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失敗談
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前置きをしようと思う。
よかれと思ってやったことが裏目に出てしまう事ってあるんじゃないだろうか?
そんな事、太郎はしょっちゅうじゃないか? とか言わないで欲しい。
出来ることが多かろうが少なかろうが、実行すれば失敗と成功、どちらの可能性も常にあるのだと、いつでも心の準備はいるのかもしれない。
さて……心の予防線も張った所で、そろそろ語るとしよう。
それは俺が新しいパソコンユーザーを開拓しに行った時の出来事だった……。
「それじゃあ、パソコンを置いてもらう代わりに、この村を守る何かを作るってことでOKですか?」
「はぁ、魔獣も最近多いですし……それはうれしいのですが。どうするおつもりですか?」
テーブルをはさんだ向こう側に座っている村長さんは、露骨にうさん臭そうな顔をしていた。
だが突然の申し出に、こうして時間を割いてくれるだけでもありがたい。
その上、条件さえ満たせば申し出を受けてくれると言うのだから、こちらは最高の魔法をもってして応えるだけだ。
「そうですね……例えば、村全体を高い壁で覆ってしまうってのはどうです?」
「……壁ですか? それは壁を建てる工事をせよという事でしょうか? とてもこの村にそんな蓄えはありませんし。今はあまり人手も割けませんが?」
何言ってんだこいつ? みたいな顔だった。
そりゃそうだろう。貴方は正しい。だがあえて間違っていると俺は言えてしまうのだ。
「人手が少ないので?」
「はい。こんなご時勢ですからね。出稼ぎに出ている物も多いですし……」
あまり無茶を言わないでと続きそうな村長さんの台詞を食い気味に、俺は大きく頷いて身を乗り出していた。
「そんな状態なら、なおさら急がないと! 突然の災難はいつ降りかかるかわからないのですから! 人も蓄えもないならきっと私がお役に立てますとも! 大丈夫、大丈夫! お金なんて少しもいらないですよ? これでも魔法使いなんでね!」
ここぞとばかりにゴリ押しである。村長さんの心底困り顔が変わるのを信じて、今は押しに押す時だ。
結局俺に押し負けて、村長さんは折れた。
「はぁ……まぁ何もする必要がないと言うのなら、勝手にやってもらって構わんのですがね。……念のため、私が見ていてもかまいませんか? これでも村の責任者ですので」
「それはいいですね! こちらも私がやったと見届けてもらわないと、困りますから!」
「は、はぁ」
確実にペテン師の類だと思われているに違いないが、ここで少しでも自身のないところでも見せればあっという間に追い出されてしまう。
考えが例えふわっふわしているとしても、自信満々でいくべきだ。
なに、安心して欲しい。約束はきっちり守る。
必要以上かもしれないとはあえて言わないけれど、間違いなくその自信だけはあったのだ。
村の外には特に何もない。森を切り開いて作られたらしい村は、全体的に平地で何か大がかりな事をするにはうってつけ……いやいや、こうして頼み事を全うするにはアイディアが出やすそうだった。
だがやはり賛同いただいている事だし、ここは手堅く壁の案でいってみるのがいいかもしれない。要望に応えるのは大事な事である。
そろそろ見た目わかりやすくすごい事をやって、魔法使いだって所を見てもらわないと、村長さんの疑惑の視線が犯罪者を見るそれに変わりそうだった。
まぁ、村の生活に支障があってはまずいだろうから、それ相応の大きさは必要だ。そこまで決め、出来るだけ急いで俺は魔法を行使する。
「それではさっそく始めましょうか。なに、竜が踏んでも壊れないすんごい壁を期待してください!」
「はい? はは……ええ、期待しますよ」
「よっと!」
村長さんの愛想笑いを聴きながら、とんと俺は右足を上げて振り降ろした。
魔法陣が足を中心に展開するのは、まぁちょっと練習した魔法使いっぽい演出といったところである。
軽く地面が揺れたが、それが原因で驚かれたりはしなかっただろう。
「ま、目分量ですが。村があといくつか入るくらいの余裕は持たせますので」
「ぬおおおおお!!!」
腰を抜かさんばかりに彼が驚いた原因は、もちろん出来上がった村を丸ごと覆い尽くす壁である。
おおよそぐるりと一周、見事に村を覆った壁は、ドドドドドっという感じで現れた。
要塞にでも設置されていそうな分厚い壁と、ちょうど俺達の前に巨大な門が現れたところでひひとまずは第一段階終了だ。
さて喜んでくれたかと村長を確認すると。
「おおおおお……」
めっちゃ手を合わせて拝まれてしまった。
まぁ、別にネガティブな感じではないのでセーフとしておこう。
城壁の様に聳え立つ壁は頑強そのもので、例え巨人が棒高跳びを試みたとしても容易く超えられはしないだろう。
このままというのもものすごく気まずいので、俺はにっこり笑って更なる要望を尋ねた。
「さて、最後に入り口の警備なんですが……なにかご希望とかあります?」
実際に、壁だけで守りは万全だというには不完全だと、俺はそう思う。
それは誰が見ても明らかだろう。なにせ、目の前には唯一の入り口であるどでかい門があるのだから。
人の出入りを制限するわけには行かないからこそ、出入口は最も脆い部分なのである。
「……い、いえ。私などには想像もつきませんが」
村長さんは若干態度が改まった気がしたけれど、さすがにアイディアはないらしい。
何か魔法を見せる事は必須なのだが、こう萎縮してしまってはアイディアを反映させ辛くなる。難点だ。善処しよう。
まぁ……ないと言うのなら俺ががんばるしかないと思うけどね!
俺はきらりと目を輝かせて、暖めていたアイディアを喜々として提案することにした。
「では、私が何かやって見ましょう! そうだなぁー……ゴーレムに守らせるっていうのはどうかな?」
ちらちらと村長さんの反応をうかがってみる。だが村長さんは今一わかっていないようだった。
「ゴーレムとはなんです?」
だがその言葉を聴いて、俺はああそうかと納得した。
ゴーレムを作り出す魔法は魔法使いの極一部では研究している人もいるが、その数は極めて少ない。そんなもの一般人が知るはずもなかった。
「あー、タダで雇える門番みたいなもんですよ。結構強いと思いますよ?」
「そうなんですか? 私は魔法の事はわかりませんが……」
村長さんは苦笑いを浮かべていたが、俺は最後の砦を、ゴーレムに託すことに決めていた。
ゴーレム。それは命令に忠実に動く石像である。
いわゆる魔法使いの作るロボットみたいな代物なのだが、製法を知っている者には使い勝手のいい労働力として重宝されている。
「城壁にゴーレムか。この取り合わせは心躍るな。……あ、でも加減を間違えないようにしないと」
「何か言いましたか?」
「いえ何も」
そう言えばここの住人達もパソコンユーザーになる可能性があるのだと忘れてはいけなかった。変なネタにされてしまってはかなわない。要はちゃんと守れればいい。必要な機能を必要なだけ持ったゴーレムを過不足なく作る。これ大事。
俺は今回使うべき魔力の量を思い浮かべて、おおよそゴーレムの形状を決めていた。
「ふむ……それじゃあ。出来る限りスタンダードな奴で」
ゴーレムでスタンダードと言えば、土色の大きな奴だろうか?
俺はさっそく、その辺の土を魔法でこねて三階建てのビルくらいの塊を用意した。
大きさはこれくらいでいいだろう、後は別に核を作ってゴーレムボディに組み込んで完成である。
魔獣も種類によっては相当の大きさがあるため、貧弱すぎてもいけない。
結局出来上がったのは10メートルほどのゴーレムで、これなら巨人とだって力比べが出来そうだった。
「よし! まぁこんなもんか。どうです? 結構強そうでしょ?」
「ええ。……それにしても大きいですね」
「そうですか? いやいや、これくらいないとさびしくないですか?」
「……そりゃあ、頼もしくは感じますが」
どこか夢を見ているような顔で村長さんはゴーレムを見上げていた。
しかし村長さんの顔にはどこか陰りがある気がして、俺は不安になってきた。
「……ひょっとして、まだ足りませんかね?」
「え? いや、そう言う事では……」
村長さんの返事の切れも悪い。これはもう確定的である。
俺はどうやら、普通を気にしすぎるあまり、加減を間違ってしまったみたいだ。
俺はあまりの悔しさに、拳を握り締めていた。
「いや! そうかもしれない! みなまで言わないでください! 確かにちょっと普通すぎましたね! 反省します!」
「いやー、普通という事はないと思うんですが……むしろ圧倒されていただけで……」
「気を使わないで! 俺がダメでした! やるからにはきっちりやりますので!」
「いやーあの……」
ここは異世界なのだ。こんなぬるい装備で現実に対応出来ると思う方がどうかしていた。
俺は一般水準というやつを完全に理解しているわけではないのだ。
そうだ……俺のファンタジー知識は地球基準が捨てきれていないところがある……。それに俺の知り合いはこんなの片手で粉砕出来るやつしかいないじゃないか!
よく見たら石のゴーレムはスタンダードすぎてオシャレ度に欠ける。
もっと世の中は先進的なゴーレムを求めているはずではないだろうか!
盛り上がってきた俺はもう止まらない。
「そっかー……そうだよなぁ。でかい奴が来た時に石製じゃ不安ですよね? なんかもっと素材にこだわってみます」
「はぁ……」
村長さんは随分気の抜けた返事だが、それも仕方あるまい。
「ここは……鉄? いやいや、もっと硬い奴の方がいいですかね?」
「まぁええ、硬ければ硬い方が……いいと思いますが。どうする気です?」
「ええ。例えばそうですね……。これとか?」
俺はゴーレムに手を添え、魔法で材質を一新させた。
そうして出来上がったのはずいぶんと透明感のある透き通ったゴーレムだ。
一瞬で姿を一変させたゴーレムを見上げて、村長さんは足元に歩み寄るとコンコン叩く。
そして彼は首をかしげて俺に尋ねた。
「水晶……ですか?」
「いや、ダイヤモンド」
「ダイヤ! あの宝石のですか!!」
目をむく村長さんに俺はキメ顔で、力強く頷いて見せた。
「そう、そのダイヤですね。これって硬度だけなら相当なもんらしいですよ?」
「……はぁ」
「頑張れば割れるらしいですけどねー。俺は叩いた事ないですけど。って言うか叩いたことある奴がどれくらいいるもんなんでしょうね、ダイヤモンド?」
「さぁ? ですが……これを傷つけるのは怖いでしょうな。その……金銭的に」
「それは確かに! 好奇心でやらかしたら張り倒されそう! 精神¥防御と言ったところですか! 」
「……はぁ」
なんにしても硬いには違いない。ちょっとやそっと殴ったくらいではこのゴーレムを壊すことが出来ないとは思う。
思うに誰しも一度は考える最強の防御力を備えていること請け合いだった。
「ふむ……巨大ゴーレムとダイヤモンド。二つそろって最強! って感じは出てるんじゃないですかね!」
「……」
「あ、聞いてない? もしもーし?」
「ハッ! いや、こんな魔法は初めて見たものでして! いやはやお恥ずかしい!」
村長さんは存分に驚いてくれているようで、今回もやらかしたかいがあったというものだった。
俺も美しく輝くダイヤモンドゴーレムの輝きに、いい仕事をしたと思わずにはいられない。
「まぁそうでしょうね! 俺もダイヤモンドのゴーレムなんて初めて作りましたから! それではこれで! 例の物はここに置いて行きますんで!」
俺ももう少し見ていたかったが長居は無用! それはパソコン配りの鉄則である。
相手が何が何だかわかっていないうちに退散することで、謎と好奇心を残すのだ。
そうやってパソコンを使ってもらわなければ、単純に埃をかぶった箱になる確率が上がる、そんな気がした。
今度こそ満足して、見納めにゴーレムを見上げる俺だったが、村長さんもまた出来上がったダイヤモンドゴーレムを食い入るように見つめていた事に、その時の俺はまったく気を留めなかった。
「しまったしまった。……通行証を忘れちゃダメでしょうに」
だけど俺はうっかりしてしまって、次の日もう一度同じ村に向かうことになってしまった。
外から来る人向けの通行証を渡すのを忘れてしまっていたのだ。
そのことに気が付いたのが次の日。まったく抜けているにもほどがある。
慌てて村に転移したが、なんと言われるか。……村人の出入りに支障はないが、この通行証がなきゃ、一切外から人間が入れないというのはまずすぎるだろう。
とりあえず100個くらいで足りるかな?
いやいやむしろ50個くらいから小出しにして、後は通販感覚で連絡を取ってもらって、パソコンに慣れてもらうってのもありかもしれない。
俺は少し村から離れた場所に転移して、歩いて村に向かっていた。
だがその途中で偶然、大きな馬車を発見した。
段々と近づいてくる馬車の御者台には、何故かあの村長が乗っていたのである。
「あれ? 村長さん?」
「……!!!……!?!?!?」
話しかけると村長さんがちょっと形容出来ないくらい驚いている。それこそ馬車から転げ落ちんばかりだ。
俺が話しかけ直すのもためらったくらいだったが、幸い村長さんは自分からこちらに話しかけてくれた。
「ど、どうしました? 魔法使い様。な、何か忘れ物ですか?」
あんまり驚かれたものだから、ついつい意表を突かれたが、俺は通行証の存在を思い出した。
「あー。そうなんですよ。ほら! あのゴーレムなんですけど……。通行証がないと、村人以外の人を片っ端から襲ってしまうので」
「え? そ、それは大変ですね。しかし大丈夫でしょう。村には行商がたまに立ち寄る程度で、外から来る旅人も少ないですから!」
「あ、そうなんですか? なら50個も必要なかったかな? まぁいいか。それじゃあ、俺、このまま村に行って通行証を渡してきますから、誰に渡しておきましょうか?」
あまり出入りがないと言うのなら助かった。前もって説明だけはしているので、被害者はいないだろう。
さっそく俺は村に行って通行証を渡して来ようとするが、村長さんは慌ててそんな俺を呼び止めて来た。
「え!……いえ! 私が預かりましょう! せっかくここで出会ったんですし!」
村長さんはやけに必死だった。しかし俺も責任は感じているのだ。
「そうですか? それならここでも少し渡しておきましょうか? それじゃあ俺は村の方に残りを渡してきますから」
「いえ! それには及びませんって!」
なんでだろう? やけにかぶせてくるな?
これからどこかに行くのなら、村に持って行っておかないとまずいだろうに?
しかし村長さんの目は血走り、呼吸も荒く、簡単に断れる雰囲気ではなかった。
「なんでです?」
「そ、それは!……特に理由はないんですけど!」
「?」
「……」
そう言ってシュンと勢いが死ぬ村長さんは、わけがわからない。
「でもやっぱり……村に置いて来ないとまずいですし」
「ちょ!……」
「なんです!」
「……いえ。ちょっと持病の痔が悪化しまして」
「……なんでそんなカミングアウトを? せっかくだから治しましょうか?」
「いえ! 大丈夫です! 大したことないやつなので!」
「そ、そうですか?」
なんだかよくわからない問答を繰り返していた俺達だったが、村長さんはついに言葉を切って考え込むと、何かを決意したようだった。
「わ、わかりました……そ、それではよろしくお願いします」
身を切るような声を絞り出す村長さんに、俺は正直引いていた。
「だからさっきから行くって言ってるじゃないですか……」
「そうでしたな! では私は先を急ぎますので!」
村長さんはそう言うと、さっきまでのためらいから一転、手綱を握りこみ、恐ろしく急いで行ってしまったのだった。
それは馬車が壊れんばかりで、本当にわけがわからない。
俺はぽかんとしながら砂埃をまき散らすその馬車を見送った。
「なんだありゃ? ……そんなに悪いならやっぱり治療してあげるべきだったかな?」
まぁ、馬車に乗ればなおさらしんどいだろう、御気の毒に。
呆けていた俺が再び歩き出し、村にたどり着くまでにそんなに時間はかからなかった。
しかし俺は自分で造った門を前にして立ち止まった。
「あれ? なんだか寂しい様な?」
門はそこにある。しかし肝心な物がどこにもないのである。
「ゴーレムがない? あれだけデカイ物が見えないなんてことはさすがにないよな?」
ひょっとして何かあったのだろうか? もしそうなら大変だ。
急いで俺は村に向かうと、やはりゴーレムの姿はどこにもなかった。
「あれー? おかしいな?……村の人もいないのか?」
門には誰かが詰めているはずなのだが、人の気配もない。
いよいよ俺は焦って村を歩き廻ったが、まったく人を見かけないのである。
これは本格的に何かあったらしい。
「まさか……昨日の晩のうちに? おいおいそいつは色々まずいだろう」
さっきの訳の分からない村長さんの態度も俺が魔法使いだと知って、怒りをぶつけようにもぶつけられない感情の表れだったんだとしたら……なんて考えて、気が付いた。
「あれ? でも村長さんは無事だったよな?」
いよいよどういう事だかわからなくなってきた。
だが俺はとうとう村の中で妙な物を見つけたのである。
「――なんだこれ?」
それは土の塊だった。
ただしそれなりに魔力を発している、魔法のかけられたものである。
……ただ俺はその土の塊に見覚えがあったわけだ。
「ま、まさかこれって……ゴーレムの核か?」
もしかしなくとも、そこにあったのはゴーレムだったものらしい。
「……まさか」
俺は考える。
ダイヤモンドの身体を持ったゴーレムをここまで完全に破壊出来る存在が攻めて来たのだとしたら、それは大変な事だろう。
だけど、それならなんで城壁は全く壊れていなかったんだろうか?
さっきの村長さんが全然平気そうだったのも不思議である。少なくても痔を気にする余裕はないはずだ。
更にゴーレムはダイヤモンドで構成されているのは外側だけ。
核だけ取り残されているということは?
パズルの様にすべてのピースが頭の中で組み上がり、俺は一つの答えにたどり着く。
「……ひょっとしてこれ、村人が引っぺがしたのか? ダイヤ全部?」
そうと考えると綺麗すぎる村にも説明がつく。
ゴーレムは村人には攻撃しない。
もし仮に体をはがしにかかったとしても一切抵抗しないだろう。
だとするとアレだけの大きさの物を一晩で全部はがしたのだろうか?
出来たとしたら相当気合いが入っているが、実際入っていたのかもしれない……何せあの量である。
「……帰ってくるかなぁ、村長?」
例えば全長10メートル以上のダイヤの塊があれば相当な金額になるかもしれない。
それは元々ほんの少ししかいなかった村人が相応の財産を手にすることができるかも。
たださっき出会った村長が、先に行った村人に俺が戻って来たと報告したとしたら……。
「望み薄かもしれないな。これってひょっとして村を一つ滅ぼしてしまった……という事になるのだろうか?」
だとしたら……相当まずい。
俺は慌てるが、がらんとした無駄に大きな壁で守られた村は、もう何ら変化することはないのである。
「やっちまったかなぁ……やっちまったんだろうなぁ」
しょんぼりと俺は肩を落とすが……いまさらどうしようもなかった。
「これは秘密だな……そうしよう」
村を確認すると、パソコンは中に残っていたので回収し、仕方なくすごすご退散する俺なのだった。
よかれと思ってやったことが裏目に出てしまう事ってあるんじゃないだろうか?
そんな事、太郎はしょっちゅうじゃないか? とか言わないで欲しい。
出来ることが多かろうが少なかろうが、実行すれば失敗と成功、どちらの可能性も常にあるのだと、いつでも心の準備はいるのかもしれない。
さて……心の予防線も張った所で、そろそろ語るとしよう。
それは俺が新しいパソコンユーザーを開拓しに行った時の出来事だった……。
「それじゃあ、パソコンを置いてもらう代わりに、この村を守る何かを作るってことでOKですか?」
「はぁ、魔獣も最近多いですし……それはうれしいのですが。どうするおつもりですか?」
テーブルをはさんだ向こう側に座っている村長さんは、露骨にうさん臭そうな顔をしていた。
だが突然の申し出に、こうして時間を割いてくれるだけでもありがたい。
その上、条件さえ満たせば申し出を受けてくれると言うのだから、こちらは最高の魔法をもってして応えるだけだ。
「そうですね……例えば、村全体を高い壁で覆ってしまうってのはどうです?」
「……壁ですか? それは壁を建てる工事をせよという事でしょうか? とてもこの村にそんな蓄えはありませんし。今はあまり人手も割けませんが?」
何言ってんだこいつ? みたいな顔だった。
そりゃそうだろう。貴方は正しい。だがあえて間違っていると俺は言えてしまうのだ。
「人手が少ないので?」
「はい。こんなご時勢ですからね。出稼ぎに出ている物も多いですし……」
あまり無茶を言わないでと続きそうな村長さんの台詞を食い気味に、俺は大きく頷いて身を乗り出していた。
「そんな状態なら、なおさら急がないと! 突然の災難はいつ降りかかるかわからないのですから! 人も蓄えもないならきっと私がお役に立てますとも! 大丈夫、大丈夫! お金なんて少しもいらないですよ? これでも魔法使いなんでね!」
ここぞとばかりにゴリ押しである。村長さんの心底困り顔が変わるのを信じて、今は押しに押す時だ。
結局俺に押し負けて、村長さんは折れた。
「はぁ……まぁ何もする必要がないと言うのなら、勝手にやってもらって構わんのですがね。……念のため、私が見ていてもかまいませんか? これでも村の責任者ですので」
「それはいいですね! こちらも私がやったと見届けてもらわないと、困りますから!」
「は、はぁ」
確実にペテン師の類だと思われているに違いないが、ここで少しでも自身のないところでも見せればあっという間に追い出されてしまう。
考えが例えふわっふわしているとしても、自信満々でいくべきだ。
なに、安心して欲しい。約束はきっちり守る。
必要以上かもしれないとはあえて言わないけれど、間違いなくその自信だけはあったのだ。
村の外には特に何もない。森を切り開いて作られたらしい村は、全体的に平地で何か大がかりな事をするにはうってつけ……いやいや、こうして頼み事を全うするにはアイディアが出やすそうだった。
だがやはり賛同いただいている事だし、ここは手堅く壁の案でいってみるのがいいかもしれない。要望に応えるのは大事な事である。
そろそろ見た目わかりやすくすごい事をやって、魔法使いだって所を見てもらわないと、村長さんの疑惑の視線が犯罪者を見るそれに変わりそうだった。
まぁ、村の生活に支障があってはまずいだろうから、それ相応の大きさは必要だ。そこまで決め、出来るだけ急いで俺は魔法を行使する。
「それではさっそく始めましょうか。なに、竜が踏んでも壊れないすんごい壁を期待してください!」
「はい? はは……ええ、期待しますよ」
「よっと!」
村長さんの愛想笑いを聴きながら、とんと俺は右足を上げて振り降ろした。
魔法陣が足を中心に展開するのは、まぁちょっと練習した魔法使いっぽい演出といったところである。
軽く地面が揺れたが、それが原因で驚かれたりはしなかっただろう。
「ま、目分量ですが。村があといくつか入るくらいの余裕は持たせますので」
「ぬおおおおお!!!」
腰を抜かさんばかりに彼が驚いた原因は、もちろん出来上がった村を丸ごと覆い尽くす壁である。
おおよそぐるりと一周、見事に村を覆った壁は、ドドドドドっという感じで現れた。
要塞にでも設置されていそうな分厚い壁と、ちょうど俺達の前に巨大な門が現れたところでひひとまずは第一段階終了だ。
さて喜んでくれたかと村長を確認すると。
「おおおおお……」
めっちゃ手を合わせて拝まれてしまった。
まぁ、別にネガティブな感じではないのでセーフとしておこう。
城壁の様に聳え立つ壁は頑強そのもので、例え巨人が棒高跳びを試みたとしても容易く超えられはしないだろう。
このままというのもものすごく気まずいので、俺はにっこり笑って更なる要望を尋ねた。
「さて、最後に入り口の警備なんですが……なにかご希望とかあります?」
実際に、壁だけで守りは万全だというには不完全だと、俺はそう思う。
それは誰が見ても明らかだろう。なにせ、目の前には唯一の入り口であるどでかい門があるのだから。
人の出入りを制限するわけには行かないからこそ、出入口は最も脆い部分なのである。
「……い、いえ。私などには想像もつきませんが」
村長さんは若干態度が改まった気がしたけれど、さすがにアイディアはないらしい。
何か魔法を見せる事は必須なのだが、こう萎縮してしまってはアイディアを反映させ辛くなる。難点だ。善処しよう。
まぁ……ないと言うのなら俺ががんばるしかないと思うけどね!
俺はきらりと目を輝かせて、暖めていたアイディアを喜々として提案することにした。
「では、私が何かやって見ましょう! そうだなぁー……ゴーレムに守らせるっていうのはどうかな?」
ちらちらと村長さんの反応をうかがってみる。だが村長さんは今一わかっていないようだった。
「ゴーレムとはなんです?」
だがその言葉を聴いて、俺はああそうかと納得した。
ゴーレムを作り出す魔法は魔法使いの極一部では研究している人もいるが、その数は極めて少ない。そんなもの一般人が知るはずもなかった。
「あー、タダで雇える門番みたいなもんですよ。結構強いと思いますよ?」
「そうなんですか? 私は魔法の事はわかりませんが……」
村長さんは苦笑いを浮かべていたが、俺は最後の砦を、ゴーレムに託すことに決めていた。
ゴーレム。それは命令に忠実に動く石像である。
いわゆる魔法使いの作るロボットみたいな代物なのだが、製法を知っている者には使い勝手のいい労働力として重宝されている。
「城壁にゴーレムか。この取り合わせは心躍るな。……あ、でも加減を間違えないようにしないと」
「何か言いましたか?」
「いえ何も」
そう言えばここの住人達もパソコンユーザーになる可能性があるのだと忘れてはいけなかった。変なネタにされてしまってはかなわない。要はちゃんと守れればいい。必要な機能を必要なだけ持ったゴーレムを過不足なく作る。これ大事。
俺は今回使うべき魔力の量を思い浮かべて、おおよそゴーレムの形状を決めていた。
「ふむ……それじゃあ。出来る限りスタンダードな奴で」
ゴーレムでスタンダードと言えば、土色の大きな奴だろうか?
俺はさっそく、その辺の土を魔法でこねて三階建てのビルくらいの塊を用意した。
大きさはこれくらいでいいだろう、後は別に核を作ってゴーレムボディに組み込んで完成である。
魔獣も種類によっては相当の大きさがあるため、貧弱すぎてもいけない。
結局出来上がったのは10メートルほどのゴーレムで、これなら巨人とだって力比べが出来そうだった。
「よし! まぁこんなもんか。どうです? 結構強そうでしょ?」
「ええ。……それにしても大きいですね」
「そうですか? いやいや、これくらいないとさびしくないですか?」
「……そりゃあ、頼もしくは感じますが」
どこか夢を見ているような顔で村長さんはゴーレムを見上げていた。
しかし村長さんの顔にはどこか陰りがある気がして、俺は不安になってきた。
「……ひょっとして、まだ足りませんかね?」
「え? いや、そう言う事では……」
村長さんの返事の切れも悪い。これはもう確定的である。
俺はどうやら、普通を気にしすぎるあまり、加減を間違ってしまったみたいだ。
俺はあまりの悔しさに、拳を握り締めていた。
「いや! そうかもしれない! みなまで言わないでください! 確かにちょっと普通すぎましたね! 反省します!」
「いやー、普通という事はないと思うんですが……むしろ圧倒されていただけで……」
「気を使わないで! 俺がダメでした! やるからにはきっちりやりますので!」
「いやーあの……」
ここは異世界なのだ。こんなぬるい装備で現実に対応出来ると思う方がどうかしていた。
俺は一般水準というやつを完全に理解しているわけではないのだ。
そうだ……俺のファンタジー知識は地球基準が捨てきれていないところがある……。それに俺の知り合いはこんなの片手で粉砕出来るやつしかいないじゃないか!
よく見たら石のゴーレムはスタンダードすぎてオシャレ度に欠ける。
もっと世の中は先進的なゴーレムを求めているはずではないだろうか!
盛り上がってきた俺はもう止まらない。
「そっかー……そうだよなぁ。でかい奴が来た時に石製じゃ不安ですよね? なんかもっと素材にこだわってみます」
「はぁ……」
村長さんは随分気の抜けた返事だが、それも仕方あるまい。
「ここは……鉄? いやいや、もっと硬い奴の方がいいですかね?」
「まぁええ、硬ければ硬い方が……いいと思いますが。どうする気です?」
「ええ。例えばそうですね……。これとか?」
俺はゴーレムに手を添え、魔法で材質を一新させた。
そうして出来上がったのはずいぶんと透明感のある透き通ったゴーレムだ。
一瞬で姿を一変させたゴーレムを見上げて、村長さんは足元に歩み寄るとコンコン叩く。
そして彼は首をかしげて俺に尋ねた。
「水晶……ですか?」
「いや、ダイヤモンド」
「ダイヤ! あの宝石のですか!!」
目をむく村長さんに俺はキメ顔で、力強く頷いて見せた。
「そう、そのダイヤですね。これって硬度だけなら相当なもんらしいですよ?」
「……はぁ」
「頑張れば割れるらしいですけどねー。俺は叩いた事ないですけど。って言うか叩いたことある奴がどれくらいいるもんなんでしょうね、ダイヤモンド?」
「さぁ? ですが……これを傷つけるのは怖いでしょうな。その……金銭的に」
「それは確かに! 好奇心でやらかしたら張り倒されそう! 精神¥防御と言ったところですか! 」
「……はぁ」
なんにしても硬いには違いない。ちょっとやそっと殴ったくらいではこのゴーレムを壊すことが出来ないとは思う。
思うに誰しも一度は考える最強の防御力を備えていること請け合いだった。
「ふむ……巨大ゴーレムとダイヤモンド。二つそろって最強! って感じは出てるんじゃないですかね!」
「……」
「あ、聞いてない? もしもーし?」
「ハッ! いや、こんな魔法は初めて見たものでして! いやはやお恥ずかしい!」
村長さんは存分に驚いてくれているようで、今回もやらかしたかいがあったというものだった。
俺も美しく輝くダイヤモンドゴーレムの輝きに、いい仕事をしたと思わずにはいられない。
「まぁそうでしょうね! 俺もダイヤモンドのゴーレムなんて初めて作りましたから! それではこれで! 例の物はここに置いて行きますんで!」
俺ももう少し見ていたかったが長居は無用! それはパソコン配りの鉄則である。
相手が何が何だかわかっていないうちに退散することで、謎と好奇心を残すのだ。
そうやってパソコンを使ってもらわなければ、単純に埃をかぶった箱になる確率が上がる、そんな気がした。
今度こそ満足して、見納めにゴーレムを見上げる俺だったが、村長さんもまた出来上がったダイヤモンドゴーレムを食い入るように見つめていた事に、その時の俺はまったく気を留めなかった。
「しまったしまった。……通行証を忘れちゃダメでしょうに」
だけど俺はうっかりしてしまって、次の日もう一度同じ村に向かうことになってしまった。
外から来る人向けの通行証を渡すのを忘れてしまっていたのだ。
そのことに気が付いたのが次の日。まったく抜けているにもほどがある。
慌てて村に転移したが、なんと言われるか。……村人の出入りに支障はないが、この通行証がなきゃ、一切外から人間が入れないというのはまずすぎるだろう。
とりあえず100個くらいで足りるかな?
いやいやむしろ50個くらいから小出しにして、後は通販感覚で連絡を取ってもらって、パソコンに慣れてもらうってのもありかもしれない。
俺は少し村から離れた場所に転移して、歩いて村に向かっていた。
だがその途中で偶然、大きな馬車を発見した。
段々と近づいてくる馬車の御者台には、何故かあの村長が乗っていたのである。
「あれ? 村長さん?」
「……!!!……!?!?!?」
話しかけると村長さんがちょっと形容出来ないくらい驚いている。それこそ馬車から転げ落ちんばかりだ。
俺が話しかけ直すのもためらったくらいだったが、幸い村長さんは自分からこちらに話しかけてくれた。
「ど、どうしました? 魔法使い様。な、何か忘れ物ですか?」
あんまり驚かれたものだから、ついつい意表を突かれたが、俺は通行証の存在を思い出した。
「あー。そうなんですよ。ほら! あのゴーレムなんですけど……。通行証がないと、村人以外の人を片っ端から襲ってしまうので」
「え? そ、それは大変ですね。しかし大丈夫でしょう。村には行商がたまに立ち寄る程度で、外から来る旅人も少ないですから!」
「あ、そうなんですか? なら50個も必要なかったかな? まぁいいか。それじゃあ、俺、このまま村に行って通行証を渡してきますから、誰に渡しておきましょうか?」
あまり出入りがないと言うのなら助かった。前もって説明だけはしているので、被害者はいないだろう。
さっそく俺は村に行って通行証を渡して来ようとするが、村長さんは慌ててそんな俺を呼び止めて来た。
「え!……いえ! 私が預かりましょう! せっかくここで出会ったんですし!」
村長さんはやけに必死だった。しかし俺も責任は感じているのだ。
「そうですか? それならここでも少し渡しておきましょうか? それじゃあ俺は村の方に残りを渡してきますから」
「いえ! それには及びませんって!」
なんでだろう? やけにかぶせてくるな?
これからどこかに行くのなら、村に持って行っておかないとまずいだろうに?
しかし村長さんの目は血走り、呼吸も荒く、簡単に断れる雰囲気ではなかった。
「なんでです?」
「そ、それは!……特に理由はないんですけど!」
「?」
「……」
そう言ってシュンと勢いが死ぬ村長さんは、わけがわからない。
「でもやっぱり……村に置いて来ないとまずいですし」
「ちょ!……」
「なんです!」
「……いえ。ちょっと持病の痔が悪化しまして」
「……なんでそんなカミングアウトを? せっかくだから治しましょうか?」
「いえ! 大丈夫です! 大したことないやつなので!」
「そ、そうですか?」
なんだかよくわからない問答を繰り返していた俺達だったが、村長さんはついに言葉を切って考え込むと、何かを決意したようだった。
「わ、わかりました……そ、それではよろしくお願いします」
身を切るような声を絞り出す村長さんに、俺は正直引いていた。
「だからさっきから行くって言ってるじゃないですか……」
「そうでしたな! では私は先を急ぎますので!」
村長さんはそう言うと、さっきまでのためらいから一転、手綱を握りこみ、恐ろしく急いで行ってしまったのだった。
それは馬車が壊れんばかりで、本当にわけがわからない。
俺はぽかんとしながら砂埃をまき散らすその馬車を見送った。
「なんだありゃ? ……そんなに悪いならやっぱり治療してあげるべきだったかな?」
まぁ、馬車に乗ればなおさらしんどいだろう、御気の毒に。
呆けていた俺が再び歩き出し、村にたどり着くまでにそんなに時間はかからなかった。
しかし俺は自分で造った門を前にして立ち止まった。
「あれ? なんだか寂しい様な?」
門はそこにある。しかし肝心な物がどこにもないのである。
「ゴーレムがない? あれだけデカイ物が見えないなんてことはさすがにないよな?」
ひょっとして何かあったのだろうか? もしそうなら大変だ。
急いで俺は村に向かうと、やはりゴーレムの姿はどこにもなかった。
「あれー? おかしいな?……村の人もいないのか?」
門には誰かが詰めているはずなのだが、人の気配もない。
いよいよ俺は焦って村を歩き廻ったが、まったく人を見かけないのである。
これは本格的に何かあったらしい。
「まさか……昨日の晩のうちに? おいおいそいつは色々まずいだろう」
さっきの訳の分からない村長さんの態度も俺が魔法使いだと知って、怒りをぶつけようにもぶつけられない感情の表れだったんだとしたら……なんて考えて、気が付いた。
「あれ? でも村長さんは無事だったよな?」
いよいよどういう事だかわからなくなってきた。
だが俺はとうとう村の中で妙な物を見つけたのである。
「――なんだこれ?」
それは土の塊だった。
ただしそれなりに魔力を発している、魔法のかけられたものである。
……ただ俺はその土の塊に見覚えがあったわけだ。
「ま、まさかこれって……ゴーレムの核か?」
もしかしなくとも、そこにあったのはゴーレムだったものらしい。
「……まさか」
俺は考える。
ダイヤモンドの身体を持ったゴーレムをここまで完全に破壊出来る存在が攻めて来たのだとしたら、それは大変な事だろう。
だけど、それならなんで城壁は全く壊れていなかったんだろうか?
さっきの村長さんが全然平気そうだったのも不思議である。少なくても痔を気にする余裕はないはずだ。
更にゴーレムはダイヤモンドで構成されているのは外側だけ。
核だけ取り残されているということは?
パズルの様にすべてのピースが頭の中で組み上がり、俺は一つの答えにたどり着く。
「……ひょっとしてこれ、村人が引っぺがしたのか? ダイヤ全部?」
そうと考えると綺麗すぎる村にも説明がつく。
ゴーレムは村人には攻撃しない。
もし仮に体をはがしにかかったとしても一切抵抗しないだろう。
だとするとアレだけの大きさの物を一晩で全部はがしたのだろうか?
出来たとしたら相当気合いが入っているが、実際入っていたのかもしれない……何せあの量である。
「……帰ってくるかなぁ、村長?」
例えば全長10メートル以上のダイヤの塊があれば相当な金額になるかもしれない。
それは元々ほんの少ししかいなかった村人が相応の財産を手にすることができるかも。
たださっき出会った村長が、先に行った村人に俺が戻って来たと報告したとしたら……。
「望み薄かもしれないな。これってひょっとして村を一つ滅ぼしてしまった……という事になるのだろうか?」
だとしたら……相当まずい。
俺は慌てるが、がらんとした無駄に大きな壁で守られた村は、もう何ら変化することはないのである。
「やっちまったかなぁ……やっちまったんだろうなぁ」
しょんぼりと俺は肩を落とすが……いまさらどうしようもなかった。
「これは秘密だな……そうしよう」
村を確認すると、パソコンは中に残っていたので回収し、仕方なくすごすご退散する俺なのだった。
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