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第一章 幼少期編

10.方針

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「よし、それじゃぁアルの能力を踏まえて、改めてこれからの方針を立てるぞ」

 父さんの言葉に、皆姿勢を正して注目する。

「まず一つ目。アルの能力は絶対に外には漏らさない。スキルの数についてもそうだが、スキルが発現していることも黙っておいた方がいいだろう」

 それはそうだろう。
 わざわざ危険を冒して能力を明かす必要は無い。

「そして二つ目。俺は引き続きこの別邸に住み続け、当主には興味を示さない体を続ける。これは俺やアルに要らぬ被害が及ばないための予防策だな。本当に当主を狙うかどうかは、アルの能力が全て分かってから、改めて方針を立てることにする」

 なるほど。勝ち目の無い勝負はしないってことか。
 それもそうか。相手はこの国の大貴族がバックにいるんだ。
 下手に手を出したら火傷では済まないだろう。

「そして最後は、アルの育成だ。先ずは言葉を覚えて話せるようにしてもらう。その後は書き取りも出来る様になってもらうが、それは余り急がなくてもいいだろう。そしてそれと並行して、魔力の強化も行う予定だ」

 おぉ、魔力の強化か。
 なんだかワクワクしてくるワードだな。
 
 俺が一人テンションを上げていると、隣で聞いていた母さんから待ったが掛かった。

「ちょっとまってフィリップ。言葉はともかく、魔力は流石に早いんじゃないかしら。いくらなんでも、零才から魔力強化を行うなんて聞いたことがないわ……」

 そう言って、心配そうに俺を見つめる母さん。
 しかし母さんよ、その心配には及びませんぜ。
 いや、実際に早期の魔力強化が体に悪影響を及ぼすかどうかは分からないが、俺はもうすでに乗り気なのだ。
 このままお預けなんて、ちょっと無理でござる。

「まぁまぁマリー、そう言うな。確かに前例はないが、子供の頃の魔力強化が魔力量に多大な影響を及ぼすことはマリーも知っているだろう。それにアルは俺と同じで、属性魔法は多分使えないんだ。危ない事にはならないよ」

 そう言いながら、優しく母さんの方を撫でるフィリップ父さん。
 おうおう、お熱いですなぁ。
 まぁ魔力強化がお預けにならなくて良かった良かった。

 ……ん? 今、属性魔法が使えないって言ったか?

「……あぶ?」

 伝わるかどうかは分からないが、とりあえず疑問の言葉を投げかけてみる。
 すると父さんは俺に気付いたのか、こちらに顔を向けて“あぁ”と納得した顔を見せる。

「そういえば言ったなかったな。お前の髪は、俺と同じ銀髪だ。フォルコも同じだな。そして銀髪の人間は、たいていのやつが属性魔法が使えないんだよ。生活魔法レベルが関の山だな。だから安心しろよアル。どれだけ魔力を強化しようとも、間違って魔力が暴発するなんてことは起こんねぇからな!」

 そう言って父さんは、憎たらしい程爽やかな笑顔で俺の頭を撫でてきた。
 それはもう楽し気に。
 そうして俺は、魔法強化に対するモチベーションを、大きく損なうことになってしまったのであった。

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