甘過ぎるオフィスで塩過ぎる彼と・・・

Love gauge:30 楽し過ぎる夜

＊12＊

「・・・もう遅いから、風呂入って寝ろ。明日も朝から仕事だ。」

そう言われて時計を見ると23時を過ぎていた。

「もうこんな時間なんだ・・・すごく楽しくて気づかなかったです。」

「・・・その答えで十分だよ。」

トキが照れたように笑って胸が条件反射みたいにキュンと鳴った。

「じゃ・・・おやすみ。」

そう言って踵を返そうとした彼の目が窓際に置いてあるものに吸い寄せられた。

「・・・これってもしかしてソーラー金魚？」

それはソーラーパネルつきの土台に金魚鉢が乗ったもので日光や蛍光灯の光をパネルに当てると、水の中に入れた金魚が動く、というインテリアであった。

「そうです。ご存じでしたか？」

「うん。気になってた。」

「エサもいらないし、お水はたまに替えますけれど、お掃除はしなくていいし、癒されますよ。動きが本物みたいなんです。見てみてください。」

話しながら起き上がって窓際まで行きソーラー金魚を持ち上げてトキに差し出す。鉢の中ではオレンジ色の金魚がエラとしっぽをパタパタ動かしている。

「ほんとだ。」

「癒されますよね。」

「いいな、俺も買おうかな。」

「あ、もしよかったらこれ、トキの部屋に置きましょうか？そうしたら二人とも仕事中に見られるし。」

「仕事終わって部屋に帰ってきて見た方がいいんじゃないの？」

「いえ、金魚も私だけでなくトキにも喜んでもらった方が嬉しいと思うし。ね？」

金魚鉢を斜めにして金魚が『うん。』と頷いたことにしようとすると、鉢が土台から落ちそうになる。慌てて支えようとするとトキも同じようにした為、手が重なった。