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ライバル令嬢登場!?

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煙管の中に入っていた刻み煙草がすべて灰になったのか、ノアはコンコンと地面に煙管を叩きつけていた。そんな彼の様子を見ながら、わかっている状況を頭の中で整理する。

 一つ、私は今知らない部屋に拘束されている。そして、ノアという見張りがいるため、下手な行動はできない。ロープも自力では解けそうもない。しかし、今のところノアは私に対して怪我をさせるなどの行為は行っていないし、本人も大人しくしなければ手荒なことはしないと公言している。

 二つ、この計画の首謀者は『ベル・フォーサイス』。何の目的かはわからないが、彼女は私に化けてレイ君に近づこうとしている。ノア曰く、レイ君に怪我をさせたりなどの外傷を負わしたりはしないだろうとのこと。ノアは、何故だか“姉”を強調していたが、“姉”として心配しているなら、さほど心配いらないのだという。まぁ、確かに自分が婚約したいと思っていた人を傷つけたりはしないか。

 そんなことを考えて、ふとある疑問が湧き

「ねぇ、ノア」

と呼びかける。コンコンと叩いていた煙管を置いて、ノアは私を見た。紅色の瞳と目が合う。

「レイ君が探知魔法で私を探していたんなら、私に化けたベル・フォーサイスが私じゃないってバレるんじゃない?」

 探知魔法はセンスがいるある意味特殊な魔法だ。それこそ探知魔法が使えたら、この世界で探偵として食っていけるレベルだ。発動することができる人は稀だと聞いたことがあった。

だから、私は探知魔法は使えない。けれど、探知魔法は探したい人を念じるとその人の気配を光の筋が導くのだと聞いたことがあった。気配が突然途絶えていた人物が突然現れたら不自然すぎる。レイ君も不審がるはずだ。そう思って問いただせば

「それは心配ない」

ノアはあっさりと私の問いを否定して

「あんたをここにテレポートする前にちゃんと一仕事したからな」

と続けた。

(どういうこと?)

 意味がわからず首を傾げると語り出した。

「人を探すときに手っ取り早いのが探知魔法だ。光の筋を辿るだけでいいんだからな」
「えぇ、そうね」
「けど、移動魔法を使われた時にはその光の筋を辿ることができない。じゃあ、どうすればいいか、感知魔法を使えばいいのさ」
「感知魔法?」

聞き慣れない言葉にまたも私は首を傾げた。そんな私に『まぁ、あんたが知らないのも無理はないか。感知魔法は、探知魔法以上にセンスと魔力が高くないと使えないからな』と前置きしてから、ノアは口を開く。

「感知魔法は探知魔法と違って気配を感知する。人によって探すことのできる範囲は違うけれど、自分が探せる範囲の中にいれば、どんな気配でも感知することができる。レイ・ガルシアは、これが使えるらしいからな。だから、探知できなければ、感知魔法に切り替えるだろうよ」
「けど、それじゃあ、この場所がわかるんじゃ」
「さっきもいったが、ここは結界魔法をかけている。どんな魔法でも遮断する空間だ。だから、感知魔法をかけたところで見つからない。だから、俺はこれを利用した」
「利用?」

 レイ君が探知魔法を使うことで、ベル・フォーサイスが私に化けているのがばれない細工ができるとは思えず首を傾げると

「だから、この場所に来る前、ここの反対側にある庭園に一度寄ったんだ」

とノアはそう言って、どこか得気に語る。

「あんたの気配は塔のところで途切れている。けど、途絶えていた気配が、感知魔法を使うことで、庭園で気配を感知できる。それに、俺の変身魔法は人にかけるときは多少時間がかかるからな、レイ・ガルシアにはあんたを探すために手間取ってもらわないといけなかった。あの場所から庭園に行くには走っていくしかない。しかも、あの高い塔。下に降りるにも時間がかかる。クライアントがレイ・ガルシアを出迎えるには十分な時間だ」
「つまり、庭園でベル・フォーサイスは待っているってことね」

 ノアの意図することがわかりそう口にすれば、『あんた察しがいいな』と首を竦めて、こう一言言い放った。

「気配を感知した先に探しているあんたの姿をした奴がいたら、レイ・ガルシアはどう思うだろうね?」

 ノアの言葉に確かにと心の中で思った。

それでは、私に化けたベル・フォーサイスをレイ君は私だと疑いようがない。


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