう、信じていたのである。先ほどまでは。
♢ ♢ ♢
事の発端は、ほんの少し前のこと。私が癇癪を起こしたことから始まる。
12歳の私の誕生日会。蝶よ、花よで育てられ、傲慢に育ってしまった私は、自分の思い通りにいかなければ、すぐに癇癪を起こして、周りの人を困らせてしまっていた。この日は、自分のお気に入りのドレス、お気に入りの宝石を身につけて、気分良く他の御曹司、令嬢に挨拶をしてまわっていた。その際に、とある令嬢が私に尋ねたのだ。
『アリア様は、魔法がお使えにならないっていうのは本当ですか?』
『フィアーバ』に住む人々はみな魔力を持って生まれてくる。魔法が生活に根付いているだけあって、どんなに貧しい人でも、どんなに小さな幼子でも魔法を扱うことができるのである。
しかしながら、私、アリア・マーベルは、魔法を使う以前に魔力が全くない。それを周りの誰からもとやかく言われたことがなかった。
『本当よ』
魔法が使いたければメイドや執事に頼めばすぐに叶えてくれた。だから、それを不幸だとかそんなふうに思ったことはなかった。
『そう、それは可哀想に』
けれども、私の返答に対して、彼女は私を哀れんだ。彼女としては、そんなつもりはなかったかもしれなかったが、傲慢知己に育った私にはどうしてもそれが許せなかったのである。
『私を哀れむなんておこがましいわ!』
そういって、思わず彼女につかみかかろうとしたところで、自分のドレスの裾を踏み、床に頭を強く打ち付けた。薄れゆく意識の中で、私はあることを思い出したのである。
そう……、私の前世の記憶を。
ここは、魔法の世界の『フィアーバ』と呼ばれる国。レンガ造りの建物の中は火の魔法でほんのり明るく照らされ、雷の魔法で動く機関車。水の魔法で大地に雨を降らせ、土の魔法を使い人々は植物を育てるのだ。何の変哲もないただのガラスを美しいガラス細工に加工する際に出るガラスの破片が舞う風の魔法の美しいこと。人々は当たり前のように魔法を使い、人々の生活の中には魔法が根付いている。
そんな魔法の世界に生まれ落ちた私は、アリア・マーベルと名付けられた。幸いにもこの世界で名だたる名家であるマーベル家に生まれついた私は、生まれてから今日まで何不自由なく育てられた。端的に言ってしまえば、甘やかされに、甘やかされて育ったのである。そんな私も本日で、御年12歳。この世に手に入らないものはない、そう信じて疑わないほどだった。
……そう、信じていたのである。先ほどまでは。
♢ ♢ ♢
事の発端は、ほんの少し前のこと。私が癇癪を起こしたことから始まる。
12歳の私の誕生日会。蝶よ、花よで育てられ、傲慢に育ってしまった私は、自分の思い通りにいかなければ、すぐに癇癪を起こして、周りの人を困らせてしまっていた。この日は、自分のお気に入りのドレス、お気に入りの宝石を身につけて、気分良く他の御曹司、令嬢に挨拶をしてまわっていた。その際に、とある令嬢が私に尋ねたのだ。
『アリア様は、魔法がお使えにならないっていうのは本当ですか?』
『フィアーバ』に住む人々はみな魔力を持って生まれてくる。魔法が生活に根付いているだけあって、どんなに貧しい人でも、どんなに小さな幼子でも魔法を扱うことができるのである。
しかしながら、私、アリア・マーベルは、魔法を使う以前に魔力が全くない。それを周りの誰からもとやかく言われたことがなかった。
『本当よ』
魔法が使いたければメイドや執事に頼めばすぐに叶えてくれた。だから、それを不幸だとかそんなふうに思ったことはなかった。
『そう、それは可哀想に』
けれども、私の返答に対して、彼女は私を哀れんだ。彼女としては、そんなつもりはなかったかもしれなかったが、傲慢知己に育った私にはどうしてもそれが許せなかったのである。
『私を哀れむなんておこがましいわ!』
そういって、思わず彼女につかみかかろうとしたところで、自分のドレスの裾を踏み、床に頭を強く打ち付けた。薄れゆく意識の中で、私はあることを思い出したのである。
そう……、私の前世の記憶を。
0
お気に入りに追加
1,727
あなたにおすすめの小説
二度目の人生は異世界で溺愛されています
ノッポ
恋愛
私はブラック企業で働く彼氏ナシのおひとりさまアラフォー会社員だった。
ある日 信号で轢かれそうな男の子を助けたことがキッカケで異世界に行くことに。
加護とチート有りな上に超絶美少女にまでしてもらったけど……中身は今まで喪女の地味女だったので周りの環境変化にタジタジ。
おまけに女性が少ない世界のため
夫をたくさん持つことになりー……
周りに流されて愛されてつつ たまに前世の知識で少しだけ生活を改善しながら異世界で生きていくお話。
婚約破棄されたら魔法が解けました
かな
恋愛
「クロエ・ベネット。お前との婚約は破棄する。」
それは学園の卒業パーティーでの出来事だった。……やっぱり、ダメだったんだ。周りがザワザワと騒ぎ出す中、ただ1人『クロエ・ベネット』だけは冷静に事実を受け止めていた。乙女ゲームの世界に転生してから10年。国外追放を回避する為に、そして后妃となる為に努力し続けて来たその時間が無駄になった瞬間だった。そんな彼女に追い打ちをかけるかのように、王太子であるエドワード・ホワイトは聖女を新たな婚約者とすることを発表した。その後はトントン拍子にことが運び、冤罪をかけられ、ゲームのシナリオ通り国外追放になった。そして、魔物に襲われて死ぬ。……そんな運命を辿るはずだった。
「こんなことなら、転生なんてしたくなかった。元の世界に戻りたい……」
あろうことか、最後の願いとしてそう思った瞬間に、全身が光り出したのだ。そして気がつくと、なんと前世の姿に戻っていた!しかもそれを第二王子であるアルベルトに見られていて……。
「……まさかこんなことになるなんてね。……それでどうする?あの2人復讐でもしちゃう?今の君なら、それができるよ。」
死を覚悟した絶望から転生特典を得た主人公の大逆転溺愛ラブストーリー!
※最初の5話は毎日18時に投稿、それ以降は毎週土曜日の18時に投稿する予定です
悪役令嬢に転生したと思ったら悪役令嬢の母親でした~娘は私が責任もって育てて見せます~
平山和人
恋愛
平凡なOLの私は乙女ゲーム『聖と魔と乙女のレガリア』の世界に転生してしまう。
しかも、私が悪役令嬢の母となってしまい、ゲームをめちゃくちゃにする悪役令嬢「エレローラ」が生まれてしまった。
このままでは我が家は破滅だ。私はエレローラをまともに教育することを決心する。
教育方針を巡って夫と対立したり、他の貴族から嫌われたりと辛い日々が続くが、それでも私は母として、頑張ることを諦めない。必ず娘を真っ当な令嬢にしてみせる。これは娘が悪役令嬢になってしまうと知り、奮闘する母親を描いたお話である。
モブなのに、転生した乙女ゲームの攻略対象に追いかけられてしまったので全力で拒否します
みゅー
恋愛
乙女ゲームに、転生してしまった瑛子は自分の前世を思い出し、前世で培った処世術をフル活用しながら過ごしているうちに何故か、全く興味のない攻略対象に好かれてしまい、全力で逃げようとするが……
余談ですが、小説家になろうの方で題名が既に国語力無さすぎて読むきにもなれない、教師相手だと淫行と言う意見あり。
皆さんも、作者の国語力のなさや教師と生徒カップル無理な人はプラウザバック宜しくです。
作者に国語力ないのは周知の事実ですので、指摘なくても大丈夫です✨
あと『追われてしまった』と言う言葉がおかしいとの指摘も既にいただいております。
やらかしちゃったと言うニュアンスで使用していますので、ご了承下さいませ。
この説明書いていて、海外の商品は訴えられるから、説明書が長くなるって話を思いだしました。
ヤンデレお兄様に殺されたくないので、ブラコンやめます!(長編版)
夕立悠理
恋愛
──だって、好きでいてもしかたないもの。
ヴァイオレットは、思い出した。ここは、ロマンス小説の世界で、ヴァイオレットは義兄の恋人をいじめたあげくにヤンデレな義兄に殺される悪役令嬢だと。
って、むりむりむり。死ぬとかむりですから!
せっかく転生したんだし、魔法とか気ままに楽しみたいよね。ということで、ずっと好きだった恋心は封印し、ブラコンをやめることに。
新たな恋のお相手は、公爵令嬢なんだし、王子様とかどうかなー!?なんてうきうきわくわくしていると。
なんだかお兄様の様子がおかしい……?
※小説になろうさまでも掲載しています
※以前連載していたやつの長編版です
悪役令嬢は二度も断罪されたくない!~あのー、私に平穏な暮らしをさせてくれませんか?~
イトカワジンカイ
恋愛
(あれって…もしや断罪イベントだった?)
グランディアス王国の貴族令嬢で王子の婚約者だったアドリアーヌは、国外追放になり敵国に送られる馬車の中で不意に前世の記憶を思い出した。
「あー、小説とかでよく似たパターンがあったような」
そう、これは前世でプレイした乙女ゲームの世界。だが、元社畜だった社畜パワーを活かしアドリアーヌは逆にこの世界を満喫することを決意する。
(これで憧れのスローライフが楽しめる。ターシャ・デューダのような自給自足ののんびり生活をするぞ!)
と公爵令嬢という貴族社会から離れた”平穏な暮らし”を夢見ながら敵国での生活をはじめるのだが、そこはアドリアーヌが断罪されたゲームの続編の世界だった。
続編の世界でも断罪されることを思い出したアドリアーヌだったが、悲しいかな攻略対象たちと必然のように関わることになってしまう。
さぁ…アドリアーヌは2度目の断罪イベントを受けることなく、平穏な暮らしを取り戻すことができるのか!?
「あのー、私に平穏な暮らしをさせてくれませんか?」
※ファンタジーなので細かいご都合設定は多めに見てください(´・ω・`)
※小説家になろう、ノベルバにも掲載
皇太子の子を妊娠した悪役令嬢は逃げることにした
葉柚
恋愛
皇太子の子を妊娠した悪役令嬢のレイチェルは幸せいっぱいに暮らしていました。
でも、妊娠を切っ掛けに前世の記憶がよみがえり、悪役令嬢だということに気づいたレイチェルは皇太子の前から逃げ出すことにしました。
本編完結済みです。時々番外編を追加します。
転生悪役令嬢、物語の動きに逆らっていたら運命の番発見!?
下菊みこと
恋愛
世界でも獣人族と人族が手を取り合って暮らす国、アルヴィア王国。その筆頭公爵家に生まれたのが主人公、エリアーヌ・ビジュー・デルフィーヌだった。わがまま放題に育っていた彼女は、しかしある日突然原因不明の頭痛に見舞われ数日間寝込み、ようやく落ち着いた時には別人のように良い子になっていた。
エリアーヌは、前世の記憶を思い出したのである。その記憶が正しければ、この世界はエリアーヌのやり込んでいた乙女ゲームの世界。そして、エリアーヌは人族の平民出身である聖女…つまりヒロインを虐めて、規律の厳しい問題児だらけの修道院に送られる悪役令嬢だった!
なんとか方向を変えようと、あれやこれやと動いている間に獣人族である彼女は、運命の番を発見!?そして、孤児だった人族の番を連れて帰りなんやかんやとお世話することに。
果たしてエリアーヌは運命の番を幸せに出来るのか。
そしてエリアーヌ自身の明日はどっちだ!?
小説家になろう様でも投稿しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる