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異世界に転生してしまったようです

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 ここは、魔法の世界の『フィアーバ』と呼ばれる国。レンガ造りの建物の中は火の魔法でほんのり明るく照らされ、雷の魔法で動く機関車。水の魔法で大地に雨を降らせ、土の魔法を使い人々は植物を育てるのだ。何の変哲もないただのガラスを美しいガラス細工に加工する際に出るガラスの破片が舞う風の魔法の美しいこと。人々は当たり前のように魔法を使い、人々の生活の中には魔法が根付いている。

 そんな魔法の世界に生まれ落ちた私は、アリア・マーベルと名付けられた。幸いにもこの世界で名だたる名家であるマーベル家に生まれついた私は、生まれてから今日まで何不自由なく育てられた。端的に言ってしまえば、甘やかされに、甘やかされて育ったのである。そんな私も本日で、御年12歳。この世に手に入らないものはない、そう信じて疑わないほどだった。






……そう、信じていたのである。先ほどまでは。



♢ ♢ ♢





事の発端は、ほんの少し前のこと。私が癇癪を起こしたことから始まる。



 12歳の私の誕生日会。蝶よ、花よで育てられ、傲慢に育ってしまった私は、自分の思い通りにいかなければ、すぐに癇癪を起こして、周りの人を困らせてしまっていた。この日は、自分のお気に入りのドレス、お気に入りの宝石を身につけて、気分良く他の御曹司、令嬢に挨拶をしてまわっていた。その際に、とある令嬢が私に尋ねたのだ。


『アリア様は、魔法がお使えにならないっていうのは本当ですか?』


 『フィアーバ』に住む人々はみな魔力を持って生まれてくる。魔法が生活に根付いているだけあって、どんなに貧しい人でも、どんなに小さな幼子でも魔法を扱うことができるのである。

 しかしながら、私、アリア・マーベルは、魔法を使う以前に魔力が全くない。それを周りの誰からもとやかく言われたことがなかった。


『本当よ』


 魔法が使いたければメイドや執事に頼めばすぐに叶えてくれた。だから、それを不幸だとかそんなふうに思ったことはなかった。


『そう、それは可哀想に』


 けれども、私の返答に対して、彼女は私を哀れんだ。彼女としては、そんなつもりはなかったかもしれなかったが、傲慢知己に育った私にはどうしてもそれが許せなかったのである。



『私を哀れむなんておこがましいわ!』


 そういって、思わず彼女につかみかかろうとしたところで、自分のドレスの裾を踏み、床に頭を強く打ち付けた。薄れゆく意識の中で、私はあることを思い出したのである。




そう……、私の前世の記憶を。


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